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表0.3 砂浜環境調査マニュアル(改訂案)の運用上の問題点
指摘された問題点 対応策
改訂版のすべての項目を行うには、ほぼ1日(日中の時間)かかる。 生物や砂浜の回りの状況を1枚で整理する「基本編」を作成した。
また、調査票の基本的な組み合わせ方法を解説し、添付することとした。
昆虫類の調査・観察については、まだ難しい方法(トラップなど)が残る。 本格的な調査方法の例を示し、このマニュアルでは見つけ取りと補虫網を使った捕獲で観察をすることを基本とする旨を記す。
観察する生物の記載について、生きているもののみが対象なのか、死骸等も対象なのかが分かりづらい。漂着物との区別が必要。 個別の調査票では、生きているもののみを対象とするが、「基本編」では、全て記入し死骸の場合は“×”を記すこととした。
砂浜の概況をスケッチするときにどちらの方向を向いてスケッチしたらいいか迷うので、スケッチのイメージ図と書き方が必要。 スケッチのイメージ図を掲載した。
生物の同定に参考となる砂浜でよく見かける生物のイラストまたは写真が必要。 現段階では、著作権の問題などにより、記載することができないため、巻末に参考となる図鑑や参考となるホームページのURLを紹介した。
それぞれの調査・観察をやるときに必要な道具一覧が必要。 “調査に必要な道具一覧”を作成した。
まとめと課題
 本研究では、砂浜環境の概況と調査・研究の現状を整理して、実際に砂浜で調査を実施することで観察する視点を養うことが出来る“砂浜海岸環境調査マニュアル(案)”を作成した。砂浜に今まで気が付かなかった様々な生物が生息する環境の存在がわかり、同時に人間活動がそれら生物にどのような影響を与えているかを知り、広く砂浜環境の保全意識を啓蒙・啓発するきっかけとなることが期待できる。
 また、本研究の目標である「海域の環境保全に重要な役割を果たす砂浜環境の保全、人工海浜造成など良好な環境の創出の向上に資すること」を満たすためには、このマニュアルによって砂浜海岸に関する基本的な情報を数多く収集し、これを元にその地域の砂浜海岸に求められる環境を考えていくことが必要となる。このため、市民・各種団体が調査・観察したデータを集中管理する方法についても検討していく必要がある。
 一般の市民・団体が行った調査・観察のデータを集め、利用している例としては、「環境省の身近な生物調査」、「社団法人海と渚環境美化推進機構による海岸清掃と海と干潟の定点調査」などがある。これらの調査結果の集積は、紙ベースであり、電子媒体によるオンライン化には至っていない。データ等の公表は、各機関のホームページ上で一部公開されている。
 砂浜海岸の調査については、環境省がウミガメを対象とした調査を実施しており、産卵上陸する海岸の情報が集められている。また、国土交通省でも砂浜海岸を対象とした生物調査を検討しており、砂浜海岸へ目が向けられつつある。
 現段階では本マニュアル(案)で得られたデータを一局的に管理・運営することは具体化していないが、以下のように段階的に成果を活用して行くことが考えられる。
 ホームページ上に「砂浜環境に関する調査手法と簡易マニュアル」というサイトを設ける。
 このサイトでは、例えば砂浜海岸を有する地方自治体(市町村)に対し、砂浜海岸の生態学的な重要性、これからのアメニティーの場、癒しの空間としての重要性を呼びかけ、市民活動をとおし、砂浜環境情報の収集の必要性を紹介する。
 また、調査票の配布を行うことにより(調査票は役所・役場などでの配布あるいはWEB上からのダウンロードなどによる)、一般市民や地域団体などに協力してもらいながら砂浜海岸の基本的な環境を収集する。市町村あるいは県レベルでの自然環境調査は20年ほど前から様々な形で実施されてきているが、地域市民の基本的な情報の積み重ねはこのような調査結果をも上回る情報量となりうると考えられる。
 
 このようにして集めた情報を回収し、以下のような場面で活用していく。
 a.開発計画などが計画された場合に、砂浜の環境を評価する基礎的な情報とする。
 b.市町村が実施する各種エコアップ事業の基礎情報として利用できる。
 c.小中学校を中心とした総合学習の場などで、地域の自然や環境の保全や復元を考える際の基礎的な情報として利用できる。もちろん、調査票を用いて情報を収集すること自体も環境教育の教材として活用できる。
 一方、このマニュアルを市町村等が利用し、様々な場面で活用された場合、あるいは情報の収集が図られた場合には、その結果をフィードバックしてもらうことにより、マニュアル自体の改訂を行うとともに、全国レベルでのデータの蓄積化にむけて、本格的な情報の管理運営を検討することとなる。
 この場合、始めは図0.1に示すようにインターネットを利用したデータ入力フォームを示し、砂浜の生物分布について簡易な情報を収集することからはじめ、順次、システム化を図ることを検討していくことになろう。
図0.1 砂浜生物に関する基礎情報の入力フォームのイメージ
(拡大画面: 80 KB)
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