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ドメスティックバイオレンス被害者からの相談
A・Kさん(四十代)は、十五年間にわたり、夫からの暴力を受けていましたが、「もうこれ以上耐えられません。」と相談にこられました。
 長年の暴力は、髪の毛を掴んで部屋中を引きずりまわすなど、時には殺意すら感じられたとのことでした。
 A・Kさんは経済的に豊かな家庭で育ちました。彼女にしたら当たり前の買い物でも、夫からは浪費家だと怒鳴られました。弁解すれば暴力を振るわれ、耐えられず実家に戻ると、母親からは、「女は耐えることが美徳だ」と論されます。夫はじきに、借りた猫のようにおとなしい態度で土下座をして彼女を迎えに来ます。今度こそやり直そうと自宅へ戻ると、夫は優しく接してくれ、蜜のような一時が過ぎるのですが、それも束の間、ささいなことでその態度は一変し、また同じような暴力が繰り返されるのです。
 父親の暴力を見続けた二人の子供からは、「あんなお父さんとは別れてほしい」とつきつけられます。経済力のない彼女は、子供二人を引き取ってどうしたらいいのだろうと戸惑うばかり。長年の暴力により、自己への信頼や自尊感情が希薄になっているため、離婚についても考えられない状態でした。そんなとき、当センターへ相談にきました。
 カウンセリングが進むにつれ、彼女は自分自身が自立していないことに気づき、離婚して子どもを引き取る決断をしました。不安定なスタートではありましたが、就職し、初めて自分で働いてお金を手にした感動を話してくれ、「あきらめていた人生だったが、子供に気づかされた。自分の身を守ることで精一杯だったが、私以上に子供たちが傷ついているのではないか」などと、思春期を迎えた子供たちの心配をするまでに回復しました。
※相談事例は、ご本人の了承を得て登載してあります。








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