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国会におけるODA基本法の論議と地方自治体による援助の重要性

 

近年、政府開発援助(ODA)に対する国民の関心が一層高まっている。かつては、質的に劣る、インフラ中心である、行政が一元化されていない、マルコス疑惑以降も不正は後を絶たないなど、内外の批判も多かった。今日では、これに加えて、非政府機関(NGO)の活動、地方自治体による援助が活発化していることから、国民の参加との視点からの関心が高まっている。こうしたことを背景に国会でもODAに関する論議が盛んに行われてきた。

本稿では、参議院におけるいわゆるODA基本法をめぐるこれまでの論議を紹介し、国民参加の視点からの地方自治体による援助の重要性について検討を加えたい。

 

これまでの国会論議の成果

まず、国会におけるODA論議が政府の施策に反映されたいくつかの事例を紹介したい。

毎年10月6日の「国際協力の日」には、ODAに対する国民の理解増進のため、さまざまな啓発事業が行われている。これは89年9月4日、海部内閣で国民の祝日に準ずる形で閣議で制定された公式記念日として、我が国が1954年にコロンボ計画への参加を決定した日にちなみ、閣議了解がなされたものである。この「国際協力の日」制定の契機の1つとして、創設(87年10月、中曽根内閣)の前年、86年2月14日の参議院外交・総合安全保障特別委員会外交小委員会での関嘉彦議員の提言を指摘することができる(1)

草の根無償資金協力(旧「小規模無償資金協力制度」)は、身体障害者施設の落成に際してリハビリ機材を供与するなど、相手国の地方公共団体、教育・医療機関などの要請に、在外公館を中心に迅速に対応を図る趣旨で導入された。これは、在外公館勤務の援助担当者を中心に制度創設の意見が高まっていたが、会計事務処理の観点から慎重な検討が続けられていた。海外視察で要望を聞いた広中和歌子議員は、88年3月28日、参議院外務委員会で、在外公館の判断にかかる援助実施の必要性を取り上げ、宇野外相から、前向きに対応する旨の答弁を引き出した(2)

 

 

 

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