日本財団 図書館


1. 事業の目的

今日、二酸化炭素等による地球温暖化の防止及び窒素酸化物等による大気汚染の防止は人類にとって大きな課題となっている。この課題に対する有望な方策の一つとして、排気エネルギーを回収して天然ガスの改質により水素と一酸化炭素を得、これを燃料として可動する高効率エンジンの開発が挙げられており、画期的なクリーンエンジンとして大きな期待が寄せられている。

(財)シップ・アンド・オーシャン財団では日本財団からの補助金を受け、(株)いすゞセラミックス研究所の協力によって、平成10年度から11年度にかけて、天然ガスを燃料とする超低燃費かつ窒素酸化物等を大幅に削減できる舶用天然ガスエンジンの実現を目標とした研究開発を実施し、天然ガスと排気ガス中の二酸化炭素から触媒並びに排気熱によってエンジンに発熱量の高い水素と一酸化炭素を効率よく供給する技術の開発を行った。

そこで平成12年度は、これまでの成果を基にした、水素と一酸化炭素の最適な燃焼方式の研究、これを燃焼させる遮熱効果の高いエンジンの研究開発及び燃料改質システム、蒸気タービン、排気タービンからなる排気エネルギー回収システムの研究開発を行い、地球環境問題の解決に貢献するとともに、造船技術、関連技術の向上及び我が国造船業の発展に寄与することを目的として実施した。

 

2. 事業の実施概要

2.1 事業の概要

平成12年度の研究開発では、無駄のない効率的なエンジン開発を可能とし全体の開発効率を高めるために、まず全体システムとして目標達成の見通しをつけることとし、全体のシステム検討に加えて高効率熱交換器及び排気エネルギー回収タービン、スチームタービン等のエネルギー回収システムの研究開発を実施した。その結果、初めて本研究開発の目標エンジンを具現化する遮熱単気筒エンジンの試作に成功するとともに、高効率熱交換器及び高効率タービンの試作を行い、これらの性能を確認し評価検討することで、今後の研究開発の基盤となる設計製作技術を得ることができた。

実施した研究開発項目は以下のとおりである。

 

(1) システム最適化検討

1] サイクルシミュレーションプログラムの作成

既存のサイクル計算プログラムに燃料改質装置、排気エネルギー回収タービン及び蒸気タービンの性能計算プログラムを付加して本プロジェクトで開発する燃料改質舶用セラミックスエンジンのシミュレーション計算を可能とするサイクルシミュレーションプログラムを作成した。

2] 最適システムの検討

作成したサイクルシミュレーションプログラムを使用して、最適システムを検討した。

3] 遮熱構造の検討

遮熱方法及び温度上昇による熱応力増大の防止方法等を検討した。

 

(2) 排気エネルギー回収システムの研究

1] 高効率でコンパクトな熱交換器の設計・試作・評価及び改良

・排気エネルギーの徹底利用を図るため、熱交換器の基本構造を見直して高効率熱交換器の設計検討を行い、その詳細設計を行った。

・設計図面をまとめ、試作品を製作し、試験による評価を実施して今後の改良点等を検討した。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION