日本財団 図書館


IV.経過記録(Progress notes)
POSはoutcomeをめざすシステムである。
計画にもとづいてケア・治療を実施した結果、各問題の一つ一つについてのfollow upの記録である。(日野原'73)
計画にもとづいてケア/治療を実行した結果、各問題がどのように変化していっているか問題毎に経過を記録する。アウトカムに近づいているか問題を評価する記録でもある。
医療従事者が共に書くことによって、患者の入院から退院までの経過が分かる。
1.経過記録とは(日本看護協会2000)
看護を必要とする人の問題の経過や治療・処置・ケア・看護実践とその結果を記載したものである。
「看護」には、診療の補助行為・医療行為も含まれる事実も忘れないこと。
 
問題 → 問題解決のための計画 → 計画を実行した結果の問題の経過
問題 → 指示された医療行為 → 実行とその結果
z0025_02.jpg
経過記録においては、患者の問題、そして看護計画の実行その結果としての経過記録という一貫性・継続性が問われる。
2.経過記録の種類
1)フローシート:経過一覧表
2)叙述的な記録:文章で記載
3.患者の特徴に応じた経過記録および記載するべき内容に応じた経過記録
1)患者の特徴に応じた経過記録
a.急性期:急変者、重症者、何らかの予期しない問題・事故が起こった場合
 :叙述的な経時的記録
b.安定期:症状のコントロールも出来て、日常生活も自立できている患者
 : 勤務時間全体的な経過の記録(SOAPノートやフォーカスケアノート)
 * 安定している患者の記録は医師と同じ記録用紙に記載する。
その理由・根拠となる下記の規定
●入院基本料の届け出要件経過記録
個々の患者について観察した事項及び実施した看護の内容等を看護要員が記録するもの。ただし、病状安定期においては診療録の温度表等の余白にその要点を記録する程度でもよい。
●療養担当規則22条の解釈に関しては、「保険医以外の職種(看護婦、PT、OT等)が様式1号に準ずる(項目を網羅した)様式の診療録に記載するのは問題がないが、その際、記載の都度、記載者が署名又は記名押印すること」と共同での記載が認められた。
2)記載するべき内容に応じた経過記録
(1)時間軸に応じた患者の変化や医療の記録:経時的記録が適している。
(2)問題の経過・評価の記録:SOAPノート
(3)実践とその結果:フォーカスケアノートなど
4.フローシートの特徴
 患者の状態や問題とケアの経過などが一覧表で一目瞭然と理解できる。
1)ルティーンのケア
口腔のケア、清拭、創部の処置などは体温表などを利用して記載
2)ルティーンのアセスメント・観察事項
観察項目を決め、日勤帯、準夜帯などに観察した事実を記載
3)特定の問題の経過:
(1)看護計画に挙げた問題の中で、フローシートで問題の経過を追う方が良いものを選択する。フローシートに記載すれば、叙述的経過記録には記載しない。
例:褥創、その他の創、疼痛、不整脈(PVC)、人工肛門のケアと教育など
(2)目的を明らかにして、内容項目を決定し、一枚の用紙で10日間というように一定の期間の問題の経過を一目瞭然とわかるフローシートを作成する。
例:問題・褥創の変化とケア・処置など
(3)このフローシートに問題とケア・治療・処置などの経過を記載
  例 疼痛の強い患者のフローシート(# 問題)
z0026_01.jpg
  例 褥創のフローシート(# 問題 下記の記載は評価でもある)
z0027_01.jpg
 褥瘡管理のホームページも参照(金沢大学医学部保健学科真田弘美先生)
 「褥創管理」で検索すればアクセスができる。
5.叙述的記録の種類と特徴
 どの記録にも特徴と長所、短所がある。本質を理解すること
1)従来の経時的記録
ある特定時間の状態・治療・処置に焦点
10:00 12:00 14:00 16:00
定時あるいは必要時重症者の経時的記録
2)POS/SOAPノート
患者の問題に焦点
#1 S: O: A:評価 P:追加・修正
(多くは時間には無関係)問題の経過・成り行き、評価
3)フォーカスケアノート
患者のConcernsとケアに焦点
問題/ニーズと実施したケア
