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日本太鼓と学校教育−6
 元島根県三刀屋町の教育長を務められ、現在(財)日本太鼓連盟の技術委員でもある島根県の景山道隆氏から日本太鼓と学校教育について寄稿していただきました。
指導者と後継者の育成が太鼓界にとってますます重要
掛合太鼓ジュニア代表 景山 道隆
 
 私が太鼓に関わったのは、島根県に国体が誘致されることになった今を去ること30年前です。この掛合町でも全国に紹介できる新しい郷土芸能としての太鼓を作ろうと、時の町長の発案により、当時、その町で音楽の教師をしていた私に太鼓作りへの白羽の矢が立てられました。
 当時はまだ、現在のような組太鼓はあまりなく、見よう見まね、悪戦苦闘のうちに作り上げたのが現在の「掛合太鼓」です。太鼓を通して“ふるさと”の良さを見直させようと、町内5地区で構成しました。
 太鼓の発展は、子供づくりからとの私の意見を受けた町長は、町内6つの小・中学校へ太鼓のセットを常置され、これを受けて「ゆとりの時間」を利用して各小学校を回りました。私の勤務する中学校では、週2時間の音楽授業のうち1時間は太鼓の指導にあてました。その頃としては文部省からきついお叱りを受けるようなことをしていたわけですが、当時の生徒達は、ベートーベンの話しより、太鼓のバチで尻を叩かれたこと、手にまめができたことなどをよく覚えていて、懐かしく話してくれます。また、クラブ活動の時間には全校生徒の4分の1が太鼓クラブに入っていました。夏祭りと秋のふるさと祭りでは5年生以上の児童と中学校のクラブの生徒が揃い打ちをすることが恒例になっており、今も続いていますが、誠に壮観です。2002年から学習指導要領の改訂で1種類以上の和楽器の指導が義務づけられます。「総合的な学習の時間」にも多様な教材が考えられるようになり、太鼓が取り入れられる可能性も多くなったわけです。この掛合町では30年も前から取り組んで、これの先取りをしていたわけです。45歳以下の町民は全員太鼓の授業を受けてきているので、太鼓に対する理解は非常に良く、町民の8割は太鼓の後援会員です。
 そこで、今後の課題ですが、和楽器指導が義務づけられ「総合的学習の時間」の内容に取り入れることができるようになったといっても、それは全部太鼓が採用されることではないということです。琴もあれば尺八・三味線・笛だって和楽器ですし、神楽や盆踊り、田植えばやしだって立派な教材になり得るわけですから、安心してはおれません。義務づけられた和楽器指導や総合的学習の時間にぜひ和太鼓が採用してもらえるように、我々のほうから積極的に努力しなければならないことは当然のことです。町や地区の行事に積極的に参加し、地元に根づいた芸能として定着させねばなりません。また、前述のように、町長の考えで太鼓が出来たり、私の教育長時代に「三刀屋太鼓」や「三刀屋太鼓Jr.」ができたように、首長をはじめとする行政・議会の理解を得ておくこともまた大切なことです。
 今を華やかに盛り上げることも当然大切なことですが、太鼓の将来・太鼓の未来を展望して、指導者と後継者の育成を最重点課題として取り組んでいかなければなりません。
 21世紀を担ってたつ子供達をしっかりみつめ、育てていくことは、我々の大きな責務と考えます
*島根県では、11月24・25日に島根県大田市において、第12回日本太鼓全国講習会を開催します。多数の参加をお待ちしています。
新たに1級公認指導員が2名誕生
 アメリカ各地で33年間、日本太鼓の普及に尽力されたサンフランシスコ太鼓道場代表の田中誠一氏並びに東北海道支部より推薦のあった塚原茂夫氏が4月27日に開催された運営委員会で1級公認指導員に認定されました。この結果、1級公認指導員の現在数は、26人となりました。
 また、同委員会で斉藤通夫氏(福島県)が2級公認指導員へ昇級、高島奈々、笑美氏(岐阜県)の姉妹が初めて技術認定員から3級公認指導員へ昇級し、それぞれ認定されました。さらに、栃木県より推薦のあった上敬夫、小室忠史の両氏が3級公認指導員に認定されました。
*なお、北海道の塚原茂夫氏は、地元の「北海道新聞」、「釧路新聞」に大々的に紹介されました。








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