日本財団 図書館


Seminar 3月のセミナーから
新老人ボランティアフォーラム世代をつなぐボランティアのはたらき
去る3月7日、内幸町ホールにて新老人のためのボランティアフォーラムが開催されました。このフォーラムの概要をご報告いたします。
講演 語り継ぎたい日本のこころと新老人
日野原 重明
 
 この運動が始まったのが昨年10月です。今現在、会員数は1100人を越えました。75歳を越えても元気で、何か社会に貢献したいという人が日本にどのくらいいるか、楽しみにしています。
 このままいくと、21世紀の日本は、生産人口の低下、家族の崩壊、犯罪の低年齢化など不安な要因に押しつぶされてしまいます。新老人の使命は、どうしたらよりよい社会を次世代にのこしていけるのかということです。まず身近な、そしてもっとも根幹である孫世代の子供の育成に積極的にかかわっていく必要があります。そのためには新老人も勉強しなければなりません。孫世代がどのようなことに興味があるのか、例えばコンピュータに興味があれば、それを勉強して、一緒に使うなかで、自分の戦争体験や世の中のこと、本当に大切なのはどういうことなのかを説教ではなく、一緒に考えていくのです。その関わりの中で、ご自分の人生体験を大いに生かしてほしいと思います。
 この新老人運動というのは、よいことを伝え悪いことは外に出さないということが基本です。それをまず自分がはじめ、家族へ広げ、地域へ、国へそして地球全体に及ぶと、それが平和運動になると思います。そういう意味で、よい悪いは自分にとってではなく、常に地球規模で考え、それを伝えてほしいと思います。
 また戦争体験のある皆さんひとり一人が、本当に健やかであるということはどういうことかを考えてほしい思います。そして健やかさを保っていける方法も考え、その実績を残し、次世代につなげ遺していくということもしなければならないと思います。
 どうすれば自分の病気を防げるか。こころを健康に保てるか。さらにどうすれば社会に貢献ができるか。この3つのことを常に念頭におき、前向きに取り組みながら生きているのが新老人の生き方です。そして老いに輝やき、第三の人生が一番よかったと思える生涯を送りたいものだと願っています。
ボランティア体験発表長崎原爆体験を21世紀に語り継ぐ
中野 道子
 
 中野さんは長崎での被爆体験をもつ方々の手記を編集し、1998年に上梓されました。中野さんはNGOのメンバーとして国際会議で発言なさるなど、海外においても活躍されている方です。ある会議の席上、求められるままに原爆体験を語られた際、各国からの聴衆が長崎の原爆の事実をあまりに知らないことに愕然とされ、手記編集に思い至ったそうです。
 被爆者の中には、いまだにその体験を語ることができない人もいるそうです。しかし、日本人が知らしめなければならない、そして今やらなければならないという思いから、第一版「時のかたみに」1000部がつくられました。これに続き学生向けに1000部、そして友人や学生時代の後輩の助けを得て、英文版1000部がつくられました。
 中野さんは「ひとりでも多くの人にこの本を読んでいただくことが一番うれしいことだと思っています。私たちは何かできること、自分の持っている力を生かしながら何かをするということが大事なのではないかと思います」と語られました。
 中野さんの貴重なご発言をもとに4月18日に「戦争体験を語り継ぐ」をテーマにセミナーを開催いたします。詳細は13頁をご覧ください。
おばあちゃんのパソコンサロンをオープンして
大川加世子
 
 大川さんは、1997年に、おばあちゃん世代がゆったりと学べるパソコンサロンを立ち上げました。現在89歳を筆頭に、200人の会員が楽しくパソコンで遊んでいます。
 大川さんは高齢者こそパソコンが必需品だとおっしゃいます。「会話は高齢者にとって生きるための栄養素です。けれども一人住まいの方や身体に不自由を感じる人にとって、話し相手をつくることは大変なことです。その点、パソコンを使えば、遠隔地の友達との会話も楽しめますし、孤独にならずに、新しい可能性も広がります。私のところでは、パソコンを教えるのではなく、興味のあることからはじめるようにしています。絵が好きな人は絵を描いてもらい、株に興味のある人はその日の株価を見てもらうことからはじめます。私たちはパソコンをふつうの会社で使っているのとはまったく違った、夢の箱としてみてもらいたいと思っています。男性も女性も大きな仕事を成し遂げてきた方ばかりです。これからは自分の趣味を生かして、贅沢な時間を過ごしていきたいと思います」とご発言されました。
コンピュータおばあちゃんの会
ホームページのアドレス
よき健康は最大の財産リサーチボランティアのすすめ
帝京大学医学部教授 道場 道孝
 
 ライフスタイルの研究に関しては古くからの歴史があります。与えられた環境と、それをどう選んで生きるかというこの相互作用によって、ライフスタイルは決まっていきます。つまり、どのような生活を選ぶかということが、将来の健康を決定することにもなるのです。一生の間には浮き沈みがありますが、前半がよくても後半が下がるようではあまりかんばしくないわけです。とくにこの「新老人運動」では、最終の部分をどのようにふくらませていくかということが問われているのです。
 ところで、老化における臓器機能の低下を調べると、体の中で一番機能低下が少ないのが脳です。脳の血流は、70歳になっても30歳の時に比べて80%も保たれています。血流があるということは、脳細胞が保たれているということです。同じことが心臓では65%、肺活量では55%、腎臓では45%に落ちているのです。ですから、頭はしっかりしているけれども、体がついていかないというのが加齢の現実です。このことをしっかりふまえて、新老人のみなさんは、頭も体もしっかりした新しい老人のモデルをつくるという意欲に燃えてほしいと思います。
 1999年にデンマークの研究者たちが、サクセスフル・エイジングを「良好な機能的能力と、高い社会的関わりがあること」と定義しました。私はこれを“加齢を華麗に”と表現しています。これをもとに、私たちはいまサクセスフル・エイジングが予測できるかどうかということを、みなさんの知恵と体をお借りして研究していきたいと考えています。加齢をいかに華麗に転化していくかが問題になるのは、人間をおいてありません。加齢で生じる問題をどうしたら先延ばしできるか、うまく調整して生きていけるか、これは人間に与えられた新たな課題なのです。医療においても、いまの目的は延命ではなくて、機能的に活動性を高めて、いのちの質を高めていくことが考えられています。そしてそれをいかにお金をかけずに実現するかということに意味があるのです。
 これらの研究のために、ぜひリサーチボランティアとして私たちの研究にご理解いただきたいと思います。
 
 この日は、国立健康・栄養研究所の杉山みち子先生のご協力を得て、リサーチボランティアを希望された70名の会員の方の身体計測検査、血圧測定、そして安静時代謝の測定を行いました。また休憩時には横浜メールカルテットによる男性コーラスもお楽しみいただきました。
z0011_01.jpg
リサーチボランティアの測定風景
z0011_02.jpg
横浜メールカルテットの皆様
z0011_03.jpg








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION