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6 HNS海上事故事例
6.1 事故発生の概要
 現在、HNSに係る事故関連の資料は、そのほとんどが代表的な事故事例を紹介しているものであって、全般的な事故発生状況を把握するには十分なものとは言えない。
 そこで、本調査では、世界における事故発生状況について、LMIS社 (Lloyd's Maritime Information Service Ltd.)が各Lloyd's代理店から報告を受けたケミカルタンカー、LPG及びLNG船に関する1993年〜1999年の事故事例を元に解析を行った。
(LMIS社の概要)
 LMIS社は、ロイズ船級協会(Lloyd's Register of Shipping)及びLLP Ltd. (ロイズ保険組合の「Lloyd's of London Press」の発行部門がロイズ保険組合と資本を別にして発足した会社で、現在Lloyd's List等の出版物を扱っている。)を親会社として、1986年に設立された。 LMIS社は、これら親会社の所有するデータベースを、ニーズに応じて提供している。
 
 また、本調査では、日本沿岸域における事故発生状況について、海上災害防止センターがとりまとめた報告書の1993年〜1999年の事故事例を元に解析を行った。
6.1.1 世界における事故発生状況
 1993年〜1999年にかけて世界で発生し、LMIS社が各Lloyd's代理店から報告を受けたケミカルタンカー、LPG船及びLNG船の事故を、年次別・船種別に見ると表 6.1-1に示すとおりである。
 7年間で1,071隻、年平均で約150隻である。なお、このうち17件がHNS輸送船舶同士の衝突である。
表 6.1-1: HNS輸送船舶の年次別の事故発生状況(世界)
単位:隻
年次 ケミカルタンカー LPG船 LNG船
1993年 158 37 3 198
1994年 126 43 1 170
1995年 125 31 1 157
1996年 134 35 3 172
1997年 115 34 2 151
1998年 97 26 2 125
1999年 78 18 2 98
833 224 14 1,071
 
 1,071隻のうち、報道記事等から貨物または燃料油の流出が確認されたものは38隻であり、年平均5隻強である。当該流出事故の年次別の発生状況を表 6.1-2に、年次別・船種別の発生状況を表 6.1-3に示す。
 38隻のうち、貨物または燃料油の流出事故は、ケミカルタンカーが33隻、LPG船が5隻、LNG船は0隻となっている。
 LPG船については、5隻のうち1隻が貨物(LPG)の流出、4隻が燃料油の流出となっている。
表 6.1-2: HNS輸送船舶の年次別の流出事故発生状況(世界)
単位:隻
年次 貨物 燃料油
ケミカル・ガス 貨物油類 小計
1993年 1 4 5 0 5
1994年 1 1 2 2 4
1995年 1 2 3 1 4
1996年 2 3 5 2 7
1997年 2 1 3 3 6
1998年 3 2 5 2 7
1999年 0 1 1 4 5
10 14 24 14 38
 
表 6.1-3: HNS輸送船舶の年次別・船種別の流出事故発生状況(世界)
単位:隻
事故年 ケミカルタンカー LPG船 LNG船
全報告事故 流出 全報告事故 流出 全報告事故 流出 全報告事故 流出
1993年 158 5 37 0 3 0 198 5
1994年 126 3 43 1 1 0 170 4
1995年 125 4 31 0 1 0 157 4
1996年 134 6 35 1 3 0 172 7
1997年 115 4 34 2 2 0 151 6
1998年 97 6 26 1 2 0 125 7
1999年 78 5 18 0 2 0 98 5
833 33 224 5 14 0 1,071 38
 
 HNS輸送船舶のうち、ケミカルタンカーの年次別・流出物別の流出事故発生状況を表 6.1-4に示す。
 33隻のうち、貨物の流出が23隻(年平均約3隻)、燃料油の流出が10隻となっている。
 ケミカルタンカーからの貨物の流出事故について、貨物種類別の状況を表 6.1-5示す。
 貨物油14隻のうち3隻は、有害液体物質に該当する植物油等である。
表 6.1-4: ケミカルタンカーの年次別・流出物別の流出事故発生状況(世界)
単位:隻
年次 貨物 燃料油
ケミカル・ガス 貨物油類 小計
1993年 1 4 5 0 5
1994年 1 1 2 1 3
1995年 1 2 3 1 4
1996年 1 3 4 2 6
1997年 2 1 3 1 4
1998年 3 2 5 1 6
1999年 0 1 1 4 5
9 14 23 10 33
 
表 6.1-5: ケミカルタンカーの貨物流出事故の貨物種類別の発生状況(世界/1993年〜1999年)
単位:隻
苛性ソーダ 1
キシレン 3
キャノーラ油 1
酢酸エチル 1
重油等 4
潤滑油 3
植物油 1
スチレンモノマー 1
テトラクロロエチレン 1
パーム油 1
分解ガソリン 1
硫酸 1
貨物油 油種不明 4
23
 
 HNS輸送船舶の流出事故について、事故種類別の状況を表 6.1-6に示す。
 ケミカルタンカーについて見ると、船舶同士の衝突と港湾設備等への接触事故を合わせると、燃料油の流出を含めた全33隻中16隻(48%)となっており、次いで船体設備の損傷が8隻(21%)となっている。
 貨物の流出23隻中、衝突・接触が9隻(39%)、船体設備損傷が7隻(30%)となっている。
 LPG船の貨物流出1隻は、船体設備損傷によるものである。
表 6.1-6: HNS輸送船舶の事故種類別の流出事故発生状況(世界/1993年〜1999年)
単位 : 隻
船種 流出物 事故種類
衝突 接触 火災・爆発 沈没 船体設備 乗揚げ その他
損傷
ケミカルタンカー ケミカル・ガス 2 2 0 0 3 1 1 9
貨物油類 4 1 1 0 4 2 2 14
燃料油 6 1 0 1 1 1 0 10
ケミカルタンカー 計 12 4 1 1 8 4 3 33
LPG船 ガス 0 0 0 0 1 0 0 1
燃料油 0 0 0 2 1 1 0 4
LPG船 計 0 0 0 2 2 1 0 5
12 4 1 3 10 5 3 38
 
注:衝突は船舶同士のものを示し、接触とは船舶以外の施設への衝突・接触事故を示す。
  その他とは、人為的ミス等によるものである。








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