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あなたの医療は適切ですか 第5回
咀嚼は生命維持に大きな役割
安富 トキ子
保健婦として長年高齢者の健康維持に従事する。
 
 さまざまな疫学的手法や動物実験などによって、咀嚼は健康と、さらに脳神経や感情とも深い関係のあることが医学的にも明らかになってきました。噛むということが心に満足感を生み、生きる意欲にもつながっているのです。とくに高齢者にとって、噛むことは顎の筋肉の萎縮や顎骨の骨粗鬆症の予防などの効果も期待できます。
 
顎は退化して廃用性萎縮
 
 愛知学院大学歯学部の噛む調査の結果、酢だこが噛めれば、ほとんどのものが噛めるということがわかりました。そのために必要な歯が20本。これが噛めるか噛めないかの境界線となります。
 
唾液の成分
 
 ほとんどが酵素で、このなかには発がん物質を抑えるペルオキシダーゼという酵素や老齢化を防止するパロチンというホルモンなどがあり、唾液をたくさん出すことは、健康であるために欠かせないことなのです。唾液は耳下腺、舌下腺、顎下腺という管から分泌され、噛めば噛むほどでてきます。普通平均して1日1 l〜1.5lはでます。
 
咀嚼は脳のはたらきや知能に影響
 
1.「虫歯→抜歯→咀嚼の低下→身体機能や脳神経機能の低下→痴呆」を遮断 よく噛めば胃の負担が少なくなり、満腹中枢が刺激され、たくさん食べなくても満腹感がでます。肥満を防げば生活習慣病の予防になり、上と下の歯の噛みあわせがよく、噛むことで歯肉を刺激して歯も丈夫になり、歯茎が強くなり、歯周病も防げます。また血行がよくなり、はげの防止にもなります。
 
2.痴呆との関連
 ECの痴呆研究グループとWHO、アメリカ老化研究所との共同研究によると、痴呆症のグループには、歯の数が極少または皆無、あるいは若い時に抜歯した割合が非常に高いことが明らかになりました。アルツハイマー病の原因は不明ですが抜歯による咀嚼力の低下が痴呆症やアルツハイマー病の危険因子であることはいえます。また、一人の人間の生活歴を追った調査によっても、加工食品や軟性の食品にかたより、抜歯後放置してあまり噛まない習慣が身についてしまった人は、やはり痴呆症の発症率が高いことから「咀嚼と脳神経、知能との関連性」が浮かびあがってきます。咀嚼というメカニズムによって、多量の情報を脳に送っていることがわかります。
 
新しい老年学へのアプローチ 米国の成功加齢の研究から学ぶもの
2001年3月20日(水) 13:30-15:30
講師 道場 信孝
   帝京大学平成専門学校校長
   (財)ライフ・プランニング・センター研究教育最高顧問
 
●参加対象 一般・健康教育担当者他
●参加申込 電話かファックスでお申し込みください。
  TEL (03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
●参加費 一般 1,500円・会員(LP会員・「新老人の会」会員1,000円)
●会場 (財)ライフ・プランニング・センター
  健康教育サービスセンター 東京都千代田区平河町2-7-5 砂防会館5階








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