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相談員雑感
 センターに行く途中に、金木犀の香りが漂ってきて季節を肌で感じる至福の時です。
 アメリカで起きた同時多発テロのニュースは、二週間過ぎても連日のように新聞紙面を埋めています。その犠牲になられた方々の、ご家族、知人、友人の悲しみ辛さはいかばかりかと推察するに、ただただ憤りを感じ胸がいたみます。二十一世紀の今ではもう遠い他国の出来事ではなく、いつ我が身に振りかかるかと思うと、とても対岸の大事ではすまされないものがあります。
 発足以来一年余を経過した犯罪被害者相談も少しづつではありますが、相談の「ベル」は確実に増えてきています。被害を受けられた本人は勿論のこと、身内の方も例え過去の事でも、思い余って相談をしたくて掛けていらっしゃいます。そのお声はたんたんとしているようですが、悲しみや辛さのこもった声です。時間は経っていても、もしかして時間が経てば経つ程思いはつのるばかりで、決して薄れるものではないのかもしれません。それを聞いているこちら側に張りつめた空気が伝わって来て、相談相手に寄り添い、どんな援助が必要か、そのためにはいかなる援助手段があるのか適切な対応策は、となります。そのための研修はおろそかにできません。
 それ以前に大事なことは受手側の心の有様だと思います。いろいろな思いや悩みを抱えている相談者を暖かく受けとめ安心して話せるこちらの対応が大切になります。それには自分のあるがままを大事にしながら、常に自分を冷静に見つめることを心掛け電話相談を続けていければと思っています。
(Y・T)
 
 受話器を取るようになって早八ケ月、当番日が近づくにつれ緊張感が増し、支援センターに向かう時は高鳴る鼓動をどう静めようかと深呼吸をしたり、資料をパラパラと見たりしながら往路を急ぎます。
 そして、支援センターのドアを開けると、事務局の方が笑顔で出迎えてくれ、暖かいコーヒーを一杯いただくと今までの胸の高鳴りが少し落ち着いてきます。
 私は、今まで電話相談員としての経験もなく、本当にこの私がやっていけるだろうか(?)そんな漠然とした不安の中でのスタートでした。そして、何回か回数を重ねるごとにその不安の中身として、この犯罪被害者支援センターでは、援助を具体的にしたり、一般常識社会常識に加えて専門的な知識が必要になってくること、そして、相談者の話す内容をきちんと整理し、ニーズは何なのか把握しなければなりません。又、それらを自分の力で解決できるかどうかの見極めを短い時間の中でしなければなりません。又、気持ちを聞くより先ず事実関係の把握も必要です。
 このような課題の中で自分自身を客観的に見た時、本当に焦りと不安でいっぱいになります。しかし、支援センターに不安を抱えて電話を掛けてくる相談者と同じように、初めは小さな点でもそれらの点と点をつなげながら、又ややこしい内容をたぐりながら、時間をかけてお互いの距離を縮めていけるようになればと思っております。
 そして、事務局、又諸先輩のアドバイスを支えにして、電話相談員の一員として、自分のできることから一歩一歩前進していけたらと思っています。又、いつの日か、この不安が自信につながっていけることを夢みて、帰りは少しスキップをしながら、のんびりと家路に向かいます。
(A・S)








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