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終わりに
ハンセン病のない世界のために
世界のパートナーと共に
 1982年、WHOのハンセン病専門委員会はMDTをハンセン病の標準的治療として推奨しました。これはハンセン病制圧への大きな転換点となりました。世界の各地で、政府とNGOの協力により、MDT治療が次第に広がり確実な成果をあげはじめました。これを受けて1991年の第44回世界保健総会は、2000年末までに「公衆衛生上の問題として、ハンセン病を制圧する」1)ことを決議し、MDTの普及は世界のハンセン病対策の最優先課題となりました。具体的には全世界の国単位で患者が人口1万人につき1人以下とすることです。
 
<日本財団>は、1960年代から海外のハンセン病施設への支援を始め、1975年からはWHOの中心的なパートナーとして、世界のハンセン病対策を支えて来ました。1995年にはWHOを通じて全世界にMDTの無償供与を開始。世界のハンセン病制圧の急速な進展のきっかけを作りました。
 
<笹川記念保健協力財団>は、1974年世界のハンセン病制圧をめざして設立され(初代理事長は石館守三博士−日本で初めてプロミンを合成)、1975年以来、国際的なハンセン病NGOの連合体であるILEPのメンバーとしてアジア・アフリカのフィールドで政府やNGOの活動を支援しています。
グローバルアライアンスとハンセン病制圧特別大使
 1999年11月、世界のハンセン病対策を総括する会議(於コートジボアール)が開かれ、国際機関、各国政府、NGO、製薬会社などが合同でとりくむためのグローバルアライアンス(ハンセン病制圧世界同盟)が結成されました。2)
 2005年までに世界の各国で制圧の目標を達成する3)ために力を合わせて努力することに合意しました。日本財団はアライアンスの中心的なパートナーとして2000年から2005年までに2400万ドルの支援により、最重点諸国の活動強化を表明。MDT(治療薬)の無償供与はノバルティスファルマ(製薬会社)が引き継ぎました。
<日本財団のハンセン病対策支援総額(1975-2005年)推定174億円>
 
 2001年1月、WHO主催による第1回ハンセン病制圧グローバルアライアンス会議(於インド)は、長年にわたって世界のハンセン病制圧活動の推進に貢献してきた日本財団の笹川陽平理事長をハンセン病制圧特別大使に選出しました。2001年5月16日第54回世界保健総会ハンセン病特別セッションで、2000年末の時点で、世界の総人□に対して、1万人に1人以下のレベルを達成したとWHOは報告しました。同時に今後の課題として、2005年までに主として6つの国4)での制圧達成に努力を続けることが表明されました。グロー ブルントラントWHO事務局長は同セッションの中で、日本財団ならびに笹川記念保健協力財団をWHOの古くからの重要なパートナーと位置づけ、日本財団 笹川陽平理事長のハンセン病制圧特別大使任命について「心から就任のお祝いを送ります。笹川氏の献身的な働きと、その強い責任感は私たちにとっての大いなる励みを与えてくれるものです」と述べました。これを受けて笹川理事長は「2005年のハンセン病制圧宣言をめざして、特別大使として可能な限り現地で努力を傾注したい。私のライフワークとして患者、回復者の尊厳回復のために尽力したい」と述べました。
偏見と差別を排除し、自立と尊厳の回復ヘ
 ハンセン病は治る病気となり、古くから恐れられてきた病気のイメージは変わりつつあります。しかしながら、世界の各地でハンセン病に対する偏見とそれに基づく差別は根強く残っているのも現実です。患者、回復者、特に障害を残した人々と家族をとりまく環境には厳しいものがあります。世界のハンセン病患者数が減少している今日、今後の課題は、引き続き早期の診断と治療が保障される体制を世界的に維持することと同時に、障害をもつ回復者への医療とケアの確保、そして何よりも患者、回復者とその家族に対する偏見と差別の除去、自立と尊厳の回復、ハンセン病が個人の人生の障害とはならない、開かれた社会に向けての啓発活動をねばりづよく続けていくことです。このためにはハンセン病回復者が自ら声を挙げ、社会の人々に啓発のメッセージを届けることが重要です。回復者が中心となった国際的なネットワーク「アイデア(IDEA)」5)の小さいながら確実な進展と支援の輪の広がりに期待したいものです。
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1)人口一万人あたり患者一人以下にと定義されている。
2)アライアンスのメンバーはWHO、各国政府、日本財団、笹川記念保健協力財団、世界救らい団体連合(ILEP)、ノバルティス(製薬会社)、世界銀行、デンマーク政府国際開発機関など
3)対象となる国々には、人口、患者数などに一定の限定があります。
4)インド、フラジル、ミャンマー、マダガスカル、ネパール、モザンビーク
5)回復者が中心となった各国の組織をネットワークし、社会での共生、尊厳の回復、生活の自立と向上を目指す。
 
