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3. 用語の意義
 船舶安全法関係において使用される用語の意義は次のとおりである。
3.1 船舶安全法関係一般
 
1) 旅客船
(1) 旅客定員が12人を超える船舶をいう。
(2) 旅客船であるか否かの識別は、船舶検査証書の最大とう載人員の旅客の欄に記載された数によって行われるのであるから、実際に旅客をとう載しているか否かは問わず、又、臨時的に12人を超える旅客をとう載するため臨時変更証の交付を受けた場合であっても旅客船としての扱いを受ける。
 
2) 小型船舶
 総トン数20トン未満の船舶をいう。
 
3) 国際航海
 一国と他の国との間の航海をいう。この場合において、一国が国際関係について責任を有する地域又は国際連合が施政権者である地域は別個の国とみなされる。
 
4) 漁船
(1) 漁船とは、次のいずれかに該当する船舶をいう。
(イ) 専ら漁ろう(附属船舶を用いてする漁ろうを含む)に従事する船舶
(ロ) 漁ろうに従事する船舶であって漁獲物の保蔵又は製造の設備を有するもの
(ハ) 専ら漁ろう場から漁獲物又はその加工品を運搬する船舶
(ニ) 専ら漁業に関する試験、調査、指導若しくは練習に従事する船舶又は漁業の取締りに従事する船舶であって漁ろう設備を有するもの
(2) この定義は、海上における人命の安全のための国際条約の定義より広くなっているが(条約では「魚類、鯨類、あざらし、せいうちその他の海洋生物資源を採捕するために使用する船舶をいう。」と規定されている)、条約においては漁船を条約の適用除外とするため業態が本質的に運搬船に属さない漁ろう船に限定したものであるが、国内法においては、一般商船との間に技術上の差異を設ける観点から、又水産国である我が国の漁船の操業実態とこれに対する保護政策に着目し、漁ろう船と直接的に関係の深い船舶をも含めることとしたのである。なお、漁船について、条約による規定を適用するに当たっては、その適用を条約上の「漁船」に限定して適用されている。
(3) 漁ろうする間にのみ国際航海をするものについては、一般船舶に係る規定中国際航海に従事する船舶に係る規定は適用されない。
 
5) 小型漁船
 小型漁船とは、4)において述べた漁船のうち総トン数20トン未満のものをいう。
 
6) 危険物ばら積船
 危険物船舶運送及び貯蔵規則(昭和32年運輸省令第30号)第2条第1号の2のばら積み液体危険物を運送するための構造を有する船舶をいう。
 
7) 特殊船
(1) 原子力船(原子力船特殊規則(昭和42年運輸省令第84号)第2条第1項に規定する原子力船をいう。)、潜水船、水中翼船、エアクッション艇、海底資源堀削船、半潜水型又は甲板昇降型の船舶、潜水設備(内部に人員をとう載するものに限る。)を有する船舶、水陸両用船等をいう。
 
8) 小型遊漁兼用船
(1) 専ら遊漁(旅客がつり等により魚類その他の水産動植物を採捕することをいう。)
及び漁ろうに従事する総トン数20トン未満の船舶であって、遊漁と漁ろうを同時にしないものをいう。
(2) 技術基準の適用に当たっては、一般船舶に係る規定によるほか小型漁船安全規則(昭和49年農林省運輸省令第1号)の規定が準用される。この場合において、漁ろうに従事する間は小型漁船安全規則が準用され、遊漁に従事する間は一般船舶に係る規定が適用される。
 
9) 管海官庁
(1) 原子力船については国上交通大臣
(2) 本邦にある船舶(原子力船を除く。)並びに予備検査の対象物件及び準備検査の対象物件については、その所在地を管轄する地方運輸局長(海運監理部長を含む。以下同じ。)(その所在地を管轄する地方運輸局の海運支局若しくは海運監理部の海運支局(地方運輸局等海運支局組織規程(昭和26年運輸省令第50号)別表第二に定める地方運輸局若しくは海運監理部の海運支局に限る。))又は沖縄開発庁設置法(昭和47年法律第29号)第10条の規定により沖縄総合事務局に置かれる事務所で地方運輸局において所掌することとされている事務のうち運輸省組織令(昭和59年政令第175号)第121条第1項の海事に関する事務を分掌するものがある場合は、その海運支局の長又は事務所長。(以下同じ)
(3) 本邦外にある船舶(原子力船を除く。)及び予備検査の対象物件については関東運輸局長
 
