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Seminar 11月のセミナーから
あなたの歯は大丈夫ですか
東京医科歯科大学名誉教授 増原 英一先生
 
 昨年11月8日、LPCの健康教育サービスセンターで開催された上記のセミナーへは70名近くのご参加がありました。この日のお話の概要をご紹介いたします。
 
一般医療と歯科医療の相互交流
 
 これまでは医科と歯科は別々に教育されており、医療の現場における相互交流はほとんどありませんでした。しかし、最近の大きな総合病院では、医師と看護婦側から入院患者の歯科や口腔ケアが要請されるようになり、医と歯の相互理解と交流が深まってきました。つまり、全人的医療への変革が進みつつあります。
 他方、歯科医療の現場においては、これまでは対症療法が主体とされていました。しかし最近は、生涯を視野に入れた歯科医療の継続的な管理治療の必要性が痛感され、これを実践する方向に進んでいます。日本の歯科医療はいま改革期にあります。目標は生涯を通じて、自分の歯を保全し、食生活が楽しめるようにする医療です。それを実践するには、小児期から高齢期まで一貫した治療を続け、最後まで歯の維持管理の面倒をみてくれる歯科医師を選択することです。「医者を選ぶのも長寿のうち」といいますが、超高齢化社会には、長期的な視点からの選択が重要になってきました。
 
歯科医療の新潮流
 
 元気で楽しく生きていくには、目、歯、耳の3機能が揃って健全であることが望まれます。とくに歯は生きる力を得る源です。生涯を通して自分の歯が揃って、不自由なく食生活を送っていただくことが、これからの歯科医療の目標です。
 歯科領域の2大疾患はむし歯と歯周病ですが、いずれも細菌による慢性的な感染病であり、生活習慣病です。生涯を通じて歯を保全するには、初期の予防と早期治療、中高年からの口腔管理の継続が必要です。患者側と医師側の緊密な連携が不可欠となってきました。
 
むし歯予防と初期治療
 
1)カリエスリスクの診断
最近の研究により、各個人がむし歯に罹患しやすいかどうかの危険性(カリエスリスク)を検査することができます。この診断によるハイリスクの患者は、定期的な診療・検診を続けます。
 
2)フッ素化合物の塗布などで歯質の耐蝕性を高めたり、臼歯の咬合面の裂溝をフッ素徐放性の接着性レジンでシール(封止)して、齲蝕を予防する方法も小児歯科で広く実施され、効果をあげています。高齢期まで耐えられる歯や歯並びを小児期に整備しておくことが基本的に重要です。
 
3)接着性歯冠修復法と2次齲蝕の防止
 最近の齲蝕治療は、なるべく歯質を削らないで、小さく修復する方向です。また歯質と接着する歯科用高分子材料の進歩により、治療後にその周辺から再び齲蝕が進行して2次齲蝕になるという症例が少なくなりました。その後、歯科医師との密接な連携を保って、維持管理(メンテナンス)を継続していけば、生涯自分の歯を保持することが可能となります。
 
4)正常咬合の維持と成人の歯科矯正治療
 最近歯並びを矯正する成人が増えていますが、これは審美性の向上だけでなく、正常な咬合を維持することで、高齢期まで齲蝕や歯周病の予防に役立ち、有効適切な処置であるといえます。
 
歯周疾患の予防と定期検診
 
1)歯周疾患は30歳代からの歯肉炎や歯周病への罹患にはじまります。口腔内の細菌が食物残渣と一緒に歯と粘膜の表面に付着して、歯垢(プラーク)となります。自分の歯を失う主な原因は、この歯周病と不完全なむし歯治療の進行にあります。
 
2)歯周病の予防と定期検診の継続
 歯周病とは歯を支えている歯周組織(歯肉や歯槽骨)が破壊されていく病気であり、進行すると歯が動揺し、口臭の原因になります。予防と治療には歯周病指導医の診断を受け、歯垢の管理(プラークコントロール)を続けて、口腔内の健康を回復すること、そして抜歯しないようにすることが大切です。
 
3)高齢者で通院が困難な患者には訪問介護する
 専門的な教育を受けた歯科衛生士の訪問介護により、プラークコントロールを続けます。そして、日常の食事はよく噛んで、絶えず脳に刺激を与えることが必要です。
 
4)重症例では、歯槽骨の再生手術や人工歯根のインプラントを施して、生涯にわたり全歯列が保持できるようにします。歯周組織の再生治療も着々と進んでいます。
 
 日本歯科医師会では、80歳まで20本の歯を保持することを目標に、「8020運動」を提唱していますが、今日本の現状は80歳で6本が平均的といえます。また国民の歯科受診率は日本が昨年度41.1%であったのに対し、アメリカの受診率は低所得者層で51.2%、高所得者層で79.4%もありました(川渕 孝一教授調査)。
 生涯を通しての自分の歯を保持するためには、よい歯科医師の協力を得て、口腔ケアと修復歯のメンテナンスを続けることをおすすめします。
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 この後、この主旨に沿って、真坂歯科医院の院長・真坂 信夫先生が具体的な歯科医術や歯科医療サービスの実践を映像を用いてご紹介くださいました。
ボランティアリフレッシュコース
女性を利する絵本の機能
 
みらい なな先生
日時 2002年3月6日(水)  
  午後2時〜4時  
会場 LPC健康教育サービスセンター  
参加費 HCA卒業生は無料  
  その他500円  
定員 80名  
 
お電話でお申し込みください。
定員になり次第締め切ります。
カウンセリングアドバンス講座III (全10回)
丸屋 真也先生
 
 IIIではファミリーカウンセリングをテーマに、家族を一つのシステムと捉え、健全な家庭を築くためにはどのような援助ができるかを学びます。
 
期間 1月7日〜4月1日  
毎月曜日 18:00〜20:00  
参加費 LPC会員30,000円  
  会員以外はこのほかに年会費として  
  一般・4,000円/医療職・6,000円  
お電話でお申し込みください。








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