フォーカス D:情報(S&0) A:行為 R:反応・結果
ケア・関わりが必要な出来事を中心に記載
4)PIE:問題と介入と評価
問題と実行と評価を記載
Problem:問題 Intervention:介入 Evaluation:評価
5)SOAPIE
#1. SOAPノートに Intervention:介入と Evaluation:評価を追加する。
6)クリニカルパスCrinical PathwayあるいはクリティカルパスCritical Pathway
(標準医療:NHK)
ケア計画と実行/経過記録/評価の記録
クリニカルパスとは、ある特定の疾患・治療群の患者に対して行われる検査・治療・処置、教育、安静度などがルティーンとしてスケジュール表にまとめたものマネージドケアのツールとして開発された。
マネージドケアとは:効率的な時間と資源の活用によって、結果の達成に焦点を当てた患者ケア
コスト削減、一定の診療報酬の中で、合併症を起こさないで、予定された入院期間で退院するための手段として開発(アメリカ)
6.経過記録の記録用紙による記録の違い・影響
 叙述的記録は、記録用紙の構成要素とその構造によって記載内容が大きく影響を受けている。患者の状態に応じた記録用紙の適用と記載方法の選択が出来るような考慮が必要である。
1)時間軸を中心あるいは時間の経過を重視した叙述的経過記録用紙
時間の経過に伴って生じた介入が必要な事実・出来事と実行した治療・処置・検査とその結果が記載される
 例 急性期および重症者、急変者などの経時的叙述的経過記録
z0028_01.jpg
2)勤務帯をまとめて書く叙述的経過記録
安定した患者の場合、勤務時間帯の状態あるいは勤務時間帯に生じた介入が必要な出来事を中心に記載する叙述的経過記録用紙.一勤務一記録とする.
z0028_02.jpg
 医師と共同で記載する場合には、このような用紙が適している。
いくつかの病院は、急性期、重症者を除いて、医師、薬剤師、PT/OT、看護婦・士など医療従事者が同じ記録用紙に記載している。
3)記録用紙 SOAPノートの記載様式の課題
下記の記録用紙は、SOAPノート記載の誤解を招く要因
z0028_03.jpg
この用紙では、問題の経過を中心に書くというよりも、特定の時間の状態を記載するという定時経時記録になっている施設が多い。
10:00、14:00、19:00、23:00、1:00、2:00、3:00の状態として、言ったことだからS、観察したことだから0というような脈絡のない情報分類の記載、A、Pは空白、あるいは無理に記載している。記録用紙の無駄も多くなっている。
7.経過記録の書き方の実際
 問題志向型の記録の特徴はこの経過記録にある。叙述的な書き方(narrative note・ナレティブノート)はSOAP・ソープノートとも呼ばれている。
 narrativeというのは物語という意味であり、物事を順を追って文章で述べることである。note・ノートというのは簡潔な記録という意味で、目的をもって文字を選択して書くということである。
 問題ごとに、叙述的に文章で主観的・客観的情報を根拠に、問題の変化を解釈 ・分析し、書くのが叙述的経過記録である。問題解決的・評価的な意味を持つ書き方でもある。
 
何を書くか:
1.問題の評価(従来の看護計画の評価、看護過程の評価)
2.経過中に新たな問題が起こった場合は問題の評価、何故か
 
どのように書くか:
1.叙述的な記録:問題を中心としたSOAPノート
2.フローシート:問題の経過が一見してわかる一覧表:
 
1)基本的な叙述的経過記録の要素
 
基本的な叙述的経過記録の要素
#1.〜という問題。問題の番号と問題を簡潔に述べる。
S:subjective data 主観的情報(問題に関連する主観的情報)を簡潔に書く
O:objective data 客観的情報(問題に関連する客観的情報)を簡潔に書く
A:アセスメント/assessment、分析・analysis:SとOの情報を解釈・分析
・評価した結果を書く。評価を記載と理解する。
P:プラン・plan、planning・初期計画、問題解決のための計画の修正、追加を書く
 
