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VENEZUELA ベネズエラ
1997年ハンセン病制圧達成
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■診断についての専門家研修
 
住民と専門家の意識改革
ベネズエラでは1946年に患者の早期診断と治療、啓発活動、データ登録と報告システム、技術研修を中心としたハンセン病対策活動が開始されました。医師や医療補助員は積極的に検診活動を行ない、ハンセン病と診断された人を登録・治療しました。また、患者の家庭内で他に感染している家族がいないか調べるために、家庭内での接触の様子を調査しました。罹患率の高い地域では、住民の集団検診を行ない、治療の状態を徹底して把握しました。その結果、罹患率は低下しましたが、ダプソン(5ページ参照)への薬剤耐性と、長い治療期間のため、治療を受ける患者の数にはあまり変化はありませんでした。
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 1981年にWHOが提唱したMDT(多剤併用療法)を視野に入れた新しいハンセン病対策計画が立てられました。この計画では次の3項目が計画の柱となりました。
[1]できるだけ多くの患者を治療すること。MDTを使うことによって、ダプソン単剤療法よりもはるかに短期間で、多くの患者を治癒することができます。
[2]できるだけ早い段階で診断すること。早期に治療を始めることによって、伝染を食い止めることと、障害を予防することができます。また、罹患率が低下すれば、ハンセン病を一般診療所で他の病気と同様に治療することができます。
[3]啓発活動を推進すること。ハンセン病につきまとうスティグマ(社会的汚名)をなくし、ハンセン病も他の病気と同じように治る病気であることを知ってもらうことによって、患者が早期に自分から進んで診断を受けに来るようにします。
 1985年から段階的にMDTが全国的に導入されました。MDTで治療を受けている患者の割合は80%にも達しました。MDTと合併症へのケアの徹底によって、患者を始め一般の人々のハンセン病に対するイメージも変わってきました。しかし長年ハンセン病の治療に携わってきた医師の多くはMDTに懐疑的でした。これほど短い治療期間で治癒するとは信じられなかったためです。このため、治療が終わった患者を自宅に戻さず、患者登録簿からも名前を削除しないまま、5年から10年にわたって健康状態を調査管理しました。しかし、この長い治療後観察期間のおかげで、MDTを使えばハンセン病は数ヶ月から1年の治療で治癒するということが証明できました。
 1995年にはMDTが正式に導入されました。1981年には人口1万人あたり10人だった罹患率は、1997年には1人以下になり、ハンセン病制圧が達成されました。
 
ハンセン病対策計画のポイント
[1]多くの患者を治療
[2]早期診断
[3]啓発活動
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■村落への定期的な医療サービスと指導








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