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また、NODCに集められたデータとJODCのデータを結合するときにも、数多くの重複データが重生じ得る。複データが完全に一致すれば、一方を捨て一方を採用すれば事足りるのであるが、一方にミスタイプがあったり、一方が品質管理や修正がされていたりすると、いずれを選ぶべきか難しい。岩手県水産技術センターの事例を検討しながら、重複チェックのやり方については、小熊ら6)に詳しく論じた。この重複チェックはNODCでもその他のデータ管理機関でも苦慮しているところであるが、クルーズ別のメタデータベースに、すでに実行した品質管理の項目・内容を記録しておけば、データの取捨選択に大きな威力を発揮するものと期待している。もちろんクルーズ別にすることは、船速チェック等の品質管理上の便宜も考えている。

生物・化学データについても、一部のプランクトン情報や、二酸化炭素関連データについて検討を始めている。ただし、その場合にクルーズ毎のメタデータを選ぶべきか、プロジェクト毎あるいは機関毎のメタデータを選ぶべきか、長短があり決めかねているのが現状である。

 

6 データ利用の活性化とデータプロダクト

データベースはユーザーがあってこそ価値を生じるものである。しかし、MIRCはもちろん、JODCの存在自体が必ずしも周知されておらず、現実において多くの潜在的なユーザーが取り残されたままになっている。また、すでに述べたように、膨大な多様化した海洋データを一般ユーザーが用意に利用できるか同かも問題であり、ニーズに応じたデータプロダクトの作成が必要である。基本的な統計値のようなプロダクトはJODCによって用意されているが、営利団体・機関へのデータの配布や、多用なニーズに対応するのはMIRCの仕事である。MIRCは日本財団の援助を受けて、その基盤を整備中であるが、近い将来において自立することが求められている。海洋データに関する種々の受託業務や、各種のデータ加工・提供事業もすでに実行しつつある。例えば、海上保安庁水路部で用意した日本近海の500mメッシュ水深データをユーザーの要請に従って、切り出し加工・図化して提供するようなことを行っている。また、日本近海の1000mメッシュの海底地形デジタルデータや、日本近海100m間隔等深線データ、各種の海岸線デジタルデータ等汎用性の高いものは、CD-ROM化して提供している。また、水路部の出している海洋速報・海流推測図の配布や独自で作成している相模湾・伊豆諸島近海海況速報の配布とCD-ROM化、あるいは一都三県漁海況速報や東京湾口海況図を集約したCD-ROMの作成配布を行っている。また、電子潮汐情報(予報ソフト)をいくつかの海域についてCD-ROM化して配布している。ここで述べた海洋観測データの品質管理ソフト(基本セットは水産庁のPOD対応)や、海洋情報や海洋啓蒙出版物も用意している。非営利事業とはいえ、データの管理には多大の労力と費用を要するため、若干の代金を申し受けざるを得ないが、海洋データとデータプロダクトに興味ある方は、ご連絡いただければ幸いである。もちろん、通常の相談は無料で承っている。

 

文献

1)永田豊:海洋情報センターの開設、海の研究、6,249-251, 1997.

2)永田豊:海洋データの収集・管理とその問題点、第20回海洋工学パネル「海洋調査、計測、監視」、講演集、5-14, 1999

3)三宅武治・中里秀喜:日本海洋データセンターにおける新しいデータ処理システムについて、水路部技術報告、17,55-64, 1999

4)吉岡典哉・小出孝・高芝利博・永田豊:亜寒帯循環データベースの構築と管理、月刊海洋、31,748-754, 1999.

5)永田豊・岩田静夫・鈴木亨・小熊幸子・吉村智一・竹内淳一・三宅武治:海洋データセット作成・管理に際して発生し易い誤りとその原因―I。和歌山県農林水産総合技術センターの事例から―、海洋調査技術、1999 (in press)

6)小熊幸子・鈴木亨・永田豊・渡辺秀俊・山口初代・高杉知:海洋データセット作成・管理に際して発生し易い誤りとその原因―II。岩手県水産技術センターの事例と重複データの取り扱い―、海洋調査技術、2000 (accepted)

7)Morikawa, Y., J. Takeuchi, Uema, T. Imoto, and Y. Nagata: High salinily waters found off the Kii Peninsula, J. Oceanogr., 53,633-643, 1997

 

 

 

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