(1)SOAP、その意味について
[1]S:subjective data(主観的情報)とは
subjective dataとは、問題に焦点を当て、意図的に患者から聞いたことである。患者の訴えや心配事はきちんと記録する。受け止めたことを明確にする。
[2]O:objective data(客観的情報)とは
objective dataとは、問題に焦点を当て、観察した事実、インタビュー結果、測定・検査結果等である。
[3]A:assessmentアセスメントとは
主観的情報と客観的情報を統合し、その情報の評価である。
assessmentは名詞で、動詞のassessとは「ものごとの意味・状態・本質を明らかにする」という意味をもつ。この場合の「ものごと」は観察した事実や言葉によって表現された事実であり、情報のことである。
本来、POSでは、情報を根拠・証拠にして、診断や治療に関する結論を述べることである。他の人が、読んで、なぜ、そういう結論に至ったのか容易にわかるようでなければならない。情報が重要な根拠となっている。
(自己弁護的な記載はしない。予見もつくらない。簡潔明瞭であること)
 
参考:アセスメントのタイプ
[1]健康状態を評価する(例:意図的に健康に関する情報を得て評価)
[2]アウトカム・期待する結果への経過・進歩を評価する(例:SOAP記録
[3]アウトカム達成・期待する結果への到達を評価する(例:目標の達成度)
 
 看護過程の最初の段階に位置づけられるアセスメントは、意味ある情報を意図的にあつめ、その情報を評価し、問題となる事実を判別するという意味をもっている。基本は評価である。
 多くの病院では、判断(judgment)と訳しているが、判断とは、倫理/基準などに従って判定を下す(大辞林)という意味でアセスメントとは異なる。日野原は考案・評価と訳している。一般的には査定、事前評価という訳語も使用されている。
 Weedは5項目に分類していた。assessmentは当初はinterpretation/解釈であった。その後SOAPになり、日野原はassessmentを問題に対する考按、評価と訳した。
 
SOAPノートにおけるアセスメントとは(評価):
1)問題の経過を追う時は、問題の評価、成果への到達度を書く
2)経過中に新たに問題が起こった時には、情報、客観的情報と主観的情報を統合し、それらの情報を解釈・分析、評価をし、または、情報を根拠に、問題は何か、何故その問題が起こったのかを書く。
 
主観的な情報および客観的な情報を根拠あるいは裏付けに評価したこと
[1]S+O:計画を実行した結果、この情報を根拠に問題は良くなっているのか、目標に到達しているか、どのように変化しているか
[2]どういうことなのだろう。なぜこのような事実が起ったのか、情報を解釈・分析した結果・情報を根拠・証拠に導きだした結論
 
[4]Plan(計画)とは
Plan・計画とは、問題の原因や誘因に応じて、何を、どのように問題解決のために行動すべきか、実施すべき行為を考え記述することである。
初期計画おける計画と経過記録における計画は異なる。
 すでに初期計画があり、計画を実行した結果、問題の成りゆきを分析して書く場合には、問題状況の変化あるいは新たに得られた情報を活用して計画の追加や修正を書くことになる。
(2)SOAPノートを書く実際的方法
アセスメントの概念の誤解が実に多い。感想文ではない。POSの本質を理解することが、課題。アセスメントとは、日本語では査定あるいは事前評価。評価をすることですある。記録で重要なのは、第1に客観的な状況が事実かどうかであり、これらの事実をどのように評価したかである。
【問題リストと看護計画および経過記録との関係】
1.問題リスト #1.患者の問題
2.看護計画
問題を解決するための看護計画
#問題 ←観察・診断計画(問題の経過を追うための) ←問題解決のための計画
3.看護計画の実行
4.経過記録 問題はどのように変化したか
#1.患者の問題 X
S:Subjective Data(インタビュー結果)
観察計画等で明らかにした情報を得る。現在の結果を記載する。
O:Objective Data(観察結果)
観察計画等で明らかにした情報を得る。現在の結果を記載する。
A:Assessment(問題の評価)
問題の経過を評価する。看護過程・看護計画おける評価と同じ
P:Plan(計画)
立案した計画への追加や修正
1.〜4.は一貫性があること。
 
