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2. イエメンと言う国

イエメンはアラビア半島の南端に位置する面積55.5平方Km(わが国の1.5倍)、人口約1700万人の国である。

イエメンは勿論アラブの国であり石油も出るが、1990年までの南北分離、統一後の内戦のほか、湾岸戦争の際にイラクに肩入れしたためサウジアラビアからの援助差し止め、出稼ぎ者の送還、さらには油田開発の可能性のあるサウジアラビアとの国境線近くで領土問題が片付かず開発が遅れるなどの事情が響いて発展途上国に甘んじている。

南北が統一された後内戦を経て完全統一され、大統領が選挙で選ばれたのが1999年のことであった。従って、政府内部には未だ統一前の組織形態が残されている部分もあり、港湾分野においても旧南北地域に分かれた管轄の組織が平行して大統領直属の組織として存在し、国内の調整が取り難い体制となっている。

このように、近年のごたごたもあり、縁遠い感のあるイエメンではあるが、歴史を遡ってみると、イエメンに関連してたくさんの馴染み深いエピソードが発見できる。ノアの箱船が洪水の後流れ着いたところに建設された都市が首都サナアと伝えられているし、乳香や香木のイスラエルとの貿易で栄え、アフリカにも勢力を伸ばしたシバの女王の都マーリブはサナアの東100Km余りのところにある。また、天然の良港アデン港は3000年前からアラビア海を介した交易により栄え海のシルクロードの拠点であったし、モカ港より出荷されたイエメン産のコーヒーがモカコーヒーとして世界中に知られることになった、等である。

イエメンの地勢は西部の高原地帯と沿岸部及び東部の砂漠地帯に大別されるが人口が最も多いのは西部の高原地帯である。沿岸部の人口集積地はいずれも港湾都市のホデイダ、アデン、モカ、ムカラである。

 

3. イエメンの港湾事情

(全般)

イエメンのメジャーポート、ホデイダ港とアデン港はそれぞれ紅海沿岸及びアデン湾沿岸(アラビア海)に位置している。他には漁港的性格の強いものを除くと5つの商港があり、1999年には全港で約2300万トンを扱っており、その内原油・石油製品が74%、残りのドライカーゴはほとんどが輸入である。

メジャー以外の港湾のうち、モカ港はかつてイエメンの重要な国際的な海の玄関口であり、この港を通じて輸出された良質のコーヒーにはモカの名が冠された。現在では漂砂で埋没が進んだこともあり、アフリカ方面からの家畜の輸入が主機能となっている。

また、ラス・イサ港は原油の輸出港であり、その他は地域需要を満たすための港湾である。

 

(アフリカの香り・ホデイダ港と海のシルクロード・アデン港)

ホデイダ港の主要施設は-8から10mの岸壁7バースでうち-10m 2バースがコンテナバースとなっている。取り扱い貨物量は約470万トン、うちコンテナ約11万TEUである(1999年)。

 

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ホデイダ港

 

アデン港の主要施設は公共施設が-6.7から11mの岸壁7バースでうち-11m 2バースがコンテナバースであり、1993年3月運用開始の民間のアデンコンテナターミナル(ACT)には-16mの岸壁2バースがある。取り扱い貨物量は約960万トン、うち、石油類が約800万トン、コンテナはACTで8万TEUである(1999年)。なお、公共施設のコンテナバースでのコンテナ取り扱いはほとんどなくなっている。

この2港はことごとく対照的な側面を持っている。アデン港が旧噴火口に位置する、外海から入り易くしかも埋没の心配のない大水深の天然の良港であるのに対し、ホデイダ港は砂嘴の内側に位置し波浪の影響を受けにくいある意味天然の良港ではあるが、長大な入港航路を有し、浅水深でしかも漂砂のため頻繁に維持浚渫が必要な、言わば手のかかる港湾である。

 

 

 

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