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3-2 2000年3月初旬から9月中旬に現れた暖水塊
 2000年3月2日から3月23日までに作成された海況速報をFig.9に,ほぼそれぞれの時期に対応する海面高度分布をFig.10に示す。3月初めに,伊豆半島の沖合において狭い範囲で黒潮の流路が北偏し,大きなくびれを生じた(Fig.9a,b)が,3月16日には遠州灘から熊野灘にかけて東西に延びる暖水帯を残した形で黒潮の流路は南東沖に去り,3月23日には黒潮流路のくびれは解消した。そして,東西に延びた暖水の帯から切り離されたと考えられる孤立した暖水塊が遠州灘沖に発生した。3月4日の海面高度分布(Fig.10a)を見ると,黒潮流路の北偏に対応して3-1章で述べた北緯33度に沿って東西に延びている見かけ上の低高度の帯が,伊豆半島沖(東経139度付近)で比較的高高度の部分で東西に分断された形になっている。海面高度では岸側から沖に延びているように見えるが,これは背景のジオイド面の歪みによる見かけ上のもので,3月2日の海況速報図のように暖水が沖から岸に向かって延びていると解釈すべきである。3月9日には黒潮流路のくびれ部分の幅が狭くなり,北端の位置も南に若干下がっている(Fig.9b)。3月10日の海面高度分布(Fig.10b)では,この黒潮流路のくびれの弱まりに対応して,高高度部分が減少し,くびれの先端部が切離した形になっている。この時のくびれの先端部が切離暖水塊のような構造を持っていたかどうかは,実際の観測資料がないのでわからない。しかし,この海域のジオイド面が正確に求まっていれば,そのような構造を衛星海面高度分布から推定できる可能性がある。
 3月16日には東西に延びる暖水帯を残した形で黒潮の流路は南東沖に去ったが,これに対応してこの日の海面高度分布(Fig.10c)では,北緯33度以南は低高度部になっており,暖水帯に対応して北緯34度沿いに東西に長くつながった高高度部が現れている。3月23日には遠州灘沖に孤立暖水塊が生じたが(Fig.9d),海面高度分布(Fig.10d)の高高度部も遠州灘沖に局限された形になっている。
 この遠州灘沖の暖水塊は,9月中頃まで存続し,その後紀伊半島のすぐ東方で黒潮に吸い込まれる形で消滅した模様である。暖水塊の消滅直前の8月30日に, Fig.11aに示すような観測線に沿ってXBTを用いた暖水塊の断面観測を行った。Stn.1〜3に見られる右上がりの水温勾配は,黒潮の強流帯に対応し,Stn.7〜10に見られる等水温のくぼみが暖水塊に相当している。その結果の水温断面をFig.11bに示すが,この断面での200m深の水温は12℃程度であり,これが暖水塊の中心付近の水温を代表するものであるとすると,暖水塊の勢力はかなり弱まっていたと推定される。Fig.12に8月28日の海面高度分布を示すが,伊豆半島付近から延びた高水位部の端が,北緯34度線に沿って熊野灘まで延びているのが,この暖水塊に対応しているのであろう。
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Fig.9 Oceanographic condition in Sagami bay and around lzu islands when a warm eddy was observed in March 2000. in the Enshu-nada sea along the Pacific coast of central Japan (from prompt report of MIRC)
a: on March 2,2000, b: on March 9,2000,
c: on March 16,2000, d: on March 23,2000.








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