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ボランティア活動も時代とともに多様化し、家庭の主婦をはじめ、女性のパワーによる新しい横のネットワークが広がった。また、大学の大衆化によって多くの若者にモラトリアム(猶予)期間が生まれ、自分探しとしてボランティア活動をする若者が増えていく。90年代に入って経済が低迷しはじめると、主婦はパートタイマーとして働きだし、こんどは退職者・高齢者がボランティア活動による第2の人生を探しはじめる。近年では、競争原理や既成の価値観に疲れ、ボランティア活動に癒しを求める人びともいる。メンタルな問題を抱えた人がボランティア活動をする場合、現場で混乱を招くこともあるが、人間と人間の関わりのなかで人間性を恢復させるという意味で、新たな可能性をもちはじめている。現代におけるボランティアは、「人間が人間を求める」という時代背景と深く関係しているのである。

 

2 ボランティアの傷つきやすさ

ボランティアは他者との関わりあいのなかで営まれる活動であるがゆえに、多様化・複雑化する人間社会そのものに直面せざるをえない。そこには、他者の苦しみを見て見ぬ振りできない状況で、他者の苦しみを積極的にひき受け、背負い込み、ボランティア自身が傷ついていく構図がある。「他者の苦しみに苦しむ」という宿命を、ボランティアは背負っているのである。

たとえば、神戸に転居した直後に阪神・淡路大震災に遭い、阪神大震災地元NGO救援連絡会議のメンバーとして活動した中田豊一さんは、震災直後のボランティア活動のなかに「選択と切り捨てのジレンマ」を見る。継続的で安定した被災者支援のために、炊き出しを縮小して別の支援にマンパワーや予算を振り分けるという選択。それは同時に、炊き出しを待つ人びとや彼らに直接向き合ってきたボランティアの思いを切り捨てることでもある。3)

しかし、このようなボランティアが背負う苦悩やストレスはほとんどの場合、個人の問題として片付けられてきた。ボランティアは、嫌ならいつでもやめられる“無責任な”存在として、単なる社会資源として認識されがちである。

 

 

 

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