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1. 研究の目的
陸海空とも総合的な物流の効率化等の要求が求められ、また、モーダルシフト等の観点から海上交通への期待が高まっている。また、グローバルな物流システムの変革の嵐が新しい海上物流システムを検討する必要性を強めている。こうした状況の中で、船舶が社会に貢献した面と、逆に社会的条件に規定されて設計される側面を取り上げて検討する研究も起こってきた。従来のこれらの研究成果を踏まえると、安全や環境に配慮した効率的な、より高度な海上物流システムの構築を提言する展望が見えてくる。本研究はより高度な新海上物流システムを提言できる研究の方法や可能性を調査研究する。
 
2. 研究の目標
従来の研究成果を踏まえ、次の3点の具体的目標を立てる。
(1) 海上輸送に関わる物流の調査検討
物流情報、物流インフラ情報の調査及び整理を行なうとともに、工学的手法により物流情報を定量化・システム化する技術の現状及び今後の方向に関し調査検討を行う。
(2) 海上輸送のシミュレーション技術とその活用
品目・品種・航路・船速等を定め、物流シミュレータによるシミュレーションの試行を行なう。また、今後検討すべきシミュレーションの機能・規模・体制等をその活用方策とともに検討する。
(3) 海上輸送のネットワーク技術とその活用
海事1TS時代も踏まえ、国内海上輸送のネットワーク関連技術の調査検討を行うとともに、アジア、さらにはグローバルなコンテナ輸送の基本モデル等の国際海上輸送のネットワーク関連技術についての調査検討を行う。そして、この成果や開発経験に基づいて
(4) 新海上物流システム研究の方法と可能性を検討する。
上記a,b,c,の課題を解きながら、時代の要請に応える新海上物流システム研究の方法や将来展望を言語化し、創造的に研究分野を開拓する可能性を示す。
 
3. 研究の内容
3.1 海上輸送に関わる物流の調査検討
3.1.1 純流動貨物調査データ
 平成7年度全国貨物純流動調査の非集計データを用いて、全国のユニットロード物流、とりわけ長距離ユニットロード物流の分析を行い、後述の国内物流シミュレーターに必要な知識を集積した。なかでも長距離フェリーに輸送される貨物の特性を示した。
 このような非集計データは使い方を工夫でき価値が高い。5年に1度の周期で行なわれるので時系列分析もできる。
 都道府県単位の0Dについてユニットロードの経路分配を自動的に表示するプログラムを開発した。その出力例を、図3.1.1に示す。
 
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図3.1.1 東京一道央間の物流経路および配分率
 
3.1.2 米国税関輸出入貨物データ(PIERSデータ)
 国際物流では、太平洋定期船航路を調べた。米国税関の輸出入海上輸送貨物のBL毎の生データ(PIERSデータ)をJournal of Commerce社から購入し、コンテナ貨物を中心に荷動きを調べた。具体的には、コンテナ貨物について[1]米国発着貨物の実態を知る、[2]太平洋定期船航路シミュレーションのためにデータを整理する、の2つを目標にした。
 太平洋定期船航路では船社アライアンスが繰り広げられ、6大コンソーシアムを形成している。この海運秩序を無視して物流を語ることはできない。造船所にとって関心の高い船型はこのアライアンスによって左右されている。物流・荷主・船隊・航路などについてアライアンス毎の比較も行なわれた。
 PIERSデータは米国税関のデータで次々に情報公開されている。非集計データなので活用範囲は広い。そこで、データ整理し、作表・作図するプロセスを記録再現させ、更新データに対応した分析システムを作成した。図3.1.2に分析システムの機能図を示す。
 その他、独立船社であるMaersk SealandとEvergreenについてその沿革、経営方針のユニークさ、保有船舶・造船の特徴、業績、大型化への姿勢など多面的に調査した。
 
 
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図3.1.2 分析システムの機能図








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