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(2)極東ロシアの輸送網
 極東ロシアの輸送網は極めて貧弱であり、輸送の中心である鉄路の分布密度(一般には、1万平方キロ当りの鉄道総延長)は、1999年末で、ロシア全体で50、モスクワ州583、西シベリア36、東シベリア21に対して、極東ロシアは13である。極東ロシア内では、サハリン州が110で最も高く、沿海地方94、アムール州82、ハバロフスク地方29などであり、サハ州は最も低く0.5となっている。資源州サハの最大の悩みは輸送路の確保であり、北極海航路への期待も大きいことが肯ける。
 極東ロシアの鉄道貨物総輸送量を図3.3に示す。輸送量は低下の一途を辿っていたが、ここ数年は持ち直し傾向にある。しかし、輸送の主役である鉄道関連技術は低レベルにあり、走行する機関車、貨車は、いずれも旧式かつ老朽化が進み、保線状態も芳しくない。
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図3.3 極東ロシアにおける鉄道貨物輸送量の推移
 モスクワ駅を発するシベリア鉄道は、タイシェット駅でバム鉄道と分岐し、ウラジオストクまで更に4981kmを、バム鉄道はワニノ港までの4317kmを走る。シベリア鉄道が電化複線であるのに対して、バム鉄道は単線で未電化である。ロシアの幹線鉄路シベリア鉄道であっても、機関車、貨車等の老朽化が進み、また保線の経済的な問題も次第に深刻となっている。バム鉄道では、2001年、長らく工事中であったバイカル湖北端のセベロムイスク・トンネルが開通し、走行距離は100km短縮された。
 鉄路に関して注目すべき動きは、中国および韓国の鉄道網とシベリア鉄道との連結計画である。韓国・北朝鮮の鉄路連結合意を受けて、2001年末、朝鮮半島を縦断する京義線(ソウル〜新義州間)とシベリア鉄道を連結する合意文書が、ロシア・韓国政府間で交わされた。また、中国では、図們江周辺の鉄道網とシベリア鉄道の連結が検討中である(図3.4)。
 自動車輸送の長所を取り入れるための道路網整備計画はようやく本格的な取り組みが始まり、アムール鉄橋の第一期改修工事の終了による往復4車線の自動車橋の開通、都市部での立体交差化なども進められて自動車貨物輸送容量は増大しつつある。
 海運は極東ロシアで最も発達した輸送網である。比較的規模の大きな港としては、レナ川河口のチクシ港から最南端のポシェット港まで、22の商業港と10の漁港があり、この他約300の小さな港が散在する。年間6400万トンの港湾荷扱い能力に対して、1999年には実高3200万トンであって稼働率は芳しくはない。沿岸地方のウラジオストク、ナホトカ、ボストーチヌイの3港での荷扱い高は極東ロシア港湾全体の7割程度を占めている。
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図3.4 中国図們江周辺の鉄道網

 空路輸送では、ハバロフスク、ウラジオストクが極東ロシアのミニ・ハブ空港の機能を持つ。これらの2空港からは、ヤクーツク、アルダン、ネリュングリ、チタ、マガダン、オホーツク、ペトロパブロフスク・カムチャツク、ユジノサハリンスクへの空路が開けている。近年では、ハバロフスクと中国の瀋陽、長春、ハルピンとを直航あるいは経由便にて結ぶ空路が開けている。日本へは、ハバロフスク・新潟、ユジノサハリンスク・千歳の空路がある。サハリン・エネルギー開発に進展と共に、ユジノサハリンスクへの人及び物流量は急増している。2001年における、ハバロフスク空港から各地方都市へに最大輸送能力(人/週)を図3.5に示す。
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図3.5 ハバロフスクから地方都市への最大輸送能力








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