日本財団 図書館


1)水平分布(表層)の特徴
(1)存在量から見た構成
 表層泥のダイオキシン類の異性体プロファイル(図−5.6)と主要な起源物質の代表的な異性体プロファイル(表−5.2)とを比較することによって、推定した結果を表−5.3に示す。ダイオキシン(PCDDs+PCDFs)の異性体プロファイルからグルーピングした結果、St.2、St.6、St.7、St.8については、農薬(PCP)が主要な起源として推定され、St.1、St.3、St.4、St.5、St.9、St.10については農薬(PCP)+農薬(CNP)が主要な起源として推定された。
・St.1、St.3、St.4、St.5、St.9、St.10:農薬(PCP)+農薬(CNP)
・St.2、St.6、St.7、St.8:農薬(PCP)
 また、コプラナPCBsについては、毒性等量で全体のダイオキシン類のうち5%から10%の構成比にあった(図−4.7参照)。このコプラナPCBsの異性体プロファイルからグルーピングした結果、PCB製品のKC300とKC400が主要なものと推定された。

(2)毒性等量から見た構成
 上記の実測濃度による組成比では、焼却由来に起因するダイオキシン類の寄与を判定することが困難であった。そこで、毒性等量から構成を求め、毒性等量の構成比として比較を行った結果を、図−5.7に示した。柴山らによると、大気、排ガス、灰(飛灰・焼却灰)について指標異性体実測濃度とWHO-TEQの関係を検討した結果、2,3,4,7,8−PeCDFを指標とした時に、1.74、2.03、2.67倍するとWHO−TEQが得られる相関が述べられている。そこでここでは、人気、排ガス、灰の中に安定して大きな割合を占める2,3,4,7,8−PeCDFが焼却由来の指標となり得ると仮定した。その結果、全体として焼却由来の因子も含まれていたが、St.1,3,4の地点では比率が低かった。
出典1,:紫山基,安田賀子,中井勉,林篤宏,井上毅,高菅卓三:ダイオキシン類分析における指標異性体について(その2),第10回日本環境化学会環境化学討論会講演要旨集,pp,104−105(2001)
(3)負荷量
 St.1からSt.5の調査地点(柱状泥)では、表層の堆積速度が求められている。ダイオキシン類の濃度(毒性等量)と堆積速度を乗じることにより、年間1cm2当たりのダイオキシン類の堆積量を求めた。その結果を図−5.8に示す。堆積負荷量は、St.1及びSt.3で高い傾向にあった。
表−5.3 発生源の推定結果(表層泥実測値より)
(拡大画面: 90 KB)
z1059_01s.jpg

(拡大画面: 99 KB)
z1059_02.jpg
図−5.7 農薬(CNP)、農薬(PCP)と焼却系の比較(表層泥)
(拡大画面: 38 KB)
z1060_01.jpg
図−5.8 年間1cm2当たりのダイオキシン類の堆積量(St.1〜St.5)
2)鉛直分布の特徴
(1)1970年代から1980年代
[1]存在量から見た構成
 1970年代から1980年代の柱状泥のダイオキシン類の異性体プロファイル(図−5.8)と主要な起源物質の代表的な異性体プロファイル(表−5.2)とを比較することによって、推定した結果を表−5.4に示す。
 ダイオキシン(PCDDs+PCDFs)の異性体プロファイルからグルーピングした結果、St.1(3層)、St.2(2層)、St.3(3層)については農薬(PCP)が主要な起源として推定され、St.4(2層)、St.5(2層)については農薬(PCP)+農薬(CNP)が主要な起源として推定された。
・St.1(3層)、St.2(2層)、St.3(3層):農薬(PCP)
・St.4(2層)、St.5(2層):農薬(PCP)+農薬(CNP)
 また、コプラナPCBについては、毒性等量で全体のダイオキシン類のうち5%から10%の構成比にあった(図−4.7参照)。このコプラナPCBsの異性体プロファイルからグルーピングした結果、PCB製品のKC300とKC400が主要なものと推定された。
[2]毒性等量から見た構成
 上記の実測濃度による組成比では、焼却由来に起因するダイオキシン類の寄与を判定することが困難であった。そこで、毒性等量から構成を求め、毒性等量の構成比として比較を行った結果を、図−5.10に示した。またここでは、水平分布と同様に、大気、排ガス、灰の中に安定して大きな割合を占める2,3,4,7,8−PeCDFを焼却由来の指標となり得ると仮定した。その結果、全体として焼却由来の因子も含まれていたが、St.1,2の地点では比率が高かった。
(2)1930年代での播磨灘と東京湾の比較
 播磨灘と東京湾における柱状泥のダイオキシン類の値と求められた年代を図−5.11に示す。
 それによると、中間層のPCDDs+PCDFs、Co-PCBs、ダイオキシン類の濃度は、東京湾の方が高い傾向を示したが、1930年代頃には播磨灘と東京湾のダイオキシン類の値は同等の濃度に収束していた。
表−5.4 発生源の推定結果(1970年〜1980年代柱状泥実測値より)
(拡大画面: 85 KB)
z1062_01s.jpg

(拡大画面: 82 KB)
z1062_02.jpg
図−5.9 農薬(CNP)、農薬(PCP)と焼却系の比較 (1970年代−1980年代)
(拡大画面: 100 KB)
z1063_01.jpg
図−5.10 播磨灘と東京湾の柱状における年代比較








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION