「原発に大型機が墜落したら」 飯久保 郁弥
昨年の暮れ、ある軍事評論家の講演を聞く機会に恵まれました。
講演の冒頭は軍事評論家故、アフガニスタン、パレスチナ、パキスタンとインドの国境カシミール、等の紛争における諸問題に関して、なぜ紛争が長く続き又解決に至らないかという事についての話で、今までテレビや新聞などのメディアで、外交、経済、軍事、などに詳しい評論家による報道の中で解説された内容と大きく変わりはなく、皆様もすでに知り得ている事なので、ここで申すまでもありません。また、当事者でない我々には理解出来ないことも多いので、どうしても身近な問題として興味を持つことができず、やはり身近な事に関心がうつります。
もし我が国の原発に航空機が突っ込んだらどうなるか、と言う内容に飛行機野郎として強い関心を持ちました。
結論から申しあげると、特別な場合を除いて急降下して、垂直に激突しない限り大事故の可能性は低いとの事。
日本の原発は沸騰水型と加圧水型に大別でき、どちらも耐震設計との関係で原子炉建屋は特に丈夫に作られている。
沸騰水型の建屋は、周囲、屋根とも厚さ1メートルの鉄筋コンクリートで作られている。その中に巨大な厚さ5センチの鉄鋼製原子炉格納器が設置され、その周囲はすべて厚さ2メートルの鉄筋で覆われている。
加圧水型の建屋は厚さ5センチの鉄鋼製原子炉格納器に包まれ、すぐ外側の側面だけ厚さ1メートルの鉄筋コンクリートで覆われ、上側はむきだしのままである(配布ミニ資料による)。
この建物に、米サンデイア国立研究所で実施されたF4ファントムジェット戦闘機を時速540キロの早さで、衝突実験して得た資料を参考に(厚さ80センチ以上の鉄筋コンクリート構造物なら阻止できることを確認)して、ジェット戦闘機、及びB767ジャンボ、ジェット機(どちらも全備重量)が激突したという想定で検討してみたところによると、特別な条件を除外すれば、沸騰水型の場合には致命的な損傷はなく問題は生じないとの事。
特別な場合とは、屋根に垂直に近い角度で突入するケースであり、B767では屋根が破壊され(戦闘機なら変形、損傷程度)、最上階に設置されている使用済み燃料貯蔵プールも爆発で破壊される。このため、数十万本の燃料棒は崩壊熱のために溶解し、環境に大量の放射能が放出されて大惨事となる。
一方加圧水型の場合は、原子炉格納容器の上面からジェット機が激突しても、部分的な変形程度で済むが、B767が側面から水平に、あるいは上面から垂直に近い形で突っ込むと、原子炉格納容器は破壊される。
百万キロワット級であれば原子炉格納容器内面ぎりぎりに4基設置されている巨大な蒸気発生器の電熱管(1万3千本)の大部分が破壊され想定外の炉心溶融事故に陥り、周辺に大量の放射能が放出されることになると、専門家は予想している。
つまり、どちらも原子炉建家の屋根ないし、上面が弱点になっているが、大型航空機が垂直に急降下することは航空機の構造上、無理で考えにくい、原子炉に激突する前に空中分解してしまうであろう。
戦闘機なら垂直急降下はお手のものではあるが、これは訓練された乗員(兵士)でなければ出来なく、この場合は(有事)戦争状態でもなければありえない。
又、戦闘機がテロに乗っとられるということもよほどのことがなければあり得ないことで、これら、今まで述べたことから言えるのは、原発はテロ行為のような故意の破壊行為がないことを前提に建設されているのであり、弱い部分があることは仕方がないが、これからはこれらの事もあり得るとの危機管理意識を国家、国民は再認識しておく必要があるのではないか、又、テロは絶対に許してはならないという事を強く感じました。