(3)SOAPノートのモデル
下記の記載はSOAP記録のモデルである。(引用 日野原1973)
例:#1うっ血性心不全(CHFの経過、新たに起こった嘔吐、心配に焦点を当てている)
S:昨夜は平らな位置で熟眠したという。しかし、今朝、朝食後に嘔吐した。
昨夕の天ぷらが胸につかえるようだと言っている。長男の試験が今日だと心配している。
O:P40-CR46/30秒、VPC6/30秒、頚静脈の怒張は軽減(30度で−)。
尿量は昨日2100ml/day、体重45kg(−0.5)、嘔吐食物残差約300ml
A:昨日の利尿効果は確かにあり、熟眠出来たのは心不全の軽快を示す。嘔吐の原因は、長男のことについての心配・不安、または胃障害も考えられるが、期外収縮の増加から考えるとジギタリス中毒が疑われる。
P:今朝のジゴキシンの投与は中止し、DR.Tに連絡する。ECGと血清Kの結果を早く。Ed.P:患者にはジギタリスの影響で嘔吐したかもしれないので、今朝のジゴキシンを少し遅らせると伝えた。心不全は良くなっていると伝えた。
Y.Murata、RN
解説:この患者の入院理由はうっ血性心不全である。肺うっ血が強く、起座呼吸の状態で入院している。入院目的は、うっ血の軽減であり、ジゴキシンおよび利尿剤が投与された。
この経過記録では、うっ血性心不全という問題の経過を、S:Subjective Data(平らな位置で眠れた)およびO:Objective Data(心拍数と脈拍数、頸静脈怒張)を根拠に評価している。この経過の中で、あらたに患者に起こっていることは、「今朝、朝食後に嘔吐した」という事実である。アセスメントでは、心不全の経過を評価すると同時に、なぜ嘔吐したのか、意図的に情報を得て、この情報を解釈し、心理的な要因による嘔吐なのか、それともジギタリスによるものか評価している。期外収縮の増加を根拠にジギタリス中毒が疑われると記載している。ジギタリス中毒が疑われるので、ジゴキシンの投与は中止し、さらに、ジギタリス中毒かどうかを明らかにするために、医師に連絡し、心電図と血清Kの検査結果から嘔吐の原因を判別しようとしている。情報を根拠・裏づけに思考と実践の結論が伝わる記録である。
(4)実際の記載方法
[1]今、この経過記録に、何について書くのか、その焦点を明らかにする。
*問題リストに挙げた問題の経過を書くのか
*新しく生じた問題・介入が必要な出来事を書くのか
*実行を記載したいのか
[2]SOAPノートで問題の経過を書く場合
*問題ナンバーと問題を簡潔に書く=#。問題(栄養とか睡眠、不安など)
: その理由 #だけでは、何が問題か、第3者にはわからない。記載している人も問題数が多い場合、何について書いているのか、明確でないことも多い。
*S:Subjective Dataには、計画の中で、観察・アセスメント計画を立案しているなら、その計画に基づいて、患者と意図的に語り合う。その結果を精選し、重要な意味ある情報を簡潔にまとめる。(お茶とか、ダメダダメダというだけの記載は、脈絡がなく意味がない。)
*O:Objective Dataには、計画の中で、観察・アセスメント計画を立案しているなら、その計画に基づいて、意図的に観察し、その結果を記載する。
この記載は、客観的と言うことは、観察した事実を記載することである。
(呼吸平静は、解釈である。腹膨感(+)腹部膨満感は主観的情報である)
*S:Subjective Data、O:Objective Dataは、専門家としての信頼出来る根拠証拠・evidenceとなる。
*アセスメントは、情報を基に評価を記載する。計画に目標・アウトカムを設定しているのであれば、この目標を規準に、目標の到達度あるいは達成度を記載する。
*P:Planは、最初に立案した計画の追加・修正がある場合に記載する。
: 一連の過程は、論理的な思考過程をも表現している。
このような状態でした。故に、情報を根拠にこのように評価しました。
例:リスク状態や可能性の場合
