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報告3-1

ボランティアのケア

北田鶴士 KITADA KAKUJI

 

1 ボランティアとは何者か

21世紀は、人間があらゆる生命に対して責任をもたなければならない時代である。あらゆる生命が相互に関係しあう世界で、人間の社会的な活動が、そのあらゆる生命に対して大きな影響をおよぼすようになったからだ。社会的に弱い立場にある人びとの問題にしろ地球環境の問題にしろ、あるいは身近な状況からグローバルな規模に至るまで、ひとことで表すなら「生命の価値」をめぐる問題がクローズアップされているといえる。

なかでも、あらゆる生命に関わるボランティア活動は、「他の生命への贈与としての生命活動である」1)といえるだろう。いわば自分以外の生命に関わる営みであるということだ。それはまた、人間にしかできない営みでもある。人間が人間たるゆえんとして、「人間を相手にするしごと」2)ともいえるだろう。

どのようなボランティアであれ、役割や立場に規定されることなく個人として、他者との対等な関わりのなかで営まれるボランティア活動。それは、誰にでもできることであると同時に、人間のあり方や生命の価値を問う奥の深いものである。

日本社会においては、1960年代から70年代にかけ、政治的・社会的課題をめぐって「反体制運動」が激しさを増すなか、ボランティア活動の萌芽期がはじまる。とりわけ、高度経済成長に取り残された分野で、若者たちによる活動が活発化する。

しかし、80年代に入ると、ユースカルチャー(若者文化)としてのボランティア活動は後退していった。

 

 

 

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