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<トピックス>
1.インドに対する円借款の供与について
 我が国政府は、インド政府に対し、継続案件である「シマドリ石炭火力発電所建設計画(II)」および「デリー高速輸送システム建設計画(II)」について、総額189億2,600万円までの円借款を供与することとし、このための書簡の交換が、3月29日行われた。
 それぞれ1996年度に第I期分として供与した円借款資金により既に工事が実施されている継続案件である。第I期分の資金のみでは近日中に資金不足により工事が中断し、これまで行ってきた工事等(我が国からの借款供与)が無駄になり、これら計画に関与している企業等にも大きな損害を与えるおそれがあることから、本計画を完成させるため、今般円借款を継続実施することとしたものである。
 政府は、1998年5月のインドによる地下核実験以来、ODA(政府開発援助)大綱に基づく対印措置の一部として新規円借款を停止し、新たな案件に対しては円借款を供与しないこととしているが、既に実施中の継続案件については当該停止措置の対象としていない。今般の円借款は、継続案件に対する追加的供与を行うものであり、これまで我が国がとってきた前述の措置を緩和・変更するものではない。
 なお、今般の円借款の供与対象案件のうち運輸関連案件の概要は次のとおりである。
「デリー高速輸送システム建設計画(II)」
(供与限度額:67億3,200万円)
事業の背景と必要性
 インドでは近年、産業構造の高度化に伴い、大都市へ人口が集中したほか、自家用車の普及が急速に進んだため、大都市の交通混雑が激化し、公共交通機関の整備の遅れが問題となっている。また、自家用車の増加に伴い、排気ガス等による交通公害の発生などの環境問題が深刻になっているが、今後も自動車の増加は避けられず、環境保全対策の検討が急務となっている。
 本事業が実施されるデリー市において鉄道は従来から長距離輸送に重点が置かれてきたことから、郊外と市の中心部を結ぶ近距離鉄道や市内の鉄道網が十分整備されていない。そのため、交通手段はバスや自家用車に頼らざるを得ない状況となっており、増加する自家用車のため道路は慢性的な渋滞になっている。かかる状況下、交通混雑を緩和すると共に環境への負担が少なく、時間に正確で効率的な大量高速輸送システム構築の必要性が増加している。
事業の目的と概要
 本事業は同国の首都デリー市に、地下鉄及び高架・地上鉄道による総延長約198km大量高速輸送システムのうち52km分を建設することにより、交通混雑の緩和と交通公害減少を通じた都市環境の改善を図ることを目的とするものである。本事業実施により、交通混雑の緩和と排気ガスなど都市交通公害減少に寄与し、デリー市の都市交通を向上させる上で大きな役割を果たすことが期待される。なお、本行は1997年2月に本事業の第1期分として147億6,000万円を承諾済みであり、本件はその第2期分である。
 円借款の供与条件は次のとおりである。
(1)金利:年1.8%
(2)償還期間:30年(10年の据置期間を含む)
(3)調達条件:一般アンタイド
2.中国に対する2000年度円借款供与について
 〜第4次円借款「後2年」の最終年度:環境、内陸分野の重視〜
 我が国政府は、中華人民共和国政府に対し、同国の改革・開放政策に基づく近代化努力を支援するため、98年11月の日中首脳会談において合意された対中国第4次円借款「後2年」(1999-2000年度の2年間で総額約3,900億円、28案件)の最終年度分(2000年度分)として、今般、23案件について、総額1,971億9,700万円までの円借款を供与することとし、このための書簡の交換が3月30日行われた。
今次円借款の特徴
(1)規模
 第4次円借款「後2年」(1999年度〜2000年度)の最終年度に当たる2000年度円借款においては、総額1,971億9,700万円までの円借款を供与する(対前年度比約2.4%、約45億円増)。
 今次供与により第4次円借款(通常分;1996年度〜2000年度)の供与限度額の合計は9,698億3,400万円(うち「前3年」(1996年度〜1998年度)5,800億円、「後2年」3,898億3,400万円)となる。
(2)内容
 今回の円借款は、昨年度に引き続き環境重視の観点から、環境モデル都市三案件をはじめとする大気汚染対策、水質汚濁対策、植林事業等の環境案件(23件中20件 金額ベースで全体の約86%)、また、民間資金が入りにくく沿海部との経済格差が生じている内陸部における案件(23件中15件同約77%)に重点を置いた内容となっている。
 なお、今次円借款供与により、中国に対する円借款の総額は、2兆6,507億700万円(交換公文ベース)となる。
(参考)第4次円借款の実績
年度 1996 1997 1998 1999 2000
供与額(億円) 1705.11 2029.06 2065.83 1926.37 1971.97
対前年度比 20.6% 19.0% 1.8% ▲6.8% 2.4%
 