#1.Xのリスク状態、可能性という問題
S:Subjective DataとO:Objective Dataを根拠・裏付けに
アセスメント:#1.は起こっていない。という記載になる。
[3]新しく生じた問題をSOAPノートで記載する場合
*記述しようとする問題現象を簡潔に書く「下腹部痛」など
*問題現象を意図的に質問し、事実を、S:Subjective Dataとして記載
いつから、どこが、どのように
*問題現象を意図的に観察し、O:Objective Dataとして記載
姿勢、腹部所見(視診、聴診、打診、触診)などを記載する。
*アセスメントには、なぜなのだろう。医師と話し合い、医師の意見も大切に。
不確実な憶測や病名は安易に記載しない。わからないならわからないとする。
次のプランで、Dr.Aに報告と記載すれば良い。あるいは、Dr.Aは「ガスのための痛みと指摘」という様に事実を記載する。
*P:Planには、問題解決のための計画・実行したことを記載
継続的に問題解決のための関わりが必要だと考えた場合は、#をつけて、問題リストに取り上げ、計画をたてる。
情報とアセスメントから、なぜこのようなことを実行したのかがわかる。
 一時的な問題であれば、一時的問題に記載する。
[4]主に実行を中心に記載する場合(応用・変形)
・問題に関連した実践の場合
#1.問題あるいは介入が必要な一時的な問題
S/0、あるいはD:
P:Planあるいは行為(action):実行した内容の記載
R:Response・結果:実行した結果どのようになったか
(5)アセスメントの記述に関する課題
アセスメントに憶測・個人的見解に基づく記載が多い。
例:血尿に関する不安は幾分緩和されたのではないか
今のところ吐気の誘発はないも不安は常に感じているか
訴えや表情より死は受容しているものと思われる(引用ナーシングレコード)
: 末尾が「〜か」や「〜と思う」というような表現は、客観的情報の確認不足による個人的見解であることが多い。〜が必要という表現は、計画である。
この原因は、アセスメントの意味および目的の誤解から生じている。
アセスメントは感想ではない。アセスメントは、日本語で査定、事前評価。
[1]アセスメントの概念に適した内容の記載
問題リストに挙げた問題の経過の評価や問題となる現象についての評価
適切なアセスメントの記載例:
・計画に沿い援助、状態に合わせ足浴、洗髪もできている
・経口的に約1000kcal摂取。本日IVH挿入し、IVHより約700kcalで、トータル1700kcalを摂取。摂取エネルギーの目標は到達(指示エネルギー量は1600kcal)
・病識もあり、リハビリにも協力的であり、落下、転倒出現せず、目標は達成した。
・ラキソベロンの効果が出はじめている様だが、効果は十分得られていない
・鎮痛薬使用により除痛図れている。
・wet-to-dry法は適切であった。浸出液も少なくなり目標は達成できた。
例 文献1よりアセスメントの記載を引用してみた。
アセスメント:左心不全による乏尿、ジギタリス中毒
アセスメント:朝のNPHインスリンの過剰による低血糖
アセスメント:FEV1はイスプレールを与えたあとは、著明にその値が好転している。
[2]アセスメントではなく、情報の記載
主観的情報あるいは客観的情報がそのまま記載されている。
不適切なアセスメントの記載例
・血沈1h 11 2h 26
・苦痛表情なし
・ナート部痛あり、苦痛な様子である。
・12/18まで38℃代の発熱認め、12/21頃より36℃代となるが夕方は微熱認め、氷枕、アイスノン使用中1/2 W700 CRP2。7
[3]看護婦の予見および医師が記載するべき内容について記載(不適切な記載)
客観的な根拠に基づかない内容の記載。この記載で多いのが「思う」「可能性」などである。
不適切なアセスメントの記載例(下記のようなアセスメントは記載しないこと)
