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●みんなの声を聞く

 

話を私自身の体験に戻しますが、その後、障害を持った方数人に、外出時の行きつけのトイレに連れていってもらい、各自、排泄時の状況調査をさせてもらう経験をしました。その人たちは、筋萎縮症、脳性麻痺、リュウマチ等々様々な病気を持ち、車いすを利用されていました。集まっていただいた方たちに共通していえるのは、各人とも、自分の残存能力を駆使して、可能な限り自立して行動されていることでした。

また、トイレについても、施設にすべてを頼らないということで一致していました。経験からくる自衛手段として、外出時に、排泄に関しての小道具を持ち物の中に忍ばせている人が多かったのです。我々が通常トイレのことなど考えもせず外出できることと考え合わせると、なんという苦労でしょう。

さらに、同じ病名でも、残存能力が異なり、それによってトイレの中での動作が大きく違っていることを知りました。例えば、指には力が入るが腕には力が入らない人、その逆で、指に力が入らない人がいました。前者は腕の力がないため、体を反転することや、便器への移乗が困難で、介助者の力を借りて、かろうじて便器に前面からまたいで座りました。後者は指先に力が入らず、手摺りを握ってもすぐ滑るため、体を支えることが難しい状態でした。そこでその人は、可動手摺りを固定するバーが三つ叉になっていることを利用して、そこを握って体を支え、動作の軸としていました。そこのトイレを行きつけにしている理由の一つも、手摺りの三つ叉にあると聞き、あらゆることを駆使して行動するたくましさに驚き感動しました。

それ以降は、機会あるごとに様々な意見を伺いました。「みんなの声」に紹介したのは、それらの一部です。それぞれが異なる意見であること、いくつかは、相対する意見であることがわかります。そんな意見が集約されたトイレは、どうすればできるのでしょうか。

 

●みんなの使えるトイレの設計

 

みんなの声をまとめてみると、次ぎのような問題点が明らかになりました。

 

<対応ができているとの声>

1. 手摺り付き洋式便器がほしい。

…高齢者、妊婦、車いす利用者等

―高齢社会が進化していく中、洋式便器の要望が高まっています。一方、公衆トイレでは、肌をつけずにすむ和式便器への希望も根強く残ります。しかし、その中で、アンケートをとってみると、最近の利用者の声として、清潔であれば洋便器がいいという意見も増えています。そのため、和洋の比率の見直しが、駅や高速道路、商業施設で進められています。

2. 身体の大きさにあわせたスケールや機器選び。

―高齢者は、50代から70代に移行すると、平均で男性は2cm女性は4cm縮まります。また、幼児は、一般の小便器や大便器では身長に合いません。フックの取り付け位置に配慮し、低リップの小便器や小型大便器の設置が望まれます。

3. 一般トイレを使用できる人もいる。

―通路幅、ドア幅、小便コーナー通路幅を車いすで入れるようにしておき、手摺り付きにしておく必要があります。

4. 子供連れへの対応。

―現在、育児は男親も女親もいっしょに関わります。おむつ替えや、ベビーシートを男女両方のトイレに設置しておく例が増えています。

 

 

 

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