10) 小型船舶検査機構
 小型船舶検査機構とは、小型船舶に係る船舶安全法第1章に定める検査(特別検査及び再検査を除く。)に関する事務(命令で定める小型船舶に係る事務を除く。)を行う法第2章の規定により設立された機関をいう。
注:命令で定める小型船舶とは、施行規則第14条で定める次の船舶をいう。
(1) 国際航海に従事する船舶
(2) 満載喫水線の標示をすることを要する船舶
(3) 危険物ばら積船(危険物船舶運送及び貯蔵規則第2条第1号へに規定する引火性液体類をばら積みして運送するための構造を有する船舶を除く。)
(4) 特殊船
(5) 推進機関を有する他の船舶に押される船舶であって、当該推進機関を有する船舶と堅固に結合して一体となる構造を有する推進機関及び帆装を有しないもの。
(6) (5)に掲げる船舶と堅固に結合して一体となる構造を有する船舶であって、推進機関を有するもの。
(7) 係留船
(8) 本邦外にある船舶
 なお、上記(1)〜(8)に掲げる小型船舶に関する事務は管海官庁が行う。
 
11) 指定検定機関・指定検査機関・指定測定機関
(1) 財団法人 日本舶用品検定協会
 日本舶用品検定協会は、法第6条の4の型式承認を受けた船舶又は船舶に係わる物件の検定を行う指定検定機関として運輸大臣から指定を受けた法人である。
 同協会は通称HKと呼ばれ、法体系に於けるHKの所掌は、型式承認を受けた船舶または船舶に係わる物件の検定業務を国と並行して行う。
 HKは、検定した船舶又は船舶に係わる物件について合格証明書を発行する権限を有する。
(2) 社団法人 日本海事検定協会
 日本海事検定協会は、運輸大臣から危険物船舶運送及び貯蔵規則第129条の危険物の船舶への積付検査及び同規則第129条の2のコンテナ収納検査を行う公益法人として認定されている指定検査機関であるとともに、穀類その他の特殊貨物船舶運送規則第17条および第25条の微粉精鉱をばら積みして運送する場合の水分の測定、積付け検査を行う指定測定機関並びに指定検査機関として指定を受けた法人である。同協会は通称NKKKと呼ばれている。
 法体系でのNKKKの所掌は、管海官庁と並行して危険物又は特殊貨物の船舶積付け検査及び危険物のコンテナ収納検査等を行う。
 NKKKは、検査事項に関して合格証の発行権限を有する。
 