 今般の円借款の供与対象案件のうち運輸関連案件の概要は次のとおりである。
「重慶モノレール建設事業計画」
(供与限度額:271億800万円)
 深刻な交通渋滞・大気汚染に対処するため、重慶市内にモノレールを建設するもの。
「朔県−黄港鉄道建設事業計画」(IV)
(供与限度額:115億8,100万円)
 内陸部から沿海地域への石炭供給不足を緩和するため、山西省神池-河北省黄港間路線の輸送能力強化を図るもの。
「武漢都市鉄道建設事業計画」
(供与限度額:28億9,400万円)
 深刻な交通渋滞・大気汚染に対処するため、湖北省武漢市内に都市鉄道を建設するもの。
3.インドネシアに対する円借款の供与について
 〜インドネシアの経済社会開発および改革努力支援のため〜
 我が国政府は、インドネシア共和国政府に対し、同国の経済社会開発努力を支援するため、総額991億6,500万円までの円借款を供与することとし、このための書簡の交換が3月30日行われた。
 今回のインドネシアに対する円借款は、アジア経済危機後の同国の新たな開発課題に対応すべく、貧困削減、地域間格差是正、業務効率の改善・透明性の向上、雇用創出を図る経済対策等、優先度の高い分野として位置づけられるものを対象としている。
 今般の円借款の供与対象案件のうち運輸関連案件の概要は次のとおりである。
年次円借款
「海事訓練学校整備事業」
(供与限度額:76億6,900万円)
 既存の国立船員教育学校6校において、教育・訓練内容、教員の質、訓練機材を向上させることにより、STCW95(船員の訓練および資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)に対応したインドネシア船員教育の拡充を図るもの。
特別円借款
「ジャワ幹線鉄道電化・複々線化事業(I)」
(供与限度額:410億3,400万円)
 増大する首都ジャカルタの交通需要に対応するため、マンガライ駅からブカシ駅までを複々線化し、輸送力増強および運行の効率化を図り、あわせて通勤圏の拡大に対応するためブカシからチカランまで電化するもの。
 なお、今回の書簡の交換により、我が国のインドネシアに対する円借款の総額は、3兆6,033億7,400万円(交換公文ベース)となる。
円借款の供与条件は次のとおりである。
案件名 金利/年(%/年利) 償還期間/据置期間 調達条件
海事訓練学校整備事業 0.75% 30年(10年の据置期間を含む) 二国間タイド
ジャワ幹線鉄道電化・複々線化事業(I) 0.95% 40年(10年の据置期間を含む) 日本タイド(本体)
二国間タイド(コンサルタント)
4.ルーマニアに対する円借款の供与について
 我が国政府は、ルーマニア政府に対し、「ブカレスト・コンスタンツァ間鉄道近代化計画」のための256億3,500万円を限度とする円借款を供与することとし、このための書簡の交換が3月30日行われた。
 案件の概要は次のとおりである。
「ブカレスト・コンスタンツァ間鉄道近代化計画」
 老朽化が進むブカレスト・コンスタンツァ間の既存路線軌道および関連設備の高規格化を行い、安全性を確保するとともに、貨物を中心に輸送能力の拡大および輸送効率の改善・大量交通輸送の実現を図るもの。全区間225kmのうち、我が国が対象とする区間はブカレスト〜バネッサ間(7km)とフェテシュティ〜コンスタンツァ間(79km)であり、残りの区間(バネッサ〜フェテシュティ)についてはEU(欧州連合)による支援(グラント)が決定している。
本件円借款の意義
(1)ルーマニアは我が国と伝統的友好関係にあり、政治、外交および経済面での関係が進展している。また、我が国の国連安保理常任理事国入りを明確に支持しており、我が国からの経済援助、投資について大きな期待を有している。
(2)旧ユーゴと旧ソ連の間に位置し、中・東欧諸国の中ではポーランドに次ぐ第2位の国土と人口を持つルーマニアは、1999年12月EU加盟候補国となり、南東欧地域の安定勢力として重要性を増している。同国が民主化と経済改革に成功して安定的な発展を遂げることは南東欧地域、ひいては欧州の安定にも重要である。
(3)欧州第4回廊に位置づけられている本鉄道の高規格化は、EUとの協調案件であり、南東欧地域の安定化を目指しつつ関係国、機関によって創設された「南東欧安定協定」の枠組みでの支援を期待して、ルーマニア側が重視しているプロジェクトであり、また1997年に我が国が供与を決定し既に実施段階に入っている「コンスタンツァ南港整備計画」における同港の貨物取扱量の増大と合わせて輸送の効率化に資する。
円借款の供与条件は次のとおりである。
(1)金利:年2.2%
(コンサルタント部分については0.75%)
(2)償還期間:30年(10年の据置期間を含む)
(コンサルタント部分については40年(10年の据置期間を含む))
(3)調達条件:一般アンタイド
 
 今回の円借款の供与により、これまでに我が国がルーマニアに対して供与した円借款の総額は、476億2,400万円となる。
5.フィリピンに対する円借款の供与について
 我が国政府は、フィリピン共和国政府に対し、同国の経済社会開発努力を支援するため、第24次(平成12年度、9案件)分として、546億4,200万円までの円借款を供与することとし、このための書簡の交換が3月30日行われた。なお、本円借款は、昨年6月19〜20日にフィリピンのタガイタイで開催された対フィリピン支援国会合において意図表明されたものである。
 今次円借款においては、我が国の対フィリピン国別援助計画(昨年8月策定)に言及されている4つの重点分野のうちの3分野(持続的成長のための経済体質の強化および成長制約的要因の克服、格差の是正(貧困緩和と地域格差の是正)、環境保全および防災対策)における次の諸案件に対する支援を行うこととなっている。
 今般の円借款の供与対象案件のうち運輸関連案件の概要は次のとおりである。
「幹線空港開発計画(II)」
(供与限度額:117億4,300万円)
 新バコロド空港の建設およびタクロバン空港の拡張を行い、航空輸送の安全性を高め、今後予想される旅客・貨物需要の急激な増加に対応せんとするもの。
 円借款の供与条件は次のとおりである。
(1)金利:年2.2%(本体部分)、 年0.75%(コンサルタント)
(2)償還期間:本体部分 30年(10年の据置期間を含む) コンサルタント部分 40年 (10年の据置期間を含む)
(3)調達条件:本体部分 一般アンタイド コンサルタント部分 二国間タイド
 
 今回の書簡の交換により、1968年以降フィリピンに供与された円借款の総額は、交換公文ベースで2兆371億3,400万円(うち同国に対する円借款に関する債務繰延額は1,460億6,600万円)となる。








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