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<寄稿>
タイの海事産業の現状と今後
旗手 光清*
 
*独立行政法人海上技術安全研究所システム技術部システム研究室長(前在タイ運輸通信省派遣JICA専門家(造船業近代化))
1.まえがき
 私は1998年12月から2001年1月まで、JICA長期専門家としてタイ王国の運輸通信省海事振興委員会(OMPC)に派遣され、海事産業振興のマスタープラン作成等の支援を行いました。この間、海事関係者と情報交換し、タイが着実に自国経済規模に対応した海運・造船等の海事産業を振興しようとする熱意を強く感じ、今後も日本からの支援が期待されています。
2.タイ王国について
 国土面積は51.3万km2(日本の1.35倍)、人口は2000年に62百万人、増加率は、年間ほぼ1.2から1.4%で、国民の識字率が90%以上で、政府は、普通教育はもちろん高等職業教育にも非常に熱心です。
 1人当たりのGDPは、次のグラフのとおり、隣国マレーシアの56%で、相対的に低く、輸出加工型の産業を振興して、所得向上を目指さなければなりません。
1人当たり国民所得('99年名目、US$)
―アジア経済研究所―
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 97年の通貨危機後、タイ政府は、産業の国際競争力を高めるため、産業構造改革計画(1998-2002年)を打ち出し、生産性、製品開発能力の向上等を図っています。特に、自動車産業の育成に力を入れています。
 このため、日本政府は、タイ自動車産業の具体的な育成政策の立案、研究開発、公害技術対策、認可・認証などの政策に携わる自動車産業研究所の設立及び育成を支援しています。
 国内の自動車マーケットだけでなく、海外への輸出の増大を目指しており、タイの経済発展のキーとなる産業です。
 アジア経済危機後も、自動車の登録台数は右のグラフのとおり着実に伸びています。2000年の新車(4輪のみ)販売台数は、25万台(前年比27%)で、その内の90%が日系メーカーです。
自動車登録台数(4輪のみ)
―運輸通信省陸運局―
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3.港湾・海運の現状
1)港湾
 アジア経済危機後、輸出・輸入は好調で、経済回復に貢献しています。主要貿易港レムチャバン港(タイ東部臨海)のコンテナ取扱い量も次のとおり、順調に伸びています。
 タイ政府は、今後の貿易貨物の増大に対して、特に、コンテナ取り扱いを1)レムチャバン港の第2期工事分(2000年完成)の民間へのリースで年間600万TEUへの拡大(2010年)2)南部のソンクラン港の年間約30万TEU拡大(2010年)を計画しています。
レムチャバン港のコンテナ取扱い
―港湾公社―
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2)海運
a)外航海運
 タイ国籍の船舶は、自国の海上貿易貨物の10%しか、現在運送しておらず、外航船フリートの増強が急がれています。タイ政府は、自国船積み込み率を2006年までに25%に引き上げる目標を掲げています。
 このため、官民共同出資の海運会社の創設及び民間船会社が商船を購入する際の助成制度を検討しています。
b)内航海運
 現在、内航海運は、主に石油製品を運搬しており、約160隻の船舶が従事していますが、多くは、日本からの中古船で、船齢が高く、政府の助成等で近代化しなければなりません。又、タイ政府はモーダルシフトによりトラック輸送からフェリー等の内航輸送に貨物輸送を転換する政策を実現することを目標に掲げています。JICAは、この政策を支援するために調査を実施し、内航海運の振興及び地球環境保全の必要性を関係機関にセミナーで説明しました。








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