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社会へのメッセージ

十代の子どもが起こす事件や非行とひとくくりに、不登校や引きこもりが「深刻な問題」と報道されるたびに思うことがある。それは、深刻と表現されることで、当の本人をますます追いつめ、親の不安を駆り立てているということである。また、他人を傷つける事件や非行といっしょにされて、不登校が悪いことであるかのようなイメージを助長していると思う。

昼夜逆転している子で、朝刊を読んでから寝る子もいるのである。報道機関は、もう少し子どもたちに配慮して欲しい。この子たちの中には学校に行けないことで、自分を責め、親にも悪いと思い、これから自分はどうなっていくのだろうという不安と闘っている子も多い。自分と向き合い、新しい自分を作っていこうとしている子たちなのだ。一般的な新聞などで、もっと不登校の子どもたちが希望を見出せるような情報も発信できないものだろうか。

そして社会は、不登校は病気ではないと知るべきである。ほとんどの子どもは、何らかの理由で学校へ行けないというだけで、本来ごく普通の子どもである。病気なら、ならないほうがよいとか、治ってよかったね、などと言う。しかし不登校は、なってはいけないものとして否定的にとらえないで、成長していく上でのひとつのプロセスでもあると知ることが大切である。人間は過去の自分があって、今の自分があるのだから。社会はこの子たちを、もっとゆったりと見守ることが大切である。

 

 

 

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