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違法移住
 特に海上ルートによるアジア太平洋地域での違法 移住についての現在の問題は、最近経済危機によって(特に、インドネシア)急増している。--とはいえ、先例の移住者(1970年代/1980年代)、すなわちベトナムからのボートピープル難民100万人と比べればなお見劣りがする。海上の密入国も長距離化し近年増加している。中東からウエスタンオーストラリアに、及び中国海岸地方から日本にそしてさらに遠くカナダ及び合衆国にとなっている。そのような密入国の性質も変化している。大型の運搬船を利用して、香港、中国本土、台湾、及び日本のシンジケートが関係している。
 
 1997年、国連は、世界密入国による移住は、400万人の人々を巻き込んでおり、年間70億ドルになると推定している。28 不法移住は、組織化された外国人密入国ネットワーク及び堕落した官吏によって助長され、増加を続けている。しばしば、移住を危険な、又は死と隣り合わせの過酷な条件下にさえ置いている。昨年、いくつかの主要な事件があった。貨物コンテナ中に不法移住と思われる中国人が死んでいるのが見つけられている。--2000年2月、シアトルで3人、及び2000年6月、英国で58人であった。米国政府は、1999年に30,000人から40,000人の中国人が米国に密入国したと推定している。多くのものは船舶で陸上の移送地点に運ばれるか、国境まで運ばれている。1993年、船に乗せて中国の福建省から数百人の違法移住を海路から密入国させようとして、船がニューヨークの沖合で座礁した。これには、確認済みのある中国ギャング団に責任があった。これに関連した問題〈別個に分類されるが、密接に関連した〉は、人身売買である。--その人たちは、悪習と搾取の環境に置かれることになる。米国政府によると、1997年には、東南アジアからの推定約225,000人の女性と子供が国境を越えて売買されている。これは世界全体の3分の1に相当している。ここでもまた、無視できない人数が一般により裕福な国々を目的地として海を渡っている。アジア太平洋地域の最近のニュースレポートは次のように記録している。ボートに乗った1,200人を越える違法移住が6ヶ月の間にオーストラリア海事当局等によって拾い上げられている。一方、マレーシア海軍は違法移住40人を乗せたインドネシアのトロール船に発砲し、別のマレーシアの海軍パトロールは違法なフィリピン人移住者15人を乗せたフェリーを阻止したとしている。29
 
 国際的な法的状況において、国連は、2000年末に、人身販売に対するプロトコルで、新しい国連議決を採用している。国々は、人の密輸にかかわっていると疑える船に司法権を行使することになっている。それは、もしそれらの船舶が、それら国家の隣接水域が設定された移住法を犯すか、又は、それらが領海に入る場合である。IMOは、その1998年回状896、「海路による移住者の売買ないしは輸送に伴う非安全な行動との戦いについての暫定措置」において国家間の協力のためのガイドラインを概説した。30
 
 地域の警察、税関、及び出入国管理当局は、違法移住を取り扱う際に、(そして緊密な地域協力を確実にする必要があるために)主導性をたぶん持ち続けることになるであろうとはいえ、地域軍隊は、疑わしい船舶視認についての、そしてもし、疑わしい船舶の探索に補助的な民間の海事当局(存在するなら)を必要とするならば、情報も共有することもできる。海軍及び海上法律施行当局は、海路による違法移住に対抗するときに、経験とトレーニングも共有できる。--米国沿岸警備隊と米国海軍は、あいにく、この問題に多くの経験を持っている。








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