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3.3.2 所見
 
(1) 船舶の大きさ、乗船者(2項、5項関連)漁船、プレジャーボート等では5トン未満の船舶が、それぞれ72.3%、75.9%と多くを占めている。また、漁船は一人乗りが59%、プレジャーボート等は28%である。
 これらの状況から、装備する通信機器については、より小型化、軽量化及び低価格化が求められ、また特に一人乗り船舶における海中転落対応が求められる。
 
(2) 行動海域(6項関連)
 漁船では5海里未満が49%、10海里未満が62%で、プレジャーボート等では5海里未満が53%、10海里未満で75%にのぼっている。また、両者ともに20海里未満が大半である。
 これら活動海域の陸岸からの距離は、後述の各種通信機器について検討を進める場合には、十分に参考とする必要がある。
 
(3) 緊急事態の経験(9項関連)
 緊急事態の経験は、約1/4の者が経験しているとのことで意外に多いと思われる。
 このことは海上活動の危険性の大きさを示しているといえる。
 衝突、乗揚げ、転覆などの緊急性の大きい海難の他、機関故障、推進器障害などが多発しており、後者といえども小型船舶の場合は救助が遅れた場合には2次海難に陥る可能性もあることを認識する必要がある。
 
(4) 主に使用する通信機器と緊急事態に使用する通信機器(7項、10項、12項関連)
 7項「船上で主に使用する通信機」では、漁船では漁業無線(40.1%)、携帯電話(39.3%)でほぼ同じレベルにあり、次いでアマチュア無線(6.2%)などとなっている。
 プレジャーボート等では、携帯電話が半数(53.3%)以上も占めており、次いでアマチュア無線(16.9%)、マリンVHF(14.0%)と続いている。
 また、10項「救助を求めるために使用した通信手段」は、漁船では携帯電話(39.2%)と漁業無線(36.7%)の二つの使用が多く、他の手段は少ない。プレジャーボート等では、携帯電話が半数近く(47.1%)次いでアマチュア無線(12.5%)、マリンVHF(11.0%)と続いている。
 また、12項(1)の[9]「携帯電話の搭載(所有)」では、プレジャーボート等では85.9%、漁船でも73.2%が携帯電話を船に搭載(携帯)している。
 これらの状況は、携帯電話の活用の検討及び携帯電話と他の通信機器の相互補完関係について検討する必要があることを示唆している。
 
(5) 緊急通信機器の必要性(11項関連)
 「必要を感じない」が「必要である」より多くなっていることは、問題視されることであるが、前述のように、小型船舶が多いこと、活動海域が沿岸部のものが多いこと、またアンケート設問の「特別の機器」(この設問は対象が明確でないが)について「イパーブ」を想定して書いた人が多いことによるものと推測される。
 「必要性を感じない」具体的理由の記載には「現有の通信機器で十分である」が非常に多く(その半数以上が携帯電話)、「必要性を感じる」記載には「現有通信機器では通信できない海域がある(その半数以上が携帯電話)」との相反する意見がみられるが、これは活動海域の遠近を反映しているものと思われ矛盾するものではないと思料する。
 また、このことは近距離での携帯電話の有効性と、距離が離れた海域では他の通信器機を必要とすることを示唆している。
 また、「万一の場合に簡単、かつ確実に連絡できる機器が必要」が多いのは、イパーブ類への期待の大きさを表しており、「転覆、海中転落等に対応できない」が多いのは、小型船舶に多くみられ乗船者の生命に直結するこの種事態への対策を強く求めていることを示している。
 
(6) 機器に対する知識(12-(1)項関連)
 漁業無線については漁船、プレジャーボート等双方に、またマリンVHFについてはプレジャーボート等によく知られているが、他の機器については知られていない実態を浮き彫りにしている。
 特にイパーブについては、小型船舶の大半には搭載義務がないために関心が薄いものと思われる。
 いずれの機器についても、周知・広報の重要性、その強化の必要性を示している。
 
(7) イパーブについて(13項、12-(2)項関連)
 13項「イパーブを搭載(自主)したいと思う」が全体で23%、「思わない」が53%と後者が倍以上となっている。
 しかし、12項の(2)「搭載したいと思う器機」では、「イパーブ」と「小型イパーブ」を加算した数値はプレジャーボート等、漁船ともに最も多くなっているのが注目され、この種機器への期待は高いことが伺える。
 搭載希望者は「万が一の場合に信頼できる」「何時でも何処でも使用できる」などの有用性を評価し、いわゆるイパーブの搭載を望んでいるといえる。
 後者は、「価格が高い」「義務でないから」「機器が大きい」が理由で、小型化、低価化を望む声が多く、小型船舶への搭載を促進するためには、これらをクリアーする必要性が大きいことを示唆している。
 なお、回答からは、購入が期待される価格は5〜6万円程度が目安と思われる。
 
(8) その他各通信機器に関する主な意見
 前各項に記載した以外のアンケートに書かれた指摘、意見(要望)などの主なものは次のとおりである。
 なお、同じ事項に各機器について記載があった訳ではないので、記述のない機器については問題がないという訳ではないと思われるので、その点留意すること。
 
[1] 機能に関するもの
漁業無線、マリンVHF、400メガ無線、アマチュア無線などでは、「通信距離が短い」「通信できない海域がある」という指摘が多く見られる。
 小型船舶といっても比較的沖合海域において行動する船舶の意見と思われるが、特に携帯電話利用者にこのような意見が多いのが目立っている。
なお、400メガ無線については、「通信距離が長い」との評価もみられる。
 
[2] 通信相手に関するもの
 漁業無線、マリンVHF、400メガ無線などでは、「ワッチしていない時がある」との肝心の時への不安がみられる。
 また、アマチュア無線では、「必ずしも海事関係者と通信ができるとは限らない」との指摘がある一方「誰とでも連絡がとれる」「使用者が多い」との意見もみられる。
 マリンVHFについては上記と異なり「多数の船が搭載している」という意見、携帯電話では「何時でも、何処とでも連絡できる」という意見がある。
 
[3] 混信などに関して
漁業無線では「漁業者の話しが多い」「混信が多い」、マリンVHF、400メガ無線、アマチュア無線では「混信が多い」、MCA移動無線では「聞き取りにくいことがある」との指摘がみられる。
[4] 免許などに関して
 マリンVHF、400メガ無線では、表現の違いは様々であるが、現在の免許制度、規制について問題ありとし、これらの廃止、緩和を求めている意見が多くみられる。
 
[5] 価格に関して
 マリンVHF,400メガ無線について、「価格が高い」「低価格化を望む」との意見がみられる。
 他方、携帯電話、マリンホーン、ワムネットサービスでは、「価格が安い」という意見がある。
 なお、衛星携帯電話の低価格化を望む意見もみられる。
 
[6] その他
 次のような意見がみられる。
 
・突発的な転覆や海中転落等の乗員落水時に対応できるものが必要である。
・救命胴衣(浮器)と緊急通信機器(防水)とを一体化する。
・マリンVHFでの気象・海象の定時放送があってもよい。
・携帯電話については、大型船や浮標などを中継、ブースターとして活用を図る。








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