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就任ご挨拶

 

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理事長 山下哲郎

 

この度、海外運輸協力協会に参りました。どうぞよろしくお願いいたします。

二十年程前、JTCAがまだ海外運輸コンサルタンツ協会と呼ばれていたころ、当時の運輸省国際協力室でお手伝いをしたことがあります。しかし今では、会員の皆様方とも殆ど初対面という状態なので、機会をみては少しずつご挨拶をさせていただいています。

会社や団体をお訪ねするにあたって、まずインターネットのホームページを拝見しています。それぞれに工夫された特色のあるホームページで参考になります。社長自ら、冒頭で会社の方針を述べておられるところ、あるいは会社の歴史やプロジェクトに重点をおいて説明しておられるところなど様々で、会社の雰囲気がホームページにもよく表れているように思います。多くの会社が、分野別のタテ割りの形で、事業を説明しておられるなかで、横断的というか、資金ソースも念頭においた組織づくりの会社があったりして、なかなか勉強になります。

それにしても、ボタンを押すだけで様々な情報が得られることに、今さらのように驚かされます。ちょっと努力すれば、誰でも情報を入手できる時代になったのだと痛感します。

しかしこれは物事の半面にすぎません。実際に足を運んで、直接お会いしてはじめて分かるということの重要性も忘れてはなりません。紙のうえ、あるいはコンピュータの中だけの情報では決して分からないこともあります。会社までの交通手段、会社のある場所、建物の佇まい、社員の方々の雰囲気、そんなことさえも全体像を構成する重要な一部のように思えます。

情報の人手は比較的容易になったけれども、それにもまして実際に会って話すことが大事だという点は、これまでの仕事とも共通です。

これまで、世界観光機関(WTO)のアジアの地域事務所を新しくスタートさせるお手伝いをしてきました。アジアの事務所だということを国の内外に知ってもらうため、WTOがらみの国際会議を毎年日本に誘致して、外国のひとには日本をよく見てもらい、日本のひとにはWTOをよく知ってもらうという努力をしました。

こうした機会に日本を訪れる外国のひとは、実によく日本のことを知っていました。観光のプロであるうえに、日本にくる前にインターネットなどで最新の情報を仕入れてくるのです。

旅行者が情報を入手することがいとも簡単になりました。しかもタダです。旅行者にとっては、日本も世界も関係ありません。必要な情報はどこからでも集めます。賢い消費者が世界的規模で考えるようになったということでしょう。

なんでも情報が分かるから、それじゃ旅行などしないかといえば、まったく逆です。知れば知るほど行ってみたくなる。かつてないほどの海外旅行ブームが、世界的規模で起きていることがそれを物語っています。

しかし、顧客(クライアント)が簡単に情報を入手できるということは、WTOの地域事務所での仕事にも影響を与えました。国際会議ひとつとっても、日本で開くと海外の何倍もコストがかかるとか、研修やセミナーにしても、海外の方が会場や講師代もはるかに安くあがるというケースが頻発します。比較の相手は、国内だけでなく国外にまで広がりました。内容だけでなくコストについても、クライアントを満足させねばならず、それだけ国際競争が厳しくなってきたといえます。

国際協力を取り巻く環境も次第に厳しくなってきていると言われます。皆様のお力添えをいただきながら、海外運輸協力協会の進むべき方向や皆様方のお役に立つ方途をしっかりと考えていきたいと思っています。

 

 

 

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