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維持会員とともに創るLPクリニクの医療
 LPクリニクは一般内科と総合健診を中心に、健康管理の実践を行っています。ここでの特徴として、維持会員制度があります。維持会員とは、財団の主旨に協賛し、その活動を経営的に支える有志の会です。
 LPクリニクの前身であるIPCクリニクが発足したのは、昭和46年(1971年)のことでした。主に東南アジアヘの医療の援助を行っていた日本キリスト教海外医療協力会が計画していた理想の医療のあり方を、私たちが中心となって規模を縮小して実現化したものでした。当時日本の医療は高度成長気運にのって、無駄な検査や薬で儲けるという傾向が強く、3分診療といわれるように、本来の目的を失った利潤追求型の医療が大手をふるっていました。私は医療が人々のためにあることを願って、それには病を治すだけではなく、病にならないための医療、予防医療こそが必要であると確信し、このクリニクを人々の健康を保つための施設と位置づけました。同時に当事成人病と呼ばれた生活習慣病予防のためのさまざまな学習プログラム(現在砂防会館内にある健康教育サービスセンター事業)を始めました。
 昭和48年、財団法人ライフ・プランニング・センターが厚生省より正式に認可され、クリニク名もLPクリニクと改めました。2年後、日本財団の故・笹川良一会長の好意で、新築された笹川記念会館の11階へ移転し、クリニク部門の充実が実現しました。そこでは実験的に、普通の健康保険では提供できないようなサービスを始めて、日本の医療制度を改善したいと考えたのです。早速、年会費一口5万円の維持会員を募り、生活習慣を自らよくコントロールしていただく技を伝えることと、生活習慣病を予防し、発病したものは自覚症のないうちに早期発見するように定期的に受診していただくこととしました。この会員の方たちには、心身上の理由で受診がきない時でも、いつでも電話で相談に応じますし、必要ならば薬も処方して送ります。また夜間でも主治医に電話をすることができます。入院を必要とする時には、心電図など詳細なデータとともに、私が理事長をしている聖路加国際病院をはじめ、患者さんの状況によって最適と思われる病院にご紹介しています。これらのサービスは現行の保険医療ではまかなえないことなのです。
 現在このクリニクは、専任の岡?所長を中心に、30名近い各科の医師が交代で診療を担当しています。私も水曜日の午前中の診療を、クリニク開設以来28年間、ずっと続けています。そして熟練した看護婦、臨床検査技師、放射線技師、栄養士、ボランティアの方がチームとなって働いています。受診者の状況をよりよく理解するために、ベテラン看護婦が時間をかけて病歴を伺い、それを整理して担当医師に届けます。また医師の受診の結果を受けて薬の説明、服用の仕方、食事指導、運動の仕方など自己管理の具体的な指導をします。検査結果もできるだけ当日に説明し、時間のかかるものは、希望があればご自宅に電話連絡いたします。結果を聞くためにわざわざ来所される労を少なくするためです。電話での相談や生活指導をこれほど細かに行っているところは、東京でも稀だと思います。
 LPクリニクは、これらの実験的な取り組みを、維持会員のご協力とともにすすめてまいりました。維持会員は現在150名、最高年齢は101歳です。ほとんどが会員の方の口コミで増えてきました。日本の医療の向上を願い、自らモデルづくりに協力してくださる会員の皆様に感謝申し上げますとともに、このような方たちがますます増えていくことを願っております。
 (財)LPC理事長 日野原 重明








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