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LPクリニクだより 健康管理担当者セミナーから
中年女性の健康管理
 第22回健康管理担当者セミナーは笹川記念会館会議室で11月28日(水)午後開催されました。司会の岡? 倫正ライフ・プランニング・クリニク所長は、例年開催しているこのセミナーは、[1]担当者と問題意識を共有する、[2]当クリニクの日常の姿を見て頂く、[3]トピックス的話題を提供する等が目的で、今回は標記のテーマで、普段から診療に関わっておられる医師に講演をお願いしたと話されました。次に財団を代表して日野原 重明理事長が挨拶され、財団は昭和48年より、医師による勧告でなく自分で自分の健康を守るためのノウハウを教えることを目的に、今日まで歩んで来たと述べられ、講演に入られました。
以下は講演の要旨です。質疑応答はそれぞれの講演と最後になされました。参加団体は51、参加者は66名で、十数名の方々が施設見学をされました。
 
講演1.中年女性のもつ悩みへの対応
 日野原 重明
 
[1]中年女性の正確な定義はなく、普通更年期が始まる40代以降から老年(65歳以上)まで(米国では50代以降)。[2]多くの女性が悪いイメージとしての老年への不安を持つ。子育てが終わり、夫は定年を迎える時期が含まれるが、子どもの問題の悩みが大半。更年期症状は心の悩みから発生した身体的症状が多い。[3]これを乗り切るために発想の転換が必要で、「病と共に生きる」「もう〜しかない思考でなく、まだ〜ある思考」「自分の後に続く人々のため」等の視点に立って、悪い条件に上手に適応する知恵と行動で対応すること。
 
講演2.乳房検査におけるマンモグラフィー
井上 裕子
 [1]日本における乳癌死亡率(1998年)はすべての癌の7.7%で、増加傾向にある。[2]ステージ1(腫瘤2センチ以下・腋窩リンパ節転移なし)で92.5%助かる。もっと早く見つけることが可能であれば、ほぼ治癒が期待できる。[3]触診で触れないしこり・微細石灰化をマンモグラフィー(以下マンモ)で発見が可能。[4]マンモによる死亡減少効果は39〜49歳で45%、50歳以上で23%。[5]被爆量は心配いらない程度で、癌発見の利点は被爆による危険を上回る。マンモ検査は40歳以上は少なくとも隔年、理想的には毎年がよい。
 
講演3.骨粗鬆症の診断・治療の現状と展望
岡? 倫正
 [1]加齢による背中の曲がりも症状の一つ。20年前から専門家による診断基準の改定が繰り返された。[2]男女共に20〜44歳(YAM)の骨量を基準とし、男性は徐々に、女性は閉経後女性ホルモンの減少に伴い急速に(平均年2%ずつ)減少し、老人では1%ずつ減少。[3]骨量はDEXA法で腰椎骨密度を測定するのが国際基準。[4]近年の診断基準は「骨塩量」により、YAMの70%未満を骨粗鬆症と診断する。[5]骨粗鬆症の予防はよい生活習慣にあり、カルシウムの多い食物の吸収性を考慮(禁煙を含む)してとる。適度な運動が必要。
 
講演4.中年女性の健康管理 ―婦人科の立場より
 太田 孝夫
 中年女性の健康管理は卵巣機能の低下対策と卵巣・子宮癌の早期発見に焦点を置く。[1]女性は50代で卵巣ホルモンが急激に減少し、更年期障害・骨粗鬆症・高脂血症等が増加する。これに対しホルモン補充療法(HRT)は有効であるが、血栓性疾患等は禁忌。米国の中・高年女性の約30%はこれを用いているが、日本での普及は人生観の違いやホルモン剤への恐怖もあり、5%未満。[2]子宮頸部癌はウイルス起因説もあり、できれば20代からの検診が理想的。50代以上は卵巣検診を内診と超音波で行い、早期発見の努力が必要である。
 報告 山村 恵美子








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