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その3
 この辺を半径で書いてみますと、かなり広域、3000万以上の人口がいるところだろうと思います。それが域内になってしまっている。そうしますと、その中で、域内の混載小口でやっている荷物というのは今後も増えていくだろう。
 ちょうどこの委員会で私の隣にいつも座っておられたのが、マイカルの故小林会長だったのです。小林さんと話をしていましたら、小林さんは面白いことをおっしゃっていました。今、マイカルの扱い商品の40%くらいは外国から入ってきている。それは船で入ってくるわけですね。ほとんど開発輸入ですから、船で入ってきますが、入ってきたのを今、川崎で揚げているわけです。川崎FAZがございます。三井物産が絡んでいるのですけれども、ここに入れる、揚げるわけです。で、そこからマイカルでは、国内の店舗向け配送体制をとっているというふうにいうわけですね。で、従来でしたら、例えば日本のどこか地方の工場で作られたものが、大量一括で関東なら関東、関西なら関西の大型市場のところまで持ってこられて、そこで小口に分けられて各店舗にいくという、こういう形がありますから、域間輸送の大量一括が生まれる。そして、域内に入ってからまた今度、荷物が一回まとまって、そして小口になる。ところが、現在のやり方から見ていくと、外国から船で入ってくるから日本国内の域間輸送はなくなるわけです。日本国内の域間輸送がなくなって、日本に入ったものは港湾の倉庫からそのまま小口で店舗配送される。川崎FAZのマイカルは、地域内の配送センターの役割も果たしている。そして小林さんがおっしゃっていたのは、今現在は川崎FAZへ全部入ってしまうけれども、そのほうがいいのか、日本国内を3ケ所か4ケ所の荷揚げ港という形で設定しておいて、それぞれに対して、船で直接揚げるほうがいいのか、川崎でおろした内、他の港湾に行く分はフィーダーで持っていくほうがいいのか、ちょっと考えてみてくれと言われたから、そんなものただでは考えません、と言ったのです。そういうような選択肢があるわけですね。
 その選択肢というのは、従来の日本で考えていたような物流のネットワークとは全然違うですね。これはどうも、最初のグローバリゼイションと産業構造の変化とを考えると、まったく新しい物流のやり方というのが生まれてくるのではないかというふうに思うのです。新しいシステムをそこで作ることになります。そして、そういうようなグローバリゼイションと新しい物流システムが出来てくると、次に生まれてくるのは何か。それに対応するための、つまり、グローバルサプライチェーンまたは国内のサプライチェーン。サプライチェーンという考え方をとってくると、そこに入ってくる複数企業がバーチャルコーポレーションという、つまり複数企業でひとつのプロジェクト形成をやるという形で全体完了するわけです。
 ということになってくると、それを演出する、またはその中でのものの動きをコーディネイトするという企業が必要となるのではないか。これがつまりサードパーティロジスティクスであり、インテグレーターといわれる運輸業者である。そういうものが生まれてこないと、このサプライチェーンというのはうまく機能いたしません。そうすると新しい物流における機能者が登場してくるはずです。じゃあ、この機能者をどういうふうにうまく使っていくのか、または営利業者であればどうやってその機能者になっていくのか。今のところは総合商社が非常にこれに興味を示していますが、そういう新しいものがうまれてくるはずだ、というのが次にあるはずですね。
 それからもうひとつ、物流問題を取り上げていく時に欠かすことができないのは、日本の現在の物流というのが、ひとつひとつの段階別に独立しているものをくっつけていって、作っているということ。これは運輸でもそうですし、企業の場合でもそうです。
 運輸というのはネットワークで輸送する場合は、それぞれネットワークのリンクの部分で独立しているわけです。国内輸送と国際輸送は港湾の所で一回切れている。だから非常に面倒くさい接続が必要になるという考え方があると思うのです。
 そして今度は企業が大量一括してチャーターで運ぶ部分と、または小口混載ネットワークで運ぶ部分は全然別である。つまり、ぶった切られたものをくっつけているのですね。荷主の方から言うと、国際輸送に対する物流体系と国内輸送に対する物流体系がまた切れている。または、事業の部門別に切れている。それぞれが独立している。こういうものを統合化していかなきゃいけない。こういうのを多分一貫物流というと思うのです。一貫物流を狙って作っていく必要があるのではないか。で、その一貫物流を実現するために一番必要なのは何かというと、取引慣行であり、取引条件であり物流の制度における慣行部分である。ですから、この中では取引慣行を代表して取り上げているんですが、取引慣行の標準化整備をやらないと一貫物流は出来ませんよということを言っております。
