日本財団 図書館


20万人の観衆、「Japan2001」で太鼓公演
 〜日英両国皇太子殿下も「祭り」にご参加〜
 
 2001年5月16日から5月26日まで静岡県の富岳太鼓(障害者を含む)と島根県の石見神代神楽上府社中をイギリス並びにアイルランドに派遣いたしました。
 外務省より日英両国の文化交流を深め、さらに新しい関係を育てることを目的として開催される「Japan2001」の開会式「祭り」での太鼓公演の要請がありました。また、近隣国であるアイルランドにおいても太鼓公演を実施してほしいという要請を受け、日本財団の支援により実現したものです。公演は、ロンドンのハイドパークで計8回、ロンドン郊外にある英国帝京学園で昼夜公演の2回、アイルランド・ダブリンの劇場で1回、合計11回行いました。
 ロンドンのハイドパークでは、流鏑馬、神輿、盆踊り、屋台など伝統的な「日本の祭り」が展開されました。20日にはこの行事の名誉総裁である日英両皇太子殿下も親しく人々のなかに入られ、この行事の柱でもある「見る文化」と「参加する交流」を体験しておられました。
 この2日間の入場者数は合計20万人。太鼓演奏が行われたメインステージにも、広い会場に響き渡る日本太鼓の一打一打の音に驚き、好奇心をつのらせた多くの観客が集まってきました。その人の多さは、皇太子殿下がステージにお近づきになりたくとも一歩もお進みになれない程でした。さらに、富岳太鼓は別ステージで開催された障害者運動会でも太鼓演奏を行いました。
 5月22日に英国帝京学園で行なわれたバッキンガムシャー赤十字を支援するチャリティー公演では、車椅子の障害者、地元の小学生などを含む1,000人を前に力強い太鼓、気迫に満ちた演技で大きな拍手をいただきました。
 5月24日にはアイルランドのロイヤル・ダブリン・ソサエティという古書に包まれた図書館のような劇場にアイルランドの横尾和子大使をはじめ約800名にお集まりいただきました。アイルランドでは初めての太鼓公演であり、また、蛇のいないアイルランドで八岐大蛇を演奏しましたが、観客は大喜びで、ここでも大きな拍手と熱狂的な歓迎を受けました。
 今回の公演では、初めて障害者太鼓チームを海外へ派遣しましたが、演奏が終り、富岳太鼓が健常者・障害者の合同チームであるとの紹介があると誰が見ても立派な演奏に観衆の大きな拍手と歓声が起こりました。
 いずれの会場でも、多くの人が集まり、初めて耳にする日本太鼓の響き、神楽の演技には、大きな拍手と声援が長く続きました。在英、在アイルランドの日本大使館、「Japan2001」事務局、バッキンガムシャー赤十字、英国帝京学園の皆様にも、大変喜んでいただくことができました。
〈派遣メンバー〉
〈富岳太鼓〉
山内強嗣(代表)、早野均、鈴木進一、須賀有希、五十嵐善一
〈富岳太鼓障害者チーム〉
山内令子(代表)、福田智恵美、芹澤一江、大竹肇、大川登志夫、石原純、矢口博司、久保田真喜、小熊華代、金子勉
〈石見神代神楽上府社中〉
岩川年永(代表)、小林美昭、石田信夫、山崎健二、原田和利、泉正喜、山村雅則、佐々木裕司、岩川透一、中田美幸、中田正則、粟井裕一、小林日出樹
〈財団法人日本太鼓連盟〉
塩見和子(副会長)、大澤和彦(総務部長)、碇多香子(職員)

z0001_02.jpg
(富岳太鼓)
「Japan2001」公演を終えて
富岳太鼓障害者チーム代表 山内強嗣
 
 富岳太鼓障害者チームは、社会福祉法人富岳会という福祉団体を母体として活動しています。日本太鼓の持つさまざまな特性を活かし、25年前から施設を利用するお年寄りのリハビリテーション、幼児の情操教育、知的障害者のセラピーに和太鼓療育という独自のプログラムを開発し実践、研究を積み重ねてきました。
 今回その地道な取り組みを(財)日本太鼓連盟に認められ、イギリスで1年にわたって開催されますビッグイベント「Japan2001」のオープニング公演の大役に抜擢されたのです。
 初めてお話をいただいた時は我耳を疑いました。「本当に障害者チームですか?私たちで良いのですか?」思わず聞き返してしまいました。塩見副会長から返ってきたお言葉は、「当たり前じゃない!今あなたたちが行かなくて誰が行くの。胸を張って行ってらっしゃい。」この一言で、腹のそこからパワーが込み上げてきました。
 そして私たちの新たな挑戦が始まったのです。障害者だからといって許されるような演奏は絶対したくありません。3ヶ月にわたる猛練習の始まりです。並行して、パスポートを取るための自筆サインの練習、衣装、太鼓の準備、そして最終メンバーの選抜。出発前の予想をはるかに越えた仕事量に、同行する職員は自分の稽古も、準備もままならぬまま当日を迎えたのでした。
 出発してからも、13時間の飛行機の長旅。イギリスの気候風土、食べ物の違い。我々の不安は消えません。しかし、彼らはそれを見事に克服してくれました。そればかりか、滞在中は太鼓の演奏に来た日本の代表という意識を常に持ち、フリータイムも待ち時間も、嫌な顔一つせず、次のステージの打合せや稽古に取り組んでくれました。
 たった1週間の短い滞在でしたが、帰ってきたメンバーは、見違えるほど成長していました。改めて太鼓の秘めたるパワーと、そして知的障害者の療育に太鼓を取り入れたことが間違っていなかったことを確信した旅でした。公演も、ロンドンハイドパークでのJapan2001では、2日間で20万人を越えるお客様を動員し、帝京ロンドン学園でのチャリティ公演も大盛況のうちに終了。無事大役を務めあげることができました。
 このような素晴らしい機会を与えてくださいました、津田会長、塩見副会長をはじめ、多くの関係者の方々に感謝申し上げます。今回ロンドン公演に参加した障害者チームのメンバーはこの経験が大きな自信となって、一生心の支えになることと思います。本当にありがとうございました。
 
(拡大画面: 116 KB)
(障害者チームメンバーからの感想文)
日本文化の紹介Japan2001に参加して
石見神代神楽上府社中 佐々木裕司
 
 私は今回の公演で、日本文化の奥深さを感じ、太鼓の響き、打ち手の心、訴えかけるものに人は感動することがわかりました。
 私達の公演を見にこられた人々は、いつまでもなりやまぬ拍手喝采を投げかけてくださいました。本当によい経験をさせていただいたと思っております。
 また、富岳太鼓のみなさんの、聴くものの心を揺さ振るようなソウルビート(魂の響き)。本当にすばらしかったです。障害を乗り越えながら、太鼓に向うその精神、力強さは私達と何一つ変らない。むしろ私達のほうが見習わなければと感心しました。
 私たちは、ドラゴン・ダンスを演じましたが、なかなかメンバーの息が合わずに塩見副会長の叱咤激励を受け、それからの公演は自分でもだんだん良くなっていくのを肌で感じました。本当に嬉しかったです。
 10日間という長いようで短い海外公演も終り、帰国して思い返す毎日を過ごしております。この公演を陰で支えていただいたすべての方に、お礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
z0002_02.jpg
(石見神代神楽上府社中)








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION