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新老人の生き方に学ぶ[14]
SOSキンダードルフ(子ども村)建設活動の再開を願って
 元SOSキンダードルフ・ジャパン事務局長 竹田きぬ子
 
 SOSキンダードルフとの最初の出会いは1964年のことでした。以来、人生の半分をこの活動に携わってきました。
 SOSとは、SAVE OUR SOULSという3つの単語の頭文字をとったものです。「わが魂を助けてください」という子どもの叫びを受け入れることを意味しています。「身よりのない子どもに母親と暖かい家庭を」をスローガンに、第二次世界大戦後、町にさまよう子どもの救済に、故ヘルマン・グマイナー博士はたちあがり、数名の協力者とともに最初のドルフ(子ども村)をオーストリアのイムストに建設されました。
 一口でいえば、親のいない子どもたちに母親の愛情を伝え、美しい自然と暖かい家庭環境の中で、人間的にも社会的にも成長を促進する教育をしようという試みです。さまざまな思考過程を経て、1つの理念が生み出され、キンダードルフのポリシーともいえる四原則が実践されています。
1)マザー。
 最も重要な役割を果たしているのが、マザーの存在です。心の傷をもち精神的に病む状態での子どもたちを受け入れるためには、教育学的ではなく母の愛、常に子どもたちに注がれる母の愛が基盤となります。従ってドルフではマザーの選考とトレーニングに十分な配慮と注意がはらわれています。子どもたちをわが子のように受け入れ、愛してくれること。人格的に堅実でバランスがとれていること。健康的で、母性的でおおらかな心と性質をもっていること。独身または未亡人で、生涯を子どもたちのお母さんとして捧げられる人などの条件が要求されます。
2)兄弟関係。
 実の兄弟は1つの家で迎えられますし、同年齢だけではなく、さまざまな年齢の子どもに囲まれて暮らすことで、兄弟の役割が大切にされます。
3)家。
 子どもたちに安心できる「わが家」という気持ちが育まれることは、精神安定に不可欠です。
4)ドルフ(村)。
 10世帯から20世帯のファミリーが住み、コミュニティーがあり、場所によっては幼稚園もあります。ドルフはいわば大きな共同養育団体であり、家庭内だけでない、より広い基盤の上で子どもが成長できる触れ合いの場を与えるために考案されています。
 
 今日では130カ国、1,000カ所以上の子ども村と村に属するさまざまな施設が作られるまでに発展したこの活動は、日本に根をおろすことなく1996年、11年間の活動に中断を余儀なくされました。
 現在、世界のいたるところで多くのこどもたちが、内戦、飢餓、病気、いじめ、虐待などで苦しみ、 SOSを発信しています。日本でも実の両親の虐待や残忍な殺人で短い命が失われている報道に、多くの人は心を痛めていることと思います。薄幸な子どもたちの冥福を祈るとともに、人間に与えられている英知をもって何ができるか思い悩む今日このごろです。
 
竹田さんとともに子ども問題を考えてみませんか
日時 2002年1月24日(木)13:30〜15:30
会費 500円
会場 LPC健康教育サービスセンター
  お電話にてお申し込みください
電話 (03)3265-1907








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