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また、一時は発電や治山、治水に、あるいは利水に重要だということで、たくさんダムが建設されましたけれども、そのダムの見直しが大きな議論となっております。水の循環が生態系にもらたしている大切な機能が再認識され始めたからです。

最近のこの二、三十年間で、科学や人間の到達力は大きく進歩しました。私たちは、私たちの生存の基盤になっているこの地球システムに関する最新の知見に基づいて、私たちの自分の身の回りや、自分たちの行っていることを見直してみることが求められております。中でも私たちにとって大変重要な水として、森、川などの水の循環の役割について、私たちは改めて見直しをする必要があるのではないでしょうか。

20世紀の後半になって、世界のあちこちで沿岸域の海が汚染され、生物が住めなくなったり、魚や海草がとれなくなったり、魚がいても、水銀やダイオキシンに汚染されていたりといった状態が起こっていることは、皆さんご承知でしょう。地球上の人口は、1900年、16億人でした。それから50年たった1950年には25億人になり、そしてなんと2000年には、もう60億人を超えているということで、20世紀は人口爆発の世紀と言われております。

これらを支えるために、人類の生産、消費活動がかつてないレベルまで発達し、そのしわ寄せが海に蓄積して、先ほど述べたようなことが起こっています。海洋の汚染の80%は、陸上に起因していると言われております。すなわち、私どもの生活や経済活動によって汚染されているわけです。海は無限の包容力があって、いくら魚をとっても、またいくら汚いものを流しても大丈夫だと我々は思っていたわけですが、さすがの海にも、そこまでの無限の包容力はないということがはっきりしてきました。あわせて海につながる森や川等の自然も、開発により大きく損なわれました。それらが失われてみて初めて、その働きの価値の大きさが認識され始めたわけです。これらのことは皆、海、水の大切さを改めてクローズアップしております。

このように大変重要な海、水ですけれども、残念なことに、学校教育の場では、海、川、水のことを教えることが非常に少ないと聞いております。また、最近の子供たちの周りには、自然環境が非常に少なくなっていて、自然に親しみ、その中で遊んでいろいろなことを学んでいくという自然体験が非常に少なくなっております。そのような状況は、学校教育の中で、海や水のことを教えたり、体験させたりすることが、今まで以上に重要になってきていることを物語っていると思います。

 

 

 

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