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第3章 まとめ及び今後の課題
 
3.1 まとめ
 本研究は、水路測量の一環として必要な潮高補正処理を、測量船上においてリアルタイムに実施できる可能性を明らかにするため、K-GPSを用いて任意の水深測量地点における深度補正値の直接計測を実施した。併せて、水路測量高精度化をもたらすマルチビームデータの処理方法についても検討を実施した。
 
(1)基本水準標(標識)の準拠楕円体上の高さ測量
 
 昨年度の基本水準標(標識)の準拠楕円体上の高さ測量結果を補完するため、未実施であった瀬戸内海,島嶼部の基本水準標8点について準拠楕円体高を測定し、基本水準面との関係を明らかにした。
 測定した基本水準標は海上保安庁発行の書誌741号に記載されているものから基本水準面が示されており且つZ0区分に従い選定し、GPSによるスタティック測量を実施した。
 
(2)基本水準面高低モデルの開発研究
 
 昨年度に引き続き、基本水準面高低モデルの開発のための資料収集を継続した。このデータをもとに基本水準面高低モデルの開発に関する基本水準面の楕円体高に関する資料収集及びデータベース化と基本水準面高低モデルの構築を実施した。
 昨年度のデータ及び今年度取得したデータから楕円体高とジオイド96の差が30cm〜90cmの間にあるデータを抽出してモデルを作成した。
 
(3)測量船高さ精度の検証のためのデータ収集及び解析
 
 測量船の高さを測量すると同時に測量海域の実水深を決定するためには、測量船の高さの測定が利用可能な精度を常に発揮できることが必要である。そのため、
 海底設置型験潮器による験潮データ、測量海域近傍の験潮所データ、KGPSによる測量船の高さ測量結果、マルチビーム測深機による水深測量結果を収集、解析し、測量船の高さ精度の検証を実施した。
(a)測量海域近傍の験潮所データ取得
広島湾柱島南方にある沈船(戦艦陸奥)に海底設置型験潮器(WLR7型水位計)を設置し32日間の連続観測を実施した。観測結果は規定に従い調和解析を実施し平均水面高及び精密基本水準面高を算出した。
(b)KGPSによる測量船の高さ測量
第六管区海上保安本部水路部の測量船「くるしま」を用い柱島南方海域において測量を実施した。当該海域のクロスポイントにおけるK-GPSから求めた精密基本水準面高と今年度作成した基本水準面高低モデルとは平均で19cmの差があった。
 
(4) K-GPSデータ及びマルチビーム測深データの処理・編集技術の開発研究
 
 K-GPSデータ及びマルチビーム測深データの処理・編集技術の開発研究において本年度は、デジタル測深データの収集、整理、不良データ除去処理の検討、誤差判別方式の検討、測深データ処理・編集ソフトウェアの試作の4項目について実施した。
(ア)デジタル測深データの収集、整理、
 柱島南方においてマルチビームデータを取得した。
(イ)不良データ除去処理の検討
 不良データとなる原因には、動揺、Heave、などのほかに、センサーの形状に起因する音響ドップラー効果、などが考えられる。これらの不良データの状況を把握するために、マルチビームデータのクロスポイントにおける解析を実施した。
(ウ)誤差判別方式の検討
 測深データから測線毎のピングファイルを作成し、ピングファイル編集による不良データの除去処理方法を検討した。
 ロバスト推定手法は、不良データをある程度含むデータからも比較的安定したモデルの係数パラメータを推定することができる。潮高補正と音速補正を施したピングデータに対して、誤差判別を行い、不良データの自動除去処理を実施するロバスト推定手法について検討した。
(工)測深データ処理・編集ソフトウェアの試作
 不良データを除去するための海底面のモデル化は、海底を一定面に近似するのではなく、複雑な形状を表現できる現実的なものにする必要がある。
 ロバスト推定手法を用いた不良データの自動除去処理の方法は、水深データから海底面を3次元空間における2次曲面方程式にモデル化し、推定したモデルからずれた水深データを定量的に分別して不良データとして除去するものである。
 そこで、ロバスト推定手法をもとにしたマルチビーム測深データの処理・編集ソフトウェアを試作した。








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