 それからもうひとつあるのが、複合一貫輸送と基盤整備というのがあげられます。多分今あげました一貫物流サービスをやりますよ、または国際ロジスティクスネットワークを組みますよ、国内のサプライチェーンを作りますよということになると、そこでの具体的な輸送というのは、複合一貫輸送体制をとらなきゃいけないと思います。複合一貫輸送体制の中に例えば、パレットサイズの標準化のようなものも入ってくるでしょうし、あるいは港湾における手続き、または一貫サービス、ワンストップサービスという言い方をしたりする場合もありますし、国際EDI批准の問題といった、こういう問題が全部絡んでくるのです。そういった複合一貫輸送を行うための基盤整備、インフラ整備というのが新たに必要になってくる。
 それからもうひとつの政策的な問題というのは情報化とITですが、これはもう、通信インフラと標準化。これは絶対必要だと。これを先にやるべきだと。そうしないと、これは使い物にならないんじゃないかと。そういうことをずっとやりながら、実はこの中に出てきた問題の中にひとつ面白いことがある。これは入れるとちょっと問題があるから、入れてないですが。ひとつはこれから先の物流を考えていく時、必ず労働力は足りなくなるはずです。ですから、この答申の中では、高齢労働力の活用、女性労働力の活用が入っています。ただ、議論の中ではそれでは対応できないはずだということで外人労働力の議論が出ました。ただ、これは運輸省だけの一存で運輸政策審議会の守備範囲として入れるにはあまりにも問題が多すぎるから、入れなかった。でも、議論はいたしました。
 そこで、私は実は3e物流というのは、3つのeと2つのgだということをいいます。これからの物流を考える上でのキーワードは、3つのeと2つのg。ひとつのgは最初に申し上げました、グローバリゼイション(globalization)。もうひとつのgは何か、ジェントリー(gently)、やさしさです。
 やさしさというのは、例えば高齢労働力を物流に使う、女性労働力を物流に使うといった場合には、今までの物流のやり方、例えば荷物の単位、荷卸しの仕方あるいは物流拠点の福利厚生施設、こういうものを全部ひっくるめて整備していかなければいけない。
 それからもうひとつは外人労働力が入ってきた場合には、今度は物流作業のマニュアル化あるいは物流の指示の仕方、こういうものを変えていかなければいけない。これがジェントリーである。だから、3eプラス2gで考えていきましょうという事を言ったわけです。
 もうひとつこれも、やはり入れられなかった話ですが、私は横浜が地元ですので、横浜の港湾局なんかの仕事をやります。神奈川県に川崎というのがあります。川崎港を整備するというので、私は委員会に入りましたけれども、その委員会の中で悪口をひとつ言いました。何か。
 今、港湾整備をする。全国各地域で港湾整備をする。3種の神器といいますね、何か。ひとつがコンテナ埠頭、もうひとつがFAZ、もうひとつがテクノスーパーライナーの寄港。この3つをセットにしないと、港湾のビジョンにはならないと各地方では思っているらしい。全部入っちゃったら日本国内に、この3つの機能を持った港湾がぼろぼろ出来ますから、そんなものは全部が全部、赤字になってしまう。そんなべらぼうな話はない。
 で、今一番重要なのは何だろうかといいますと、どうも地域間の競争と協調だと思います。北九州という地域を考えたら、物流拠点としてみた場合には福岡との競争になる可能性がある。広島との競争もあります。これは私、一昨年まで広島の地域物流マネジメントの委員会に入っていたんですが、広島は競争相手として岡山、京阪神、それから北九州、福岡を挙げるわけです。これはもう地域間の競争がおこる。必ず競争がおこる。荷物の取り合いです。神戸であれば、大阪港との間の競争でしょうし、当然、横浜港との間の競争もある。東京湾でいうと千葉港、川崎港、東京港、横浜港、これ全部競争相手、荷物の取り合いになる。そういう競争が実際あるわけです。
 大体港湾というのはですね、北九州はアジアに近いから優位だと言うけれども、これは荷主の方からみれば、別に近いから優位だと思っていないですよ。揚げてからどうするかというのが基本ですから。そうであるとしたら、例えばアジアに近いといったら石垣島かなんかに、大型拠点を作れば、そこに荷物を揚げてしまった後どうするかといったら、また船で持ってこなきゃいけないですね。フィーダー輸送というのがまた出てくるわけです。フィーダーどころではなくなります。そうなれば、巨大な市場であれば船で揚げるのは、東京なり大阪で揚げる方が有利であるに決まっています。それから、小口輸送すればいいわけです。
 ですから、そういうことを考えるならば、やはり、拠点の間の機能分担が必要です。