12) 財団法人 日本海事協会
 日本海事協会は、法第8条で認められている我が国唯一の船級協会である。
 日本海事協会は通称NKと呼ばれ、法体係のなかでの所掌は、NK船級に登録された船舶(旅客船を除く。)についての船体(防火構造を含む。)、機関、帆装、排水設備、消防設備、操舵繋船及び揚錨の設備、危険物その他の特殊貨物の積付設備、荷役その他の作業の設備、電気設備、脱出設備、コンテナ設備、焼却設備、火災制御図、タンカ液化ガスばら積船及び液体化学薬品ばら積み船の損傷時復原性に関する検査及び満載喫水線に関する検査である。
 NKが行った検査は、管海官庁が検査を行ったものとみなされる。
3.2 船舶機関規則関係
1) 機関
 原動機、動力伝達装置、軸系、ボイラ、圧力容器、補機及び管装置並びにこれらの制御装置をいう。
2) 主機
 船舶の主たる推進力を得るための原動機をいう。
3) 補助機関
 主機以外の原動機をいう。
4) 主要な補助機関
 発電機(非常電源の用に供するものを除く。)を駆動する補助機関及び船舶の推進に関係のある補機を駆動する補助機関をいう。
5) ボイラ
 火炎、高温ガス又は電気により蒸気、温水等を発生させる装置をいう。
6) 圧力容器
 ボイラ以外の気体又は液体が内部にある容器又は熱交換器であって常用最大圧力が1kg/cm2を超えるものをいう。
7) 連続最大出力
 安全に連続使用することができる機関の計画最大出力。ただし、高速機関にあっては100時間以上連続して運転しても異状を生じない出力(耐久試験その他の方法により確認されたもの)を連続最大出力として差し支えない。
8) 連続最大回転数
 連続最大出力時における機関の毎分回転数
9) 船舶の推進に関係のある機関
 次に掲げるもの
(1) 主機及び主要な補助機関
(2) 推進のために必要な動力伝達装置及び推進軸系並びに発電機(非常電源の用に供するものを除く。)及び第1種補機に動力を伝達する動力伝達装置及び駆動軸
(3) 第1種ボイラ、主ボイラ及び主要な補助ボイラ
(4) 船舶の推進に関係のある補機
(5) (1)から(4)までに掲げる機関の運転に必要な圧力容器
(6) (1)から(5)までに掲げる機関の運転に必要な管装置(タンクを除く。)及び制御装置
10) 第1種プロペラ軸
 ロペラ軸は、海水による腐蝕を防止するための手段を講じなければならないこととなっており、その方式として、1体スリーブ方式、分装スリーブでゴム巻方式、オイルバス方式及び耐蝕性の高い材料を使うなどがある。これらは全て承認が必要で、承認されたものは第1種プロペラ軸として扱われ、その抜出し期間が長くとれることとなる。
 この詳細は後述、プロペラ軸の種類と検査を参照にされたい。
11) 第2種プロペラ軸
 第1種プロペラ軸以外のプロペラ軸
12) 第1種補機(船舶の推進に必要な補機)
 次のいずれかに該当する補機
(1) 主機、主要な補助機関、推進軸系又は推進軸系に動力を伝達するための装置のための補機にあっては、次に掲げるもの
(イ) 潤滑油供給ポンプ
(ロ) 冷却水ポンプ、冷却油ポンプ及び循環ポンプ
(ハ) 燃料油供給ポンプ
(ニ) 復水ポンプ及び真空ポンプ
(ホ) 燃料油清浄機及び潤滑油清浄機(主機の運転に必要なものに限る。)
(ヘ) 制御用又は始動用の油圧ポンプ及び空気圧縮機
(2) 主ボイラ又は主要な補助ボイラのための補機にあっては、次に掲げるもの
(イ) 給水ポンプ
(ロ) 燃料ポンプ
(ハ) 強制給排気送風機
(3) ビルジポンプ
(4) その他管海官庁が指示するもの
 
13) 第2種補機(船舶の推進に関係のある補機)
 次のいずれかに該当する補機
(1) 第1種補機
(2) バラストポンプ及び消火ポンプ(非常用のものを除く。)
(3) 操船補機(操舵装置等をいう。)、甲板補機(揚錨機、係船機等をいう。)及び荷役装置、冷蔵設備等に用いるもの
(4) 通風機(機関室、ボイラ室、タンカの貨物油ポンプ室等の取扱者の健康に障害を与えるガス又は火災の危険性を有するガスが発生するおそれのある場所に設置するもの
に限る。)
(5) その他管海官庁が指示するもの
 
14) 第3種補機
 第2種補機以外の補機
 
15) 1類管
 使用する流体の種類に応じ、最高使用圧力又最高使用温度が次頁の表に掲げる範囲内にある管(バタワース管を除く。)
使用する流体の種類 最高使用圧力 最高使用温度
燃料油 7kg/cm2を超える範囲 61℃を超える範囲
蒸気 170℃を超える範囲
水及び空気 16kg/cm2を超える範囲 200℃を超える範囲
潤滑油(操作油及び熱媒油を含む)
アンモニア すべての範囲 すべての範囲
LPG、LNG等の
液化ガス
 
16) 2類管
 1類管以外の管








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