VI 企業年金制度
長引く景気の低迷による超低金利を背景として、企業の負担する年金コストの高まりなど企業年金が企業経営に与える影響は大きく、その見直しの議論の中でにわかに注目を浴びてきた「確定拠出型年金」については、当研究所でも平成11年及び平成12年の調査でその関心度の高さを紹介してきたところである。この確定拠出年金については、本調査実施時と時を同じくした昨年10月より制度が動き始め、また、新たな企業年金として「新確定給付企業年金」も平成14年4月からスタートすることとなっている。そこで、企業ではこの企業年金についてどのような対応をするのか確かめてみた。
1. 新たな企業年金の導入状況〔第55・56表参照〕
まず、新たな企業年金について「確定拠出年金」、「確定拠出年金(退職金の前払いとの選択制)」、「新確定給付企業年金(規約型)」及び「新確定給付企業年金(基金型)」の4形態に分けてその導入状況を調べた。その結果をみると、既に適用の始まった確定拠出年金を導入あるいは導入を予定している企業の割合は平成11年、12年調査で「早急に導入したい」と回答した企業の割合(11年4.3%、12年4.2%)に比べると若干低く、平成14年4月から適用される新確定給付企業年金を含めて新たな企業年金制度について検討中のようであるが、「確定拠出年金」の導入を主体に検討している企業の割合が高いようである。平成13年12月11日に厚生労働省が確定拠出年金の第一陣となる企業の承認をしたが、その多くは金融業となっていたことをみると、現在の超低金利下で年金原資の運用を自ら行わなければならず、そのノウハウを熟知しているであろう金融業が多いことは当然かもしれない。その他の企業は今のところは先行して導入したこれらの企業の様子見といったところなのであろう。
企業規模別にみると、3千人以上の企業では「確定拠出年金」を導入又は導入を予定している企業の割合が高く、3千人未満の規模の企業では「新確定給付企業年金」を導入又は予定している企業の割合が高い傾向にある。
第55表 新たな企業年金制度の導入状況
[1]企業規模別
項目\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
確定拠出年金 |
268社 |
53社 |
36社 |
115社 |
64社 |
  |
導入(予定含む) |
2.2% |
3.8% |
5.6% |
0.9% |
1.6% |
検討中 |
72.4 |
75.5 |
69.4 |
73.9 |
68.7 |
導入しない |
25.4 |
20.7 |
25.0 |
25.2 |
29.7 |
確定拠出年金(退職金の前払いとの選択制) |
268社 |
53社 |
36社 |
115社 |
64社 |
  |
導入(予定含む) |
1.1% |
1.9% |
−% |
0.9% |
1.6% |
検討中 |
55.6% |
60.4 |
61.1 |
56.5 |
46.9 |
導入しない |
43.3 |
37.7 |
38.9 |
42.6 |
51.5 |
新確定給付企業年金(規約型) |
268社 |
53社 |
36社 |
115社 |
64社 |
  |
導入(予定含む) |
7.9% |
−% |
11.1% |
7.8% |
12.5% |
検討中 |
53.7 |
64.2 |
50.0 |
53.9 |
46.9 |
導入しない |
38.4 |
35.8 |
38.9 |
38.3 |
40.6 |
新確定給付企業年金(基金型) |
267社 |
53社 |
36社 |
114社 |
64社 |
  |
導入(予定含む) |
4.5% |
3.8% |
2.8% |
4.4% |
6.2% |
検討中 |
43.8 |
54.7 |
52.8 |
43.9 |
29.7 |
導入しない |
51.7 |
41.5 |
44.4 |
51.7 |
64.1 |
産業別に導入又は導入予定とする企業の割合をみると、「卸売・小売業、飲食店」で「新確定給付企業年金(規約型)」が18.4%、「同(基金型)」が10.2%と高くなっている。また、「金融・保険業、不動産業」では「新確定給付企業年金(基金型)」が4.2%となっているほかは回答がなかったが、前記の確定拠出年金の先行導入企業との関係をみると相反する結果となっていた。
第56表 新たな企業年金制度の導入状況
[2]産業別