・高齢でもあり発熱が続くことで体内の代謝の亢進により生命に危険をおよぼすことも考えられるため、細かな観察を行い異常の早期発見に努めるとともに全身状態が悪化しないよう援助が必要である
・opに伴なう硬膜の欠損により髄液漏があると思われる。感染により、髄膜炎を起こす可能性があるので、感染の徴候を早期に発見する必要があると同時に、診断が確定するまでは安静を保持していく。
・経口摂取できない為インシュリン注射は中止との指示だが7/30の退院時の血糖値が285ml/dlであったことから、血糖値の上昇や、胆のう炎の悪化による症状とも考えられる。本日の血小板血3.9万と低いため、内服可能であればプレドニン服用させたいとDrから指示があるが無理せずに。
・内服していないも血圧値おちついている内服の必要あるのか?
・分娩時羊水混濁(+)胎盤横染(+)あったため、子宮内膜炎が考えられる
・アンモニア202mg/dlであり、眠気は脳症症状の現れであると思われる。また、それにかぶせてレンドルミン1Tも効きすぎているのではないか。
[4]計画立案や一部実施内容の記載でありアセスメントではない
不適切なアセスメントの記載例
・腹部症状観察脳症症状ないが注意して見てゆこう。
・レベル、Bp変動みていく
・排便状況見ていく。
8.POS・SOAPノートの長所・短所
1)長所:医療従事者が共同で記載が可能である
(1)患者の問題が明確に理解できる。
(2)論理的な思考過程が記述される。(評価・分析がアセスメントに書かれる)
患者に起こっている事実をどのように解釈したのかその考え・結論がデータを根拠に明確に伝わる。
(3)患者の現在の状態が明確に理解できる。
(4)患者の状態を適切に評価できる。
(5)チーム医療におけるコミュニケーションが効果的に行える。
2)現実的な問題
(1)SOAPノートには実施した看護が記載しにくい。(P:Planに記載する)
(2)情報のSOの分類が適切でないことも多い。
(3)アセスメントが書かれていない。あるいは書けない場合もある。
(4)SOAPノートは時間がかかる。各シフトの受け持ち患者数が多いという実状。
(5)経時記録にSOAP記録を導入した結果の形骸化が起こっている。
これはPOSの経過記録の誤解である。特に看護記録には習慣があり、10時、14時というようなある特定時間に記載する施設が多い。時間軸に焦点を当てたSO AP記録は困難である。しかも、経過記録にSの欄、0の欄、Aの欄、Pの欄と縦線を引きその時間帯の情報をそれぞれの欄に記載しており、アセスメントやプランの欄は空白になっている。このような経過記録の様式では書けない。
(6)意味あるアセスメント・評価の記載がなされていない。
根拠・証拠に基づいた分析・評価が困難である。この記録に関する評価は、アセスメントを記載している部分だけ抜粋してみると、書く意義があるかどうかわかる。
 多くは、計画・〜が必要、様子をみよう。不安が強いのではないか。というような憶測・個人的な見解、計画が記載されている。根拠のない感想文と指摘されても仕方がないかもしれない。
9.今後の課題
1)問題リストは患者がもっている問題に焦点をあてる。
2)計画は、実行可能な内容とし、実行する。
3)経過記録の書き方を再検討する。特に事実(S、O)を根拠に問題の経過を記載する。
記録の基本
どのような形式の記録をみても共通する原則は、下記のようにまとめることが出来る。患者の状況・状態、訴えたこと、意図的に聴いたこと、見た事実・観察所見これらは、S:Subjective Data、O:Objective Dataであったり、S/0であったり、Data(主観的、客観的情報を含む)、これらの分類がない「事実記載」であったりする。
さらに、何かを行った場合には、下記のことが記録される。
(もし記載出来れば、なぜ、このような行為に至ったのかに関する結論。)
実行した事、医師の指示に基づく医療行為、ケアその結果








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION