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寝食を共にして3日目、4日目を過ぎると、自分をさらけ出すことができるようになる。ことに8名以内だと、心の扉も開きやすく、密接さが増し、より団結心を出せるようだ。人数が少ない分、自分の意見などを表しやすく、相手に対する思いやりも出しやすい。もちろんぶつかり合いも起きたりするが、そのことが対人関係の修復に役立つ。ただし、さまざまな規制を取り外し、ケアができる専門家や同行者と共に過ごすことによって、より効果を生み出すことが多い。

5] 国内と国外では効果に相違が出てくる

国内 なるべく人の少ない地域でエコ・キャンプをすることで、より効果的になる。人間不信や恐怖心などがある場合が多く、時期・場所などで適応の違いが出てくる。

国外 自分があるがままに出せる効果がより大きくなる。日本の風土から出ることで、あらゆる呪縛や束縛から放たれた気持ちになる。みんなと同じことをする必要もなく、仮面をかぶって無理して合わせることもないため、自己変革や改善がしやすくなる。特に、いやと言えない多くの子どもたちにとって、英語などの外国語で、YESとNOがはっきり言えることは、とても楽に自分を出せるうえ、自信につながる。

ただし、国内・国外のどちらの場合も、アフターフォローが重要な要素を持つ。帰ってからのリバウンドがかなり大きくなる場合(ことに地方からの参加者)は、その後のケアが大切なため、できるだけ参加者の地域からの協力者なども自然体験に同行し、リバウンドに対応できるアフターフォロー態勢作りが重要になる。

 

追補

最後に、なぜ7日間以上必要であり、海外が良いかという点である。

現代社会の、IT化およびデジタル化した社会、つまり半家族社会、ストレス社会、ひとりっ子社会、ゲームに没頭する青少年が多いこの社会では、小さい頃からコミュニケーションをとる機会を奪われてしまっている。家族旅行もマイファミリーカーで出かけ、内風呂が増え銭湯にも行かなくなり、公共心を育む機会がどんどん減っている。それと同時に、感情のリズムもロボット化しつつある。

それらの歪みを正すには、対極にあるアナログ化を推進し、バランスを取り、感情や感性の調和を図り、喜怒哀楽や五感を敏感に反応させる必要があると考えている。

それには、生身の人間が数日間寝食を共にする自然体験活動が最も効果的であることは衆知の事実であり、さまざまな体験活動がなされるようになった。しかし3日間程度では、感受性の鋭い子どもたちは、仮面をかぶったままの自分を演じ切ってしまう。4日目を越えるとお互いの緊張もほぐれ始め、いろいろな表現方法を使ってコミュニケーションを図る自分が現れてくる。

ことに海外では、日本語ではなく他言語の表現を用いることにより、より自分を表すことができる。また、顔や体での表現を使わないと、相手に意思を伝えられない。無表情の彼らが使いこなすには、下手な他言語に頼らず大きなアクションやボディランゲージ、表情を出すことになる。

 

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フリーマーケットにて。

 

 

 

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