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そして中学校には行かないで、遠く家を離れフリースクールに3年間在籍しました。K君は、「不登校になって、いろんなことがわかった。かけがえのない友人もできた。これからもいろいろあると思うけど、自分らしく生きて行けるんじゃないかと思う」と語っています。

この場は、子どもと大人が力を合わせないと、お客さんに満足していただけるように売ることはできないので、子どもと大人は全く対等なのです。商品を受け渡しする時、ありがとうございましたと大きな声で言うと、お客さんもありがとうと言って下さったりして、人との心地良い触れ合いが体験できます。同じテントの他の業者さんからもいろんな助けをいただいて、帯広の1月末ですから本当に寒さが厳しいんですけど、みんな泣き言はひとつも言いません。心が温かくなると、つい昨日まで引きこもっていた子も信じられない力を発揮するものなのです。

 

フリースペースピュア・十勝帯広教育相談所との連携

「フリースペースピュア」(以下ピュア)が、はるにれの会の子どもたちの会として発足準備をすすめ、3人のメンバーが役員になりスタートしたのは、1995年9月のことでした。はるにれの会がそうだったように、ピュアも相談所の援助を受けながら、自分たちの居場所を作りたい、力を合わせたいという願いで生れました。相談員が紹介の労を取って下さり、子どもたちは知り合い、なんとか会話が成立するまで半年くらいはかかっています。はるにれの会が、本来の目的をそこなわないでやってこられたのは、この2つの組織との連携があったからこそだと思います。相談所から紹介された親が入会し、さらに子どもがピュアに入会して、親子であるいは親子別々に活動する、密接なんだけどそれぞれなんだということが自然とわかってきました。最初の頃はピュアに口も手も出しすぎて反発されては反省する、という出来事があったりしましたが、今はそれぞれが自立した関係を維持できるようになりました。

この2つの密接不可分な会の活動を通じて家族を見つめ直し、希望に向かって前向きな2つの事例に触れてみたいと思います。

 

●事例1. O家の場合

不登校期間 中学3年〜 15歳女子

 

《家族構成》

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O家は自営業で3世代同居ですので、見知らぬ他人が多く出入りする家です。引きこもりのAさんは3人姉妹の真ん中に生まれ、中学校でのいじめをきっかけに不登校状態になりました。それでも高校進学するのですが、すぐに中退。遠く離れた道南のフリースクールに1年間入塾しました。その後、難病があることがわかり、入院生活もあったりして、すっかり落ち込んでしまいました。

中学時代細かったAさんは体重も増え、しばらく振りで会った方からは、前とはずいぶん変わったねなどと言われるようになりました。Aさんも気にしているところへ、両親姉妹からも、もう少し食べるの控えてとか、運動したらとか言われることが多くなり、そんなちょっとしたことが刺激になって怒りを爆発させ、自室に引きこもることを繰り返していました。

 

 

 

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