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希望を持って待ち続けよう

私も61歳(5月13日)になりました。もう、彼にエネルギーを使い果たしたという思いです。主人も、次男にはかかわり方がわからないと言うし、今までもそれできました。私のひとり芝居の20年でした。不登校から20年近くわが子に付き合ってきて、他の子どもには忍耐できることが、Tには耐えられないのだということがよく理解できました。性格の歪みなのか、病的なものなのか。それとも、そういう資質を生まれつき持っているものなのか、全くわからないというのが私の現在の気持ちです。

強い母親、弱い父親(まじめで仕事一筋)が、次男のような子どもを作ってしまったのか?私たち夫婦、家族に原因があるのかわかりません。現に、Tの兄は同じ親から生まれ育てられても、公立高校の教師として10年目、エネルギッシュにやっています。弟も弱い人のために働くと言って、特養ホームで元気に働いているのですから。

私たちが元気なうちに、Tが自立してくれることを心から願いながら、昨日より今日、今日より明日と希望を持ち続けています。つき落とされる谷底が浅く感じられるようになったのは、親の進歩か?子どもの進歩か?それとも親も疲れ果てたのか?親がTをある程度あるがままに受容できるようになったのか、さだかではありませんが。とにかく、日々自分を手なずけるのに精いっぱいです。

今振り返ってみると、私がここまで耐えてこられたのは、多くの友人、知人が与えられていたこと、カウンセリングの学びの中で、十分な自己開示ができたことがあると思います。このTとの20年間がなかったら、私自身も軽薄で高慢な人間になり、人の痛みもわからず、人に優しくなれなかったのではとも思います。でも、もうひとりの私は、だれかに優しくされたい!という強い気持ちも持っています。

不登校の子どもを受容することは、つらく逃げだしたくなる時もありますが、忍耐強く待ち続けるしかないような気がいたします。最後に、私の生きる指針となっております、一編の詩を記させていただいて、現在の赤裸々な心境の手記にかえさせていただきます。

 

世の旅(ロシア民謡)

 

この世の旅路はかたくとも

勇みて楽しくたどらばや

いばらを分け森をゆけば

すみれわれにほほえみ

岩根よづれば清水わく

折りふし雨風なる神の

荒れすさぶとも何ぞ

木陰に待てばいつか晴れて

照る日のかげのいとうるわしき

うるわしき

(乙骨三郎詩)

 

 

 

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