日本のハブ空港、ハブ港を置くのであればどこがいいか。シンガポールや香港のように、内陸に揚がって出るのではなくて、そこで積み替えてまた、つまりハブとして集荷分散をやる。つまり通過型のトランジット拠点と考えるのであれば、沖縄の方というのは立地的に非常にいいんです。そういう意味からいうと北九州でもいい。北九州の場合であれば、内陸をどうするかという問題と、単に通過交通の問題として港湾整備をするかというのは、随分やり方が違ってくるのです。
 地域物流マネジメント計画の中で挙げましたのは何かというと、プライオリティ。つまりこの地域の物流特色というのは何なのか、それに対してどういうふうな方向性を出すのかというのを一番先に決めてください。地域物流マネジメントではいくつかの性格付けというのがあるんです。それは例えば国際物流拠点として整備する。または都市内交通をどうする。これまでの地域物流マネジメントの各地域でやっている分をみると、一個一個に対してどう対応するという書き方をしてらっしゃるですね。で、全部に対応すればうまくいくわけがない。そうであるとしたら、例えば内陸を、内陸の小売店に対する国内物流の広域拠点と港湾を結びつけるというふうなものに対する政策と、荷物を集荷してそこからロットにして出していくという分では、またやり方が違うはずです。両方とも取りたいというのは、若干欲深かもしれません。そういう機能分担、地域の機能分担が必要でありましょうということも、この中で含めております。
 そういうことから考えると「国民生活の変化への対応」は、実はこの答申の中では非常に異質ですね。異質ですけれど重要です。4ページの下に「サービスメニューの拡大等による利便性の向上」があります。今までやってきた分でいうとですね、いろいろな国民のニーズがあるから、それにうまく対応する為という発想は全然入ってこないですね。例えばリサイクルをどうするか、またはグローバリゼイションにどう対応するか、ITをどうするか。多分かなり物流システムは皆様方の頭の中で非常に整備された、あるひとつの形を持ったものだということになるだろうと思うんです。
 ここでいきなり、じゃあ国民の要望・ニーズが非常に多様化しているから、多彩なサービスメニューを提示しなければいけないというふうに言われてしまうと、あれ、という気になってくるものですね。
 それともうひとつは、現在の最も大きな問題としてクローズアップされるのが都市の問題。これ、東京なんかの場合ですと石原知事がNOXの関係で非常に厳しい、環境に対応するための規制を打ち出してきている。
 都市内の問題にどう対応するかという問題が、今度は今まで言ったところとは別に出てくる。これは非常に難しい問題である。難しい問題ではあるけれども、それに対応しなければいけないわけです。つまり、ある程度環境条件を取り込んだきちっとしたシステムを作りなさいという、それを多彩な要求に対応させなさいという両方がある。こういうものをいっているわけです。果たしてそんなものが出来るのかということが最後の議論として、この委員会の中で出てきた。そのためには、国民がある程度がまんすべきだ。例えば荷物はすぐ引き受けなければいけない。明日届かなきゃいけない。包装はこうでなきゃいけない。そういう国民のニーズまたは小売店が卸売り業に対して求めるニーズ、または工場なりなんなりが調達先、サプライヤーに対して求めるニーズ、そういうもの全部考え方を変えていく方向を取らなければいけないということを打ち出してきている。
 果たしてそれができるかどうか。最後はやはり国民の意識でありますよという答申を出してしまいましたら、もうそれで話が終わってしまいますので、私はそういうのはあまり賛成しない。それはまた別の問題であろう。むしろ多彩なニーズに対応でき、しかもこういう条件を取り込んだ物流システムを作るだけの企業のレベル。そして役所は絶対言わないと思いますが、それに対応できなかった企業の市場からの退出、これはやむをえないのではないか。そういう議論が出るわけです。出るのですけれど、役所の報告書には出ませんから、委員会の委員の意見として出るだけで終わってしまうのです。多分、規制緩和、競争市場原理を入れているところを見ると、そういう難しい物流に対応できなかったところというのは脱落していきますよという意味が入っているんだろうと思います。そういう問題に対して、どういうふうにこれから対応していけばいいか。どういうような方法をとったらいいのか。行政はどうあるべきか。どういうインフラが必要かということについては、これから後のシンポジウムの中で話が出てくるというふうに考えておりますので、私の話はそれの前触れだと考えていただきまして、この後どういうふうな議論、会場からも質問をいただく形を取りたいと思いますので、ぜひその時に問題を提起していただければというふうに思っております。話のほうはこれでおしまいにします。どうもありがとうございました。








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