日本財団 図書館


2. 中国北京市にて「日本の鉄道改革に関する講演会」開催

 

本年3月8日、運輸省の依頼により平成11年度運輸インフラ整備のための民活導入支援セミナー事業として日本側、運輸省・海外鉄道技術協力協会・日中鉄道友好推進協議会及び当協会さらに中国鉄道部の共催により「日本の鉄道改革に関する講演会」を中国・北京市において開催した。

 

1 本講演会の目的

現在、中国においては計画経済から市場経済への移行という命題の下、国有企業の改革が進められ、中国鉄道部も1998年8月に機構改革を行い、政府機関である鉄道部自ら政府・企業分離のための組織や経営体制の見直しを行った。さらに同鉄道部は効率的で生産性の高い適正な鉄道事業に向けて改革を進めている。また、北京・上海間においては、世界的にも他に類のない大規模な高速鉄道計画が進められており、どのように建設し運営していくかは大きな課題となっている。

こうした時点で、我が国が、国鉄民営化を踏まえた鉄道事業の組織/運営の改革の成功事例を紹介し、そのノウハウを提供することは非常に意義のあることである。

本講演会は、中国の鉄道改革に寄与すると共に、我が国の国際協力の支援に対する知見を深めてもらうことを目的に実施したものである。

 

2 事前調査

セミナー実施を前に、中国鉄道部がその組織改革及び鉄道運営に関する改革の現状、或いは北京〜上海間の高速鉄道の建設運営についての政策方針に関し、現地調査を実施した。

 

1) 国有企業の現状と鉄道部改革の現状

中国は建国以来1970年代末まで基本的には計画経済の発展政策をとり、急速な工業化を図り国有企業は主として重厚長大の基幹産業として利益よりもむしろ生産、雇用の維持を目的とする政策を続けてきた結果、改革・開放経済時代に入っても意識の変革は進まず、巨額の負債等、国有企業の経営改善については、多くの問題を残しており、その強力な改革が求められている。

計画経済から市場経済への移行という命題の下、1998年政府機関である鉄道部自らも、政府機能と企業機能を分離するための組織改正や人員削減、資産経営責任制等の権限・職責の見直しを行った。現在更なる改革を強力に推進しつつある。

鉄道部が実施した組織改正や事業の改革、或いは実施しつつある改革の概要は次のとおりである。

1] 鉄路局に資産経営責任制を導入し、鉄路局が市場経済の主体として自主経営を行う。

2] 鉄道部門を会社化(公司化、出資は政府、地方団体等)する。2000年末に建設工事、機関車製造・多角経営部門等、大中型非輸送企業の公司化が完了する。

なお、輸送企業でも既に4鉄路の公司化を実施しているおり、広深鉄路公司は海外で上場している。

3] 旅客貨物セールスの改革に向けて部、局、分局に担当組織を発足させた。市場のニーズに応じて旅客貨物の計画をたて、ダイヤ改正、速度向上等が実施されている。

4] 運賃改定を国に申請中である。

5] 建設面では、建設工事契約は入札方式を採用した。(従来は指名制)また企業経営には、地方政府や外国との合弁事業も行う。

企業運営にはプロジェクト法人または企業自体に行わせ、経営責任を求める。

6] 鉄道企業内部での企業整理、改革として、例えば保険、教育、住宅、医療を分離する。鉄道部所属11大学は近いうちに一部は国の教育部に移管し、一部は地方政府に渡す。

輸送企業では2000年に30万人の職員を削減、鉄道部所属の建築、機関車製造部門は分離、支線の改革としてローカル線は独立経営させる。

7] 鉄道と国の関係も改善する。

経営状況が悪い路線には国の援助を求める。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION