日本財団 図書館


草薙  3〜4年前に“旅行のソフト化をすすめる会”といっしょに観光施設1千か所にアンケート調査をしたら、約半数50数%は車いすトイレはあると答えている。しかし、ローカルになれば都会より、障害者がトイレを探すのは大変になる。能登半島の先端のトイレはほとんど和式だけ。車いすでは入ることはできない。日本観光協会で調査した時、高齢者の調査をしても、和式より洋式のトイレがよいという答えが多い。洋式であれば車いすで乗り移ればなんとか利用できる。

公的施設よりも民間施設で、障害者対応トイレは少ない。特に長い時間滞在する旅館やホテル、レストランなどは、大規模なところより中小規模のところが少ない。観光施設の中でも、寺など歴史的なところは少ない。高速道路などでは、駐車スペースに他の車が駐車してしまっていて、トイレに行けない。法規制が必要になってきている状態。脊髄損傷者連合会でも調査するといっている。

トイレ自体のことについては、車いすトイレに鍵がかかっていることが多い。イギリスでは、ラーダーというところ(Ratar:交通リハビリテーション協会)で車いす用トイレの鍵を3ポンドか5ポンドで売っていて、それを使う形をとっている。全国で3千か所くらい使える。鍵が必要かどうかは、誰が使うかの問題につながる。車いす用トイレの場合、

1] どなたでもお使い下さい。

2] これは障害を持っている方を優先します。

3] 障害を持っている人だけしか使ってはいけません。

という3種類の考え方がある。それをどのように整理するのか。誰のためのトイレなのかも考えさせられる。

プライバシーや尊厳ということでいくと、トイレに鍵がかかっていなくて、誰でも開けられるようになっているものをどうするか。長野パラリンピックの公共施設(エムウェーブ)では、「誰か倒れていると危ない」からと、外にのぞき穴がある。管理者は、後でガムテープを貼ったらしい。トイレとのし切りがドアになっていなくて、アコーディオンカーテンや布のカーテンになっているものもある。中に鏡がないトイレもある。鏡については、斜めになっているのが車いすの人用の標準仕様になっているが、あれは縦に長く作るように見直しをする時期だろうと思う。最近では、オストメイト用の洗浄機をつけたトイレも出てきている。

どういう人が使うのかというので、多目的をどのように考えるのか。アメリカあたりでは、車いす用トイレはもうほとんどない。公共用トイレで便房が5〜6個あれば、一つはスペースを大きくして、手摺りをつけて、車いすの人はこれを使う。重装備ではないが、それが普通になってきている。このような形が良いのかどうか。

トイレがどこにあるか、という情報の問題。車いす用トイレマップを作っているが、自治体が作ったり、ゼンリンが作ったり所在がばらばらだ。それをどのように調整するのか。電子情報なり、カーナビなり、ウォークナビなり(これから出てくる)をどのように調整するか。情報の整備も問題だと思う。

 

小山  視覚障害者の立場から述べる。視覚障害があると、知らない場所に行った時、一人で自立してトイレに行くことは非常に難しい。

コンサートホールで身障者トイレを使わせてもらった時は、こんな経験もした。フラッシュバルブが、水洗だったら間違え様がないが、そこの脇のボタンを押すと救急事態用のボタンで、誰かが飛んできてしまう。どちらを押すか賭けみたいなもので、間違えてしまった。おかげでホールの人が飛んできてしまった。何のことはない、立ち上がってふたをしたら流れた。車いすを使っている方の場合にはいろいろなニーズがあり、いろいろな形が必要になるが、逆に視覚障害者の場合は同じであってほしい。

印とかマークをつけるJIS規格のようなマークができればいいなと切望している。トイレの場所がわからずなかなか行き着けない。目以外の感覚を頼りにしてトイレの場所を探し、見つかっても、今度は男子用か女子用かがわからない。触ってわかるマークがあるとよい。知らない場所ではできるだけトイレに入らない。

どんなタイプのトイレでも使うことはできるが、精神的なバリアが結構ある。特に女性は多いのではないか。少しでも解消できるようになればいいなと思っている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION