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I はしがき
 世界経済と同様に、国際海運もまたさまざまな点で著しく変化している。それは海運自由の原則のもとで国際海運が成り立っているからである。そこでは、若干の保護主義が採られているとはいえ、市場への参入が自由であり、運賃の設定も、サービスの質的改善も原則として自由である。
 
 世界経済が順調な成長を遂げるには、国際物流の発展が不可欠である。そこでは、物流の効率化や物流コストの節減など生産・消費にかかわるあらゆる側面でコンテナ船やタンカーなど海運の役割が高まっている。かつては、長距離性、大量性、連絡性、迅速性、規則性、正確性、低廉性、安全性という8つの輸送の基礎的条件を一社で満たすことは不可能であるといわれてきた。
 
 しかし、グローバル化が浸透し、荷主のニーズが多様化し、高度化している現代の国際海運では、前述の8つの要素を満たすことこそ、競争力を強化し、経営の安定化を保証し、持続的な経営を可能にするといっても過言ではない。長距離性という基礎的条件を満たすだけでも、限られた海運企業しか進出することができない。また、大量性についても、船型の大型化が必要となり、巨額な資本の確保が必要となる。さらに、迅速性や低廉性についてもサービスの質的改善を図りつつコストを節減し、運賃の上昇を未然に防止することが必要となる。このように、国際海運では、輸送サービスのグローバル化に伴い、海運企業もグローバル化に符合するような経営戦略を駆使することが必要となっている。
 
 本論では、以上のような物流の効率化を踏まえて、便宜置籍船、定期船市場およびバルクシッピング市場という三つの立場から、国際海運の構造変化がどのように進展しているかについて実証的かつ総合的に分析することとする。








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