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2.2 プロペラに関連する問題
 
1) プロペラの重い、軽い
 プロペラが重いとか軽いとかいわれるのは重量を指すのではなく、主機関にかかる負荷の状態を表わしている。プロペラが重い、すなわち主機関が過負荷になったり、あるいはプロペラが軽い、すなわち負荷が非常に低くなるのは、主としてプロペラ設計時の各要素の推定の誤りに起因する場合が多い。このような場合には、正しく設計されたプロペラに取替えるか、あるいは、直径またはピッチを修正することによって、適正な負荷になるような対策を講ずる必要がある。
 
2) キャビテーション(空洞現象)
 プロペラの回転数がある範囲を越えると、水との相対速度の関係で翼表面に圧力の低い部分が発生して気泡を生ずることがある。この現象をキャビテーションといい、圧力の分布状況を3・45図に示す。圧力の低い部分で発生した気泡が比較的圧力の高い後方に押し流されると周囲の圧力によってものすごい勢いで消滅する。このときの局部的な衝撃力はきわめて大きく、翼面の潰食(エロージョン)あるいは翼後縁の曲りの原因となる。また、キャビテーションがはげしくなると水は翼表面にそって流れることができず、プロペラ効率は著しく低下するとともに、振動や騒音の原因となる。プロペラ翼の損傷は、異物の接触を除けばほとんどがこのキャビテーションに起因するものであるといえる。
 
3・45図 翼断面上の圧力分布とキャビテーション
 
3) コロージョン(腐食)
 海水中のプロペラでは、プロペラ自体内の異った性質を持つ金属粒子間あるいは船体と組合って、1種の電気化学的作用が生じ、亜鉛分が海水にとけ出し、表面が黒色または黒褐色に変色して肌荒れを生ずることがある。一般にコロージョンといわれるのはこの種の浸食であり、高力黄銅(マンガン黄銅)鋳物製プロペラの場合、脱亜鉛現象ともいわれている。このコロージョンが進行すると、プロペラ翼表面が荒れて効率が低下するばかりでなく、折損の危険を伴うことがある。
 このコロージョンを防止するために高純度の亜鉛(Zn)やアルミニウム(Al)を船体等に取付ける方法が採用されているが、その取付け方法や結線を誤ると逆効果を招く場合があるので、必要に応じて専門家に相談することが望ましい。
 プロペラ防蝕の一例を3・46図に示す。
 
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3・46図 プロペラボスに取付けたAl陽極又はZn陽極
 
4) エロージョン(潰食)
 エロージョンはコロージョンと異なりキャビテーション現象の発生に伴う気泡の崩壊時の衝撃圧力によるプロペラ羽根表面の物理的破壊作用である。気泡がおしつぶされる時の力は数千気圧とも言われこの非常な衝撃によってプロペラ羽根表面がおかされる。これをエロージョンと言う。エロージョンの初期には点々としたあばた状(凹み)ができる。この現象が進むと、羽根後縁の曲損、欠損が発生したり、また亀裂が発生したりすることがある。エロージョンは、プロペラ効率の劣悪化による船速の低下をきたす。
 
 エロージョンの対策として
[1] プロペラ羽根面積の増加をはかる。
[2] プロペラ回転数の減少による羽根面荷重の減少をはかる。
[3] プロペラ羽根断面形状の改善をはかる。
[4] 船尾周りの流れ即ち伴流分布の均一化をはかる。
[5] プロペラの水面下の深さ即ち没水深度の増大をはかる。
 
5) 鳴音
 プロペラが水中で回転するとき、翼の後縁から規則正しい渦(カルマン渦)が発生する。この渦の周期とプロペラ翼の固有振動数が同調するとキーン・キーンとかウォン・ウォンとかいう音がきかれる。これをプロペラの鳴音という。鳴音はプロペラ性能には直接影響を与えないが、不快感を伴う場合には、翼後縁を修正し翼後縁から出る渦の周期を変えてやることによって比較的簡単に解消することができる。
 
6) プロペラと船体との間隙
 
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出所 a寸法 b寸法 c寸法 d寸法
関東造機研究会軸系小委員会 0.09D〜0.17D D<5.5mのとき
0.16D〜0.24D
0.10D〜0.18D 0.02D〜0.05D
関西造協会造機究委員会 0.11D〜0.17D 0.16D〜0.25D 0.10D〜0.22D 0.02D〜0.07D
漁船協会(漁船機関部近代研究会) 0.12D〜0.20D 0.24D〜0.30D 0.15D〜0.25D 0.05D〜0.08D
3・47図 プロペラアパーチャ
 プロペラと船体あるいは舵との間隙が小さすぎると、船体振動その他の弊害を誘発することがあるので注意が必要である。この間隙の目安を3・47図に示す。








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