項目\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
確定拠出年金 |
268社 |
29社 |
141社 |
17社 |
8社 |
49社 |
24社 |
  |
導入(予定含む) |
2.2% |
−% |
2.1% |
5.9% |
−% |
4.1% |
−% |
検討中 |
72.4 |
75.9 |
73.1 |
70.6 |
75.0 |
67.3 |
75.0 |
導入しない |
25.4 |
24.1 |
24.8 |
23.5 |
25.0 |
28.6 |
25.0 |
確定拠出年金(退職金の前払いとの選択制) |
268社 |
29社 |
141社 |
17社 |
8社 |
49社 |
24社 |
  |
導入(予定含む) |
1.1% |
−% |
1.4% |
−% |
−% |
2.0% |
−% |
検討中 |
55.6% |
51.7 |
55.3 |
64.7 |
75.0 |
53.1 |
54.2 |
導入しない |
43.3 |
48.3 |
43.3 |
35.3 |
25.0 |
44.9 |
45.8 |
新確定給付企業年金(規約型) |
268社 |
29社 |
141社 |
17社 |
8社 |
49社 |
24社 |
  |
導入(予定含む) |
7.9% |
−% |
7.8% |
5.9% |
−% |
18.4% |
−% |
検討中 |
53.7 |
62.1 |
53.2 |
82.3 |
50.0 |
42.8 |
50.0 |
導入しない |
38.4 |
37.9 |
39.0 |
11.8 |
50.0 |
38.8 |
50.0 |
新確定給付企業年金(基金型) |
267社 |
29社 |
140社 |
17社 |
8社 |
49社 |
24社 |
  |
導入(予定含む) |
4.5% |
3.4% |
3.6% |
−% |
−% |
10.2% |
4.2% |
検討中 |
43.8 |
48.3 |
45.7 |
35.3 |
50.0 |
30.6 |
58.3 |
  |
導入しない |
51.7 |
48.3 |
50.7 |
64.7 |
50.0 |
59.2 |
37.5 |
2. 新たな企業年金と現行制度との関係〔第57・58表参照〕
新たな企業年金をどのような形態で導入していくのかを複数回答でみると、現行の「退職年金を移行する」が回答企業の59.4%と最も高い割合となっていた。次いで「退職一時金を移行する」も46.5%と5割近くあったが、「現行の制度に追加する」といった企業は25.2%と最も低い割合となっていた。
企業規模別にみると、規模の小さい企業ほど「現行の制度に追加する」の割合が高く、また、「退職一時金を移行する」は規模の大きい企業ほどその割合は高いという結果であった。
第57表 新たな企業年金制度と現行の退職金制度との関係
[1]企業規模別
(複数回答) |
項目\回答企業数\企業規模 |
計 |
5千人以上 |
3・4千人台 |
1・2千人台 |
千人未満 |
155社 |
31社 |
19社 |
66社 |
39社 |
現行の制度に追加する |
25.2% |
12.9% |
21.1% |
24.2% |
38.5% |
退職一時金を移行する |
46.5 |
74.2 |
57.9 |
39.4 |
30.8 |
退職年金を移行する |
59.4 |
61.3 |
52.6 |
63.6 |
53.8 |
第58表 新たな企業年金制度と現行の退職金制度との関係
[2]産業別
(複数回答) |
項目\回答企業数\産業 |
計 |
農林漁業、鉱業、建設業 |
製造業 |
電気・ガス・熱供給・水道業、サービス業 |
運輸・通信業 |
卸売・小売業、飲食店 |
金融・保険業、不動産業 |
155社 |
8社 |
85社 |
10社 |
7社 |
35社 |
10社 |
現行の制度に追加する |
25.2% |
12.5% |
25.9% |
30.0% |
14.3% |
25.7% |
30.0% |
退職一時金を移行する |
46.5 |
25.0 |
49.4 |
40.0 |
85.7 |
40.0 |
40.0 |
退職年金を移行する |
59.4 |
75.0 |
54.1 |
70.0 |
71.4 |
60.0 |
70.0 |