 
アイデア(IDEA:共生・尊厳・経済向上のための国際ネットワーク)は、
1994年、世界で初めてハンセン病患者、回復者を中心として設立された国際ネットワークです。
アイデアの会員は、すべての人々、特にハンセン病の患者・回復者が、人間として尊重され、希望をもって意義ある人生を送ることができるようお互いに協力しあっています。
そして尊厳の確立を目指してアイデアの人々の声(Voice of Humanity)を世界の人々に届けていく活動を広げています。
アイデアに関心のお持ちの方は、下記までご連絡ください。
 
  International Relations
  会長Dr.P.K.Gopal(India)
  Socio-Economic Advancement
  会長Mr.S.K.Jung(Korea)
  lnternational Advocacy
  会長Mr.Bernard K.Punikai'a(USA)
  事務担当/プログラムコーディネーター
  Ms.Anwei Skinsnes Law(lnterenational Coordinator,IDEA)
  IDEA Center for the Voices of Humanity
  32 Fall Street,Suite A P.O.Box 651 Seneca Falls,New York,13148 USA
  Tel:1-315-568-5838 Toll free:1-888-647-4939 Fax:1-315-568-5891
  Email:ideausa@inetone.net または alaw@idealeprosydignity.org
  ●日本連絡先
  ハ重樫絢子(アイデア個人会員)
  〒359-1142 埼玉県所沢市上新井863-2 電話/FAX 0429-25-8165
  山口カズコ(アイデア個人会員)
  〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル 笹川記念保健協力財団
        電話 03-6229-5377 FAX 03-6229-5388
 
 
関連サイト
Action programme for elimination of leprosy
《WHO関連HP》http://www.who.int/lep/
《ILEP 世界救らい団体連合HP》http://www.ilep.org.uk/pages/
《HANDA IDEA中国HP》http://www.handa-idea.org
《高松宮記念ハンセン病資料館HP》http://www.hansen-dis.or.jp/
 
参考資料
Leprosy: Learning from Success, WHO
Guide to Eliminate Leprosy as a Public Health Problem, WHO
Weekly Epidemiological Record, 4 January 2002, WHO
Fact Sheet No.101, WHO
The Final Push Strategy to Eliminate Leprosy as a Public Health Problem Question & Answers, WHO
Human Development Report 2001 , UNDP
A New Atlas of Leprosy, 笹川記念保健協力財団
Freeing Ourselves of Prejudice, IDEA
The Texture of Our Souls, IDEA
Notes from the History of Leprosy, Olaf K. Skinsnes, International Journal of Leprosy, volume 41 , number 2
ハンセン病医学:基礎と臨床,大谷藤郎監修,東海大学出版会
らい予防法廃止の歴史:愛は打ち克ち 城壁崩れ陥ちぬ,大谷藤郎,勁草書房
病癒えても:ハンセン病 強制隔離90年から人権回復へ,寺島萬理子写真集,皓星社ブックレット13
2001年:BBC制作ビデオ
「New Face of Leprosy-ハンセン病の新しい顔」(英/日)50分(笹川記念保健協力財団制作協力)








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