4-4. 五大湖・セントローレンス水路
市場の背景
鉄道輸送に対する競争力を強化するために1993年にセントローレンス運河規制の見直しが行われた。大幅な規制緩和により通行料、規制適合コストが低減した結果、1992年から1998年で輸入鉱石運搬を中心とする外航船の通行量は倍増している。一方、カナダ内航船(Laker)の通行量は減少傾向にある。従来は内航船が独占していた航路についても内航船不足から、積み替えを行わず直接外航船で輸送することを許さざるを得ない状況になっている。
船腹の老朽化
Lakerはほぼ90%が船齢20年、100%が15年を超えているが、ジョーンズ・アクトが適用される米国側では国内建造の船価の高さから新造は全く行われていない。Lakerは河川運航のため船殻の耐用年数は長いが、機関、航行機器等の傷みが早く、安全上の問題を引き起こしている。一方、シーウェイMax級の外航バルク船腹についてもその75%が船齢15年を超えている。通常、事故原因として機械類の故障20%、人的要因80%と言われているが、セントローレンス運河の場合は機械類の故障74%、人的要因26%とその割合は逆転していることからも、船腹の老朽化が航行の安全性に対して大きな問題となっていることは明らかである。
需給のバランス
セントローレンス運河の総貨物量は安定しており、外航貨物はわずかながらも増加傾向にある。船腹の老朽化により今後シーウェイ級の外航船の需要が高まることは確実である。
カナダ側五大湖船腹
カナダ側の五大湖船腹は約30隻であり、老朽化が進んでいる。この代替建造需要が実現すれば、セントローレンス水路地域のカナダ造船所10年分の工事量にあたる。
4-5. オフショア石油・ガス開発市場
カナダ東海岸のオフショア石油・ガス産業は、カナダ造船業が最も期待している市場である。石油リグの最終組立て、トップサイド、コンポーネント、転錨サプライ船、タグ、クルーボート等の建造をはじめとし、ライフサイクル支援、ロジスティクス支援等需要が期待される。将来は、カナダ太平洋と北極海におけるオフショア石油・ガス探鉱・開発による市場も期待されている。
ハリファックス造船所は、SEDCO 471、セントジョン造船はセミサブ掘削リグ(Aker#3.2)、Hiberniaプロジェクト掘削モジュールの建造実績がある。Davie造船所は、Petrobras 36(元Spirit of Columbus)の大水深掘削プラットフォームへの改造工事を行った。(同リグは2001年3月に爆発事故を起こして沈んでいる)。
カナダ主要オフショア石油開発・生産プロジェクト
■ Hibernia
■ Terra Nova
■ White Rose(最終設計段階)
■ North Ben Nevis(検討中)
■ Hebron/Ben Nevis(検討中)
■ Bjarni(検討中)
Bull Arm Fabrication and Construction Site
1990年に、連邦政府、NF州政府の援助を受け、4億700万CADを投じて、ニューファンドランド州セントジョンズから150kmの場所に、オフショア構造物用ドライドック及び工場が設立された。当初、同工場ではHibernia油田向けのGravity Base Structure(GBS)の建造と、上部構造物の組立てが行われた。工事のピーク時には5,800名が雇用されていた。1997年の完工後、同施設は州政府に譲渡され、テラ・ノバ油田開発向け工事を行っていたPCL Industrial Constructorsにリースされた。同工事は2001年の第3四半期に完了する予定であり、PCLとのリース契約は終了する。