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5) プロペラの面積比
 上記の通りプロペラの面積の測り方にはいろいろあるが実用上これらの面積をプロペラの全円面積で割った比で表わしておくと便利であるので、通常つぎのように表わしている。
(1) 投影面積比
 投影面積をプロペラの全円面積で割った値である。
(2)伸張面積比
 伸張面積をプロペラの全円面積で割った値である。
(3)展開面積比
 展開面積をプロペラの全円面積で割った値である。
 
6) 平均羽根幅および平均羽根幅比
 1つの羽根の展開面積を羽根の長さで割った値を平均羽根幅といい、更にその値をプロペラ直径で割った値を平均羽根幅比と言う。平均羽根幅とは羽根幅の平均値である。
 
7) ボス直径およびボス比
 3・41図に示すような羽根母線(基線)とプロペラボスとの交点における径をボス直径という。ボス比とはボスの直径をプロペラの直径で割った値であり、この値が小さい程プロペラの効率はよい。
 通常型プロペラの場合、ボス比は0.16〜0.20位である。
3・41図 ボスの直径
 
8) 羽根厚比
 羽根の最大厚さは羽根断面において最も厚い部分の厚さをいう。羽根の最大厚さの位置は通常型プロペラの場合羽根幅の中央より前縁側に寄っているが高速艇プロペラの場合羽根幅の中央付近にある。3・42図は羽根の最大厚さの半径方向の分布を示したものである。羽根の最大厚さは羽根根元においてt1先端においてt2となっている。一般には3・42図に示すように半径方向の羽根厚さの分布は直線的に変化しているが、羽根の応力を考慮して曲線的に変化させる場合もある。この最大羽根厚さ線をプロペラ軸の中心線まで延長したときのOAなる仮想の厚さが得られ、このOAの値をプロペラ直径で割った値が最大羽根厚比である。この値によって羽根が比較的厚いのか薄いのか見当がつくので、設計上重要なものである。最大羽根厚比の値が小さい程プロペラ効率はよくなる傾向にあるが羽根の応力に留意が必要である。
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3・42図 羽根の最大厚さの分布
 
9) 羽根傾斜(レーキ)
 漁船、貨物船等のプロペラ羽根は3・42図(ロ)に示す如く、船尾の方向に5°〜12°位の傾斜をしているのが普通である。また高速艇などでは3・42図(イ)の如く傾斜のないものや3・42図(ハ)の如く船首の方向に傾斜しているものがある。この羽根先端の傾きの量を羽根傾斜またはレーキという。3・42図(ロ)はプロペラの羽根先端と船体の間隔を大きくするには良い方法であり、(ハ)は高速艇などにおいて遠心力を利用して、少しでも羽根根元の応力を減じて羽根の厚さを薄くするための工夫である。即ち、羽根が回転すると遠心力によって、羽根を軸心に対して垂直にしようとする力(レーキをなくそうとする曲げモーメント)がはたらく、このために羽根の根元に生ずる曲げモーメントは、羽根が推力を出すために羽根の根元に生ずる曲げモーメントと反対の方向に作用するから、結局羽根根元にはたらく曲げモーメントはレーキによる曲げモーメントだけ減少することになる。
 
10) 回転方向
 プロペラの回転方向は、3・43図に示すごとくすべて船尾側から船首側に向って見た方向をいう。プロペラが船を前進させる場合、即ち前進回転のときに、時計の針のまわる方向に回るものを右回りといい、その反対を左回りという。この回転方向は非常に簡単なことでありながら、実際にはよく間違いをおこすから、十分注意する必要がある。
 1軸船の場合通常は右回りのプロペラが多く採用されるが、漁船など減速機などの関係から、まれに左回りのプロペラがある。特に小形機関の場合左回りのプロペラがある。1軸船の場合、右回りプロペラは船の前進時に船尾を右舷方向に船首を左舷方向にふれ回す性質がある。左回りのプロペラはこの反対で、船尾を左舷の方に、船首を右舷の方へふれ回す。
 2軸船で右舷側プロペラは右回り、左舷側プロペラは左回りする場合、これを外回りプロペラという。操船上まれに右舷側プロペラは左回り、左舷側プロペラは右回りを採用することがあるが、これを内回りプロペラという。
 
3・43図 回転方向
11) 羽根輪郭
 3・44図にプロペラの羽根輪郭の代表的なものを示す。一般の貨物船、タンカ、漁船などでは烏帽子型(エボシ型)が広く採用されている。高速艇では羽根面積比の大きい丸型が採用されている。曳航力が要求される引船などではプロペラの外周または前方にダクトを装備する時はカプラン型(ダクトプロペラという)が採用される。また近年船体の船尾振動の低減を主目的としたハイスキュー型の採用が増えている。
 
3・44図 羽根輪部








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