(1)地球温暖化問題の現状
■地球温暖化のメカニズムとその影響
わたしたちはエネルギーを得るために、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料を燃やして二酸化炭素(CO2)等を発生させて、大気中に放出してきました。
大気中の二酸化炭素等の気体は、太陽からの光の大部分を透過させる一方で、地表面から放出される赤外線を吸収して大気を暖める働きをしています。このように、あたかも温室のガラスのように作用して地球を暖かくし、生命の生存に適した気温をもたらしてきた気体を温室効果ガスと呼んでいます。
ところが、産業の発展等で人間生活が活発化するにつれて、大気中に排出される温室効果ガスが急激に増加して、温室効果が強くなってきており、気温もそれだけ高くなると心配されています。これが地球温暖化です。
化石燃料の世界的規模の消費拡大に伴い、地球温暖化を防止するための施策が実施されなければ、温室効果ガスの大気中濃度が増加し、地球温暖化が進みます。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書では、21世紀末には、1990年に比べて地球全体の気温が約1.4〜5.8℃、海面が約9〜88cm上昇し、豪雨や渇水の回数の増加、熱帯・亜熱帯地域での食糧生産の低下、マラリアの患者数の増加、地球の全森林の3分の1での現存の植物種の生育が困難になる等の被害が生じる、と指摘しています。
●21世紀の気候変動の見通し
IPCC資料をもとに国土交通省作成
●地球温暖化による気温上昇量の予測(2100年頃)
資料:気象庁「地球温暖化予想情報 第1巻」
コラム
このまま地球温暖化が進んだ場合、今世紀末には平均気温が1.4〜5.8度上昇するといわれています。我が国各地で記録的な暑さとなった1994年の夏でさえも、この年の関東地方の平均気温(6〜8月)は平年に比べ1.9度高いにすぎません。また、海面が大きく後退した2万年前の氷河期でも、平均気温は今より5度程度低いだけです。地球温暖化による平均気温の上昇の人間生活への影響は決して小さなものではないのです。
■各温室効果ガスの地球温暖化への寄与度
地球温暖化の原因となっている温室効果ガスには、二酸化炭素以外にも、メタン、一酸化二窒素、フロン等が挙げられます。しかし、IPCCによれば、メタン、一酸化ニ窒素、フロン等の一定量当たりの温室効果は二酸化炭素に比べはるかに高いものの、二酸化炭素の排出量が膨大であるため、結果として、産業革命以降全体において排出された二酸化炭素の地球温暖化への寄与度は、温室効果ガス全体の約64%を占めるとされています。
また、我が国においては、二酸化炭素の地球温暖化への寄与度は、温室効果ガス全体の約94%(1993年)と非常に高くなっています。
●温室効果ガスと地球温暖化係数(積算期間100年)(*1)
  |
二酸化炭素 |
メタン |
一酸化ニ窒素 |
HFC(*2) |
PFC(*3) |
SF6 |
地球温暖化係数
(積算期間100年) |
1 |
21 |
310 |
1,300 |
7,400 |
23,900 |
*1:地球温暖化係数…………温室効果ガスが100年間に及ぼす温暖化の効果(二酸化炭素を1とした場合)
*2:HFC……………………ここでは、代表的なものとして冷媒等で使用されるHFC-134aの値
*3:PFC……………………ここでは、代表的なものとして整流器等で使用されるPFC-51-41の値
資料:IPCC(1995)
●産業革命以降人為的に排出された全世界の温室効果ガスの地球温暖化への寄与度(1992年)
資料:平成12年環境白書
●我が国が排出する温室効果ガスの地球温暖化への寄与度(1993単年度)
資料:環境省
■大気中の二酸化炭素濃度の推移
大気中の二酸化炭素濃度は、植物の光合成等により、1年を周期として変動しており、この変動は植生の違い等により場所毎に異なっています。
二酸化炭素の濃度は、18世紀後半の産業革命以前は280ppm(ppm:100万分の1[体積比])程度で安定していましたが、その後は急激な工業生産活動等の発展に伴って増加し、1990年代には350ppmを超え、現在も1年に1.5ppmの割合で増加し続けています。
現在、我が国の1人当たり二酸化炭素排出量は約2.5トン/年(炭素換算)ですが、IPCCの第2次報告書の分析等によれば、二酸化炭素濃度を産業革命以前の濃度の約2倍(550ppm)に安定化するためには、21世紀末に世界全体の平均1人当たりの二酸化炭素排出量を1トン/年以下に抑えなければならないとされています。
●地球温暖化による海面水位上昇量の予測(2100年頃)
資料:気象庁「地球温暖化予測情報 第1巻」
●世界の代表的な観測点における二酸化炭素濃度の変化
資料:気象庁
■国別の二酸化炭素排出量割合
国別の二酸化炭素排出量割合は、アメリカの23.8%、中国の13.6%、ロシアの6.3%に次いで、日本は5.0%となっています。
●世界の二酸化炭素排出量(国別)1998年
資料:米国オークリッジ国立研究所二酸化炭素情報解析センター