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また、遺伝性の障害ということで、差別の心配をしました。差別にまきこまれたときにしっかりとそれに向き合っていくために、夫と時間をかけて話し合いました。

親が障害のある子どものことで手いっぱいになっていると、そのとき2歳だった下の子どもが少しおかしくなりました。そこで「普通の生活をしなければだめだ」と気づきました。

親が力をぬくことも必要です。全部完ぺきにはできないので、兄弟がいたら両方に対して手をぬく、そうすることが、家族みんなを大事にすることにつながると思います。

 

障害のある子が「与える」とき

障害のある子どもをもったおかげで、生命の大切さを深く考えることができ、倫理観を深めることができたと感じています。

それを、世の中の子どもたちにも知ってもらいたいと思います。心の「教育」というのではなく、障害のある子どもとの自然な触れ合いのなかで、周りの子どもが変わることがあるのではないでしょうか。子どものときから当たり前のように接していれば、子どもどうしはごく普通に一緒に遊んでいます。仲間はずれを気にするのは、むしろ親の方かもしれません。

ケアする家族にとって、福祉サービスの充実は切実な希望です。しかし、充実しすぎることで、今まで隣の人に手伝ってもらっていたことが頼みにくくなるとしたら、それは少し違うと思います。子どもを5分だけ見ていてもらうことがどれほど助かることか。そこに垣根をつくるのは地域の人や親自身の意識であり、これはサービスによっては変わりません。サービスだけで解決していくことは、特別な子どもを特別なシステムによって守っていくことでしょう。サービスがなければ生きていけなくなるというのは、少し違うと思います。

 

 

 

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