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ちなみにこの国の観光キャッチフレーズには“インド洋の真珠”“インド洋の貴婦人”“神様が天国を作る前に試した場所”などの美辞麗句である。これはビーチやリゾートホテルを見る限り納得である。確かにモーリシャスはまわりの海が汚染されていない南海の孤島であるため青い海、珊瑚の白砂ビーチ、緑豊かなサトウキビ畑、白い雲などの自然の景観は本当に素晴らしく感動的ですらある。その反面、狭いところにかなりの人間が住みついている人家の立ち並ぶ居住地が何か汚く雑然とした感じを与えたのだろう。しかし、今は町の汚さの驚きや海岸の美しさへの感動が薄れてしまった。世界をまわっている人の言ではモーリシャスの町は東南アジアの町などに較べれば遙かにましとの事である。要は比較と慣れの問題か。

 

モーリシャス、国の姿

ここで少し堅苦しくモーリシャスの社会的概要を示そう。モーリシャス島の地理:南緯20度、東経57度35分、マダガスカル島から860km、オーストラリア西海岸から5000km。国土総面積:約2400平方キロメートル。群島国を構成する主な島:モーリシャス島(1865Km2)、ロドリゲス島(560Km2)、その他、アガレガ島、サントブランドン礁、トレムリン島(仏との帰属未定)などがある。首都ポートルイスは北西部海岸にある。島の中央部高地にも町がいくつも形成されている。気候は海沿いと中央高原部でかなり違う。気温は夏、海沿いで33〜25度、冬28〜20度になるが、中央高地はいつも5度以上低く冬冷涼な時も多い。12月から2月ごろはサイクロン(台風)が島を直撃する事があり、年によっては建物や樹木などに大被害を与える。私の住むアパートの部屋(8階)にも今年1月、サイクロンの強烈な風雨で室内にかなり雨水が浸水し、凄まじい風の強さとともに度肝を抜かれた。

政治形態:英連邦に加盟している共和制国家(1968年イギリスから独立し、1992年完全独立)、大統領を戴く一院制議会内閣、首相が最高政治責任者。5年毎に総選挙。行政:首相府以下全27省(私の赴任先はこの一つの住宅土地省)、その他半官半民の公社的組織多数。人口:約120万人。産業経済:国内主要産業は砂糖生産、観光、繊維加工の3本柱、最近は貿易、情報産業などを育成しシンガポール型社会への脱皮をめざしていると言われる。国民総生産:2,965百万$(1992年統計)、一人当たり国民総生産:2,700$(1992年統計)。通貨単位:モーリシャスルピーとセント、セントは1/100ルピー、実勢為替レートは1ルピー4.5円位)。教育制度:初等教育(小)学校6年、中等教育(中学・高校)学校7年及び高等教育(モーリシャス大学、専門技術学校(IVTB)等、これはコースにより2年から4年)。マスコミ:仏語新聞主、英字新聞もあり。TVは(モーリシャス放送、MBC(政府管理)のみ)3チャンネルで時間別にフランス語、クレオール語、ヒンズー語、英語の番組を流す。隣接するフランス領レユニオン島のTV放送も見れる。交通:島内はバス網が良く発達、またタクシーが多く安い。営業車、マイカー等の保有、28万台。道路整備良い。国際空港(SSR国際空港)は1つでヨーロッパ、アフリカ行き航空便多数就航、アジア方面はシンガポール、クアラルンプール、香港等への直行便あり。日本への直行便は希望有れど実現困難? 人種、宗教、言語等は後に詳述する。

 

住民と言葉

120万人近くに達する国内の住民は、インド系住民が6割以上を占め、その他アフリカ系、フランス系、中国系などの雑多な人々が共存している。今のところ治安上の大きな懸念材料は無く、比較的平穏である。しかし国内の内情理解が進むにつれ、何処も同じ大小の社会的問題を孕んでいる事に気づく。たとえば経済発展につれての貧富の拡大と住宅問題、宗教が絡んだ言葉の問題や教育問題などである。

モーリシャスはこの狭い島国に人種、宗教、言語の混在した国際社会を作っているのが大きな特徴といえる。日常使用言語の主流はクレオール語である。これはアフリカ系フランス語である。二代前の旧宗主国であったフランスの統治時代の正統的フランス語が日常使われているうちに崩れ、訛ってしまった土着言語と言われる。国では表向きは一代前の英国統治時の英語が公用語といわれているが、外国人との会話や政府の公文書の作成に使われる位で一般に使われない。しかし、ミニ国際社会として、やはり言葉が通じないと種々不便があるため、モーリシャス人はクレオール語、フランス語、英語の3語くらいは学校をよほど怠けたものでない限り使うことができる。